BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準決勝ダイジェスト&決勝戦メンバー

詰みより必至!

10R
①田村隆信(徳島)06
②寺田 祥(山口)17
③森高一真(香川)11
④原田幸哉(長崎)01
⑤松井 繁(大阪)05
⑥羽野直也(福岡)08

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 小波乱の布石は、森高のピット離れだったか。ドカッと遅れた森高はすぐに大回りで無事に3コースを奪還した。大方の想定通りの枠なり3対3。が、大回りで早めに舳先を向けた分だけスロー3艇の段差が小さく、スタート展示より横並びに近い隊形が生まれた。

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 4カドの幸哉にソコソコ有利な隊形になったな。
 私のそんな思いは、もちろん幸哉本人もひしと感じたことだろう。チャンスと見た幸哉は、得意のスタート攻勢に出た。行きも行ったりコンマ01!! 危険なタッチスタートではあったが、入ってしまえば圧倒的なアドバンテージだ。

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 このスリットからの幸哉の攻めが、今節の、そして準決勝の特殊性を感じさせた。スタート攻勢をかけた幸哉は絞めまくる戦法が多いのだが、じわり直進しながらスロー勢をやんわり威圧した。このレースは1着でも3着でも、決勝戦の枠番はあみだ抽選に委ねられる。いつもの絞めまくりでは、誰かに弾き飛ばされる危険がある。
 じわりじわり、幸哉は石橋を叩くような慎重な航跡で凹んでいる森高と寺田を飛び越え、インの田村に先マイの猶予を与えてから冷静沈着なまくり差しのハンドルを突き刺した。結果として1着をもぎ取ったが、本当にいつもの幸哉とは別人のようなふんわりとした攻撃だった。将棋に例えるなら、「無理に敵の王将を詰ませには行かず、勝利(今日の場合は3着以内)を確定づける必至をかけた」という感じか。通常とは異質な選手心理が働くシリーズ。それがBBCトーナメントの難解な部分であり、また展開を読む醍醐味とも言えるだろう。

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 2番手は先マイの余裕を得たインの田村がガッチリとキープ。これで決勝戦のチケットが2枚捌かれ、残る1枚=3着争いはバックで4艇が横一線に広がる大混戦に。もっとも有利な立場となったのは6コースから最内を差した羽野で、2マークを先取りして抜け出すか、という勢いではあった。

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 が、その2マークを回った瞬間に痛恨のキャビテーション。尻もちをつくように減速している間に、外から外へと全速でぶん回した寺田祥があっという間に3番手を取りきった。展開に恵まれたとはいえ、かなり不利な隊形から力強く飛び出したパワーは松井や森高のそれを大きく上回っているように見えた。
 1着でも3着でも、生き残ってしまえばあとは神頼み。
 この2マークの好旋回で生き残った寺ショーは、1時間後に素晴らしいプレゼントを頂戴することになる。

シンデレラの進軍

11R
①毒島 誠(群馬)01
②吉川元浩(兵庫)01
③池田浩二(愛知)+01
④峰 竜太(佐賀)07
⑤新田雄史(三重)06
⑥守屋美穂(岡山)08

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 凄まじいスリット電撃戦。10Rは幸哉だけがキワまで攻めたが、こちらのレースはスロー3艇が生死の境まで舳先をぶち込んだ。そして、池田がその分水嶺を超える勇み足……。あるいは、来年のクラシック勝負駆けの気合が池田の背中をツンと押してしまったか。

 毒島がここまで踏み込んだ理由は想像できる。8R後のスタート特訓でも、直前のスタート展示でも、吉川38号機のスリット足はエゲツないほど出ていた。軽く半艇身は覗く勢い。あの勢いのまま攻め込まれたら、3月・平和島クラシック準優(吉川の伸びなりジカまくり)の二の舞に。そんな危機感を抱いた毒島がスタート勝負に出た可能性は高い。吉川と池田もその早い起こしに呼吸を合わせ、灼熱のスリット合戦に発展したのだろう。一言で表現するなら「負けず嫌い」であり、だからこそこの男たちはトップレーサーであり続けるのだ。

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 スリット後、吉川の舳先は特訓ほどには出て行かなかったから、おそらくアジャストした可能性が高い。舳先をぴったり揃えたまま1マークに辿り着き、インの毒島がしっかりと1マークを先取りしてすぐに1着が約束された。もはや言う必要もないが、今日の毒島も強かった。

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 差しが届かなかったものの、2番手も小回りで差した吉川がすんなり取りきった。そしてそして、最内からするする伸びて3番手に進出したのは、またしても6号艇の守屋美穂!!! 最大の難関である2マークも、最内から怯むことのないほぼ全速の握りマイでGP覇者たちを駆逐した。池田のフライングによる恵まれではない、完全に自力で勝ち獲った3着。男子の強豪が居並ぶプレミアムGIで、3日連続で6号艇6コースから3着を取りきった女子レーサーの快挙は、この大会の語り草になることだろう。

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 1着でも3着でも、生き残ってしまえばあとは神頼み。
 そう、これで守屋があみだくじで決勝戦1号艇~優勝などということになれば、語り草どころか生きる伝説にもなりえたのだが、その結果は……?

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 かくして、サバイバル戦を勝ち抜いた5人の猛者と紅一点の美女が一堂に会し、スーパーあみだマシンに明日の命運を委ねることになった。その模様はYOUTUBEなどでも配信されたので、ここでは結果のみを記しておく。

12R決勝戦
①寺田 祥(山口)
②田村隆信(徳島)
③吉川元浩(兵庫)
④原田幸哉(長崎)
⑤毒島 誠(群馬)
⑥守屋美穂(岡山)

 なんとなんと、6コースから頑張って頑張って頑張って決勝戦まで辿り着いたミポリンに与えられた枠番は、またしても6号艇だった。嗚呼、先に描いたシンデレラストーリーの青写真は脆くも崩れたが、もちろん負けると決まったわけではない。逆に6コースから優勝などという逆転サヨナラ満塁ホームランをかっ飛ばしたら、語り草や生きる伝説さえも超えて、「ボートレース史上最大の番狂わせ」として未来永劫ファンに語り継がれることだろう。うん、先の『週刊BOATBoy』では3着付けの予想を挙げたが、こっそり136BOXの舟券も買っておくとしよう。

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 1号艇は、10Rの2マークで起死回生の全速握りマイでゾンビの如く蘇った寺田祥。パワーも十分でまんま逃げきって不思議はないが、チャンピオン防衛&クラシック権利奪取に燃える田村、節イチパワーを誇る元浩、4カドアタックの前哨戦を済ませている幸哉、その攻撃に連動する強い強い毒島……かなり人気の盲点になるであろう守屋も含めて、今シリーズでは最初で最後の「1着条件」=完全ノックアウト方式の殴り合いに期待したい。(photos/チャーリー池上、text/畠山)