BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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芦屋レディースオールスターTOPICS 4日目

THE勝負駆け①予選トップ争い
トップレーサーの矜持

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 V戦線に大きな影響であろう予選トップ争いは、ある意味「大波乱」と呼ぶべき展開になった。まずは11R。最初の速報でお伝えしたとおり、「11Rの③守屋美穂か④廣中智紗衣の勝ったほうがトップ当選」という分かりやすい条件で、結果から先に書けばまんまの③-④決着。1周バック直線では廣中先頭の④-③態勢だったのだが、2マークで守屋が渾身の差しハンドルを貫いて両者の体が入れ替わった。廣中にとっては実に悔しい2着だったはずだ。

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「これで守屋のトップ確定か!」
 と思いきや、そうではなかった。最大の焦点は、その半周ほど前のスタート~1マークの攻防だ。例によってF2持ちの②高田ひかるが早いスタートを控えてコンマ21発進。是が非でも1着=トップが欲しい守屋は、コンマ11の好スタートから一気に高田を絞め込んだ。気持ちは分かる。高田が伸び返す前に叩き潰したい。自力で1着を獲るには、それが最短にして最善の策なのだ。

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 だがしかし、今日も今日とて高田の行き足は半端ない。死に体に近かったスリットからぐんぐん加速し、守屋が絞めきる頃には舳先が深々とめり込んでいた。1着が欲しい守屋は、振りかざした拳を下ろす間もなく高田と接触。玉突き状態でサンドイッチになった高田は、バランスを逸して水面へと落下した。仕掛けた守屋は不良航法でマイナス10点。

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 客観的に見て「守屋が仕掛けたときには高田はほぼ1艇身差に近い死に体、接触したときには十分にレースができるほどの態勢」という感じで、実に微妙な採決ではあった。ただ、高田の伸び返しを恐れて守屋が早仕掛け→結果的にスッキリ絞めきれなかった、という流れで言えば、致し方のない減点だったか。

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 さてさて、そんなすったもんだでトップ争いは最終12Rに持ち越され、絶望的な状況から息を吹き返したのは1号艇・小野生奈、2号艇・田口節子、3号艇・遠藤エミの3人だ。特に、小野と遠藤は「1着なら文句なしのトップ」というシンプルな勝負駆け。

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 いざ実戦は、その条件を百も承知であろう両者が火花が散るようなデッドヒートを演じた。ひたすら先マイを目指すイン生奈に、3コース遠藤がお家芸の超高速ツケマイを浴びせる。その破壊力はいつにも増して凄まじく、生奈をぴったり1艇身ほど抜き去ったかに見えた。
 だが、そこからの生奈の伸び返しがまた凄い。舳先ひとつで耐え忍んでからジリジリジリジリとその舳先を捩じ込み、2マークの手前ではほぼ舳先が揃うほどに盛り返していた。こと行き足~伸びにかけては生奈56号機にかなり分があり、その差が予選トップと2位に振り分けたと言っていいだろう。その後も遠藤の鬼気迫る猛追が続いたが、やはりストレートでしっかり優位を築いた生奈が予選トップのゴールを駆け抜けた。

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 小野生奈、返り咲きのトップ当選。
 2日目まで独走状態にも見えた暫定トップから、昨日はよもやのスタート立ち遅れで6着惨敗。逆に絶望的な立場になったものだが、今日は8Rで5コースかららしいスタート攻勢で一撃まくり。そして遠藤との死闘を制してのピンピン連勝で鮮やかに予選の頂点へと返り咲いた。
 この生奈はもちろん、減点があったとは言え1着への飽くなき執念を見せた守屋、ひたすら勝利だけを求めて超絶なツケマイを放った遠藤……SGでも通用する女子のトップレーサーは、やはりここ一番の勝負どころでのメンタリティの強さが半端ない、と改めて感心した次第だ。もちろん、この高くて強い精神力は、明日からの新たなステージでも火花を散らすことになる。

THE勝負駆け②準優ボーダー争い
6・00の悲喜劇

 一方、予選18位を巡る争いは稀に見る大激戦! 10R終了時点でボーダーラインの6・00に、なんとなんと9人の選手がずらり居並んだ。こんなメンバーだ。
★10R終了時の6・00選手
14位 西村美智子
15位 宇野弥生
16位 清水沙樹 11R6号艇
17位 鎌倉 涼
18位 津田裕絵
 ――――――
19位 高田ひかる 11R2号艇
20位 小芦るり華
21位 海野ゆかり
22位 川野芽唯

 この時点では、5人が天国、4人が地獄という振り分け。記念戦線の準優ボーダーの水準値は6・00としたものだが、これほどの人数が密集することは実に珍しい。
 で、まだ11Rの実戦が残っていたふたりの成績は、高田ひかるが先に書いたとおり落水失格。節イチの伸び足を誇るひかるにはF2であっても準優に乗ってほしかったが、わずかに及ばなかった。

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 6コースからそのアクシデントをかいくぐって3着入線した清水沙樹は、16位で準優に滑り込んだ。明日も6号艇だが、随所に見られるストレート足の軽快さは穴の匂いも漂うのだが、どうだろう。

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 最終的に6・00で生き残ったのは西村美智子、宇野弥生、清水沙樹、鎌倉涼、津田裕絵の5人。逆に同じ得点ながら落選したのは、小芦るり華、海野ゆかり、川野芽唯の3人だった。どの選手もそれぞれパワーやテクニック的に準優で見たかった面々だが、特に次点に泣いた小芦はレーサーとしての大きな肥やしになるであろう舞台を踏ませたかったなぁ。

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 ボーダー近辺からかけ離れるが、今日は小野生奈と同じく破竹の2連勝で一躍4位までランクアップした松本晶恵にも「あっぱれ!」を贈りたい。いや、彼女の力量からすれば「さすが!」が最適か。
 先に書いた予選トップ争いのみならず、今日は「強いレーサーがなるほど強い」と唸るばかりで、万舟ばかりを狙う助兵衛な穴党には手も足も出ない穏当な1日だっなぁ(涙)。
(photos/チャーリー池上、text/畠山)