BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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決勝戦 私的回顧

モリヤラッシュ

12R決勝戦
①寺田 祥(山口)17
②田村隆信(徳島)17
③吉川元浩(兵庫)16
④原田幸哉(長崎)15
⑤毒島 誠(群馬)32
⑥守屋美穂(岡山)21

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 4カド幸哉のコンマ15は、今日の全レースでもっとも遅いトップタイミング。プレミアムGI決勝戦(優勝戦)の重圧であり、モチベーションの難しい大会を象徴する数字でもあった。が、遅いなりにも揃ってしまえば、コースと機力の利がモノを言う。あみだくじで1号艇を得た寺田祥がインから1マークを先制し、3コースの元浩がえぐり込むような割り差しを突き刺した。

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 ターンの出口では早くも紅白カポックの一騎打ちムード。前検から節イチパワーと値踏みしている元浩38号機の舳先が、ガッチリと寺田20号機の内フトコロに食い込んでいる。
 このまま3-1か!?
 思った瞬間、外の寺田が軽く絞め込んでコツンとワンパンチを見舞い、その衝動で元浩の舳先はスルリ抜け落ちた。この瞬間に第2回大会のチャンピオンが決まったと言っていいだろう。

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 2マークを寺田が先取りし、混戦から元浩が力強く抜け出して2着もほぼ確定。ここからだ。スタンドの観衆の目は3着争いに釘付けとなり、ちょっとありえないような光景に出くわした。
「モリヤ、モリヤ、モリヤ~~~!!」
「守屋、ガンバレッ!!」
「ミポリーーンッ!!!!」
「頼む、守屋ァ!!」
 守屋美穂応援の大合唱。いや、合唱ではなくそれぞれがそれぞれの思いで口々に「モリヤ」「ミポリン」の名を叫んでいた。もちろん、中には「守屋、頼むからやめてくれ!」という悲痛な叫びもあったが、「田村、ガンバレ」ではなかった。①-③流しを買っているファンは、当然配当の高い守屋に肩入れしたことだろう。私のように守屋の3着付けで高配当を狙ったファンもいただろう。

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 だが、それにしてものモリヤモリヤモリヤモリヤミポリンモリヤモリヤ……。あまりにも異様なモリヤラッシュ(モリヤコールではない)に周辺を見回しながら、私はつくづく痛感した。
 今節の4日間で、もっとも多くのファンに強くて深い感動を与えた選手は、守屋美穂だった。
 と。3戦連続6号艇で3着。この大会の趣旨も含めて、守屋の活躍がどれほどのインパクトを与えたか。それを全身の毛穴で感じた。

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 おそらく百回以上のモリヤを聞きながら、このあまりにも騒がしい3着争いは終わった。守屋は田村を追って追って、ついぞ逆転できずに4着でゴールを通過した。鉄柵から上体を乗り出した何人かのファンがばらばらと拍手を送る。
「クッソォォォ、3着は守屋しか買ってねぇよぉ」
 ある若者が叫ぶ。
「守屋が来たらどうしようかと思ったよぉ」
 別の若者が安堵の笑みを浮かべる。
 この大会で守屋美穂はまたひとつ成長を遂げただろうが、守屋ファンのみならず全国のボートレースファンの心にも何らかの変化を与えた気がしてならない。

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 さてさて、第2代チャンプとなった寺ショーが得たものは、チャンピオンベルトとGP選考には加算されない1100万円と1台の高級車だった。もちろん、それらは大きな勲章ではあるが、明日からの寺田はすぐに視線を平和島GPへとロックオンすることだろう。

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 この大会に懸ける思いと、その先の大舞台への思い。
 去年も感じたことだが、選手の立ち位置によってこのギャップがかなり大きいと感じる4日間だった。私は舟券の推理にもそれらモチベーションの差を汲み入れたので、いつも以上に脳みそが疲弊する大会でもあった(その多くはゲスの勘繰りでしかなかったが)。
 それはそれで楽しいのだが、やはりプレミアムGIと名の付く檜舞台は、全レーサーが脇目も振らずに優勝だけを目指すガチンコ勝負であってほしい、と思う。ならば、1月に開催されるファン感謝3daysとこの大会を入れ替えて、新年早々の1100万円がGPの選考に加算されるべきだろう。2月の地区選同様に「チャンピオンは2カ月後のクラシック参戦権を与えられる」という特例とともに。ファンにとっては、それだけでも新年のボートレースライフが何倍にも楽しくなると思うのだが、どうだろうか。(photos/チャーリー池上、text/畠山)