BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――精神の戦い

9R

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 なるほど、SGに出るということは、このクラスにとってはモチベーションになるのだなと改めて実感する。
 金子龍介は、会見に臨んだ、泣きまくった。乗り心地はいいけど、そこだけ。一人で乗ってるといいけど、足合わせするとやられまくる。行きたいところに舟は向くけど、スピードがない。スムーズではない。この足では面白くない。と、乗り心地以外については、優勝戦ではかなり劣勢と渋い言葉ばかりを並べたのだ。
 ところが、オーシャンカップの勝負駆けと質問者に振られて、優勝戦3着ならおおいに可能性が出てくると聞かされると、声が弾んだ。「よしっ、最低3着目指して頑張ります!」と力強い言葉。去り際には「いい質問でした! テンション上がった! 整備考えよう!」と、質問者に感謝しまくってもいたのだ。SGに出たい、その思いが選手のハートに喝を入れる。明日の金子は、足的にはともかく、メンタル的にはかなりポジティブに臨むことだろう。

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 勝ったのは原田幸哉。エンジン吊りを終えて、瓜生正義と声を掛け合ったときには柔らかい表情も見えたが、その後は実に凛々しい顔で報道陣の前を通り過ぎている。そういう表情を見せようと意識していたのかもしれないが、力強い表情であったのは間違いない。「予選トップではないので、何が何でも狙う感じではないのですが」と本人は言うけれども、しかし「優勝だけを目指してはいます」のほうが本音のように思える、そんなレース後の雰囲気なのであった。

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 悔しがったというか、「やっちまった……」という表情を見せたのは瓜生正義。かなりいい仕上がりと見えただけに(金子もそう証言していた)、6着大敗は屈辱的であろう。それを隠してはいなかったあたりに、その思いの深刻さがうかがえた。あの瓜生であっても、こういう大敗があるというのがボートレース(足一息という金子が優出するというのも)。明日の選抜戦で意地を見せてもらうとしよう。

10R

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 いきなり先ほどとは反対のことを書く(笑)。「オーシャンカップ勝負駆け? それはあんまり気にしないで。気にすれば上の着順を獲れるわけでもないし。2着条件? 狙って獲れるものでもないですから」とは飯島昌弘の弁。金子とは対照的に、この話を聞いてもまるでテンションを上げないのであった(笑)。
 いや、こうした話題を持ち出されて、「気にしないように」というのは自分に言い聞かせるための方便だったりするものだ。気にしすぎると失敗するから、それを意識の外に追いやろうという処世。飯島がそういうタイプかどうかはともかく、その可能性はあるだろうと会見での飯島を見ていて勝手に感じている次第だ。
 それにしても、昨日は通算1500勝の水神祭で、今日は準優突破。飯島にはいい流れが来ているというべきだろう。優勝戦ももちろん侮れない存在だ。

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 勝ったのは西島義則。ピットに上がった直後は、仲間の出迎えに頬を緩めるのが目に入ったが、その後はその頬も引き締め、しっかりと前を見据えていた。今村豊が引退して、西島はマスターズ最年長となったわけだが、闘志もハンドルも衰えないというところを見せた勝利だったと思う。
 そう、ここ下関は今村さんのホーム。それを会見で問われて、「思いはたくさんありすぎて、語り始めたら時間がなんぼあっても足りん……」と西島。しかし、その後に口をついたのは前向きな言葉たちで、今村さんへの思いはまさに胸に秘すものとして、明日は自身のために戦うだろう。もし勝ったら、秘したものがあふれるのかも。

11R

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 上平真二が2着! 予選18位から見事に優勝戦に潜り込んできた。1マークの最内差しは見事でしたね。上平は、カメラマンの前を通り過ぎる時にガッツポーズ! 実はそのとき、レンズのほとんどは太田に向けられていたのだが(笑)、ユーチューバーとなってからとみにおどけて見せることが増えた上平らしい一幕であった。

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 勝ったのは太田和美だ。江口晃生の前付けで深インになったもののまるで動じず、がっちりと逃げ切った。これで優勝戦は1号艇だ!
 実は、10R後の会見で、西島が興味深い発言をしている。もし11Rで太田が勝って、自身は優勝戦2号艇となっても、インを獲りにいくのではないか、との問いに、「幸哉のアシがすごすぎて、自ら負けにいくようなもの。だからそれはない」と答えていたのだ。それを11R後の会見で聞いた太田は「信じません」と言って、報道陣を笑わせた。「油断すれば、何をしてくるかわからない人ですから」と。うん、たしかに(笑)。
 ということはつまり、太田は一分の隙も見せずに優勝戦に臨むということだ。この1号艇は強い。足的なコメントではそこまで強気なものは出していないが、もうそのメンタルが超抜である。さすがの百戦錬磨と唸るしかない。西島の動向も原田の超抜パワーも気になるところだが、太田がかなり優位に立っていると見るがどうか。そういえば、下関ではチャレンジカップを制している太田。あのときと同じように、明日も穏やかな笑みでシリーズの幕を閉じることになるだろうか。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)