BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――ぜんぶ2号艇!

●10R

f:id:boatrace-g-report:20211030184033j:plain

 今日は満面の笑みだ! 昨日のレースごとは一転して、ひたすらテンションを上げていた平本真之。しっかりと切り替えて臨んだ準優は、鋭い2コース差しで逃げた秦英悟を捉えた。
 ゴールし、リフトに向かう最中にも、出迎える仲間たちに向けてガッツポーズ。陸に上がってからも、祝福を受けては最高の笑顔を振りまく。勝ったときと負けたとき。会心と痛恨。そのコントラストがここまでくっきりとしている選手はそうはいない。そして、それが平本真之という男の魅力だ。
 足の仕上がりも、今日がいちばん良かったという。メンタルも、モーターも、明日に向けて上向き! 予選トップは逃したが、予選トップ=優勝ではない。トップを逃した男だからこそ、それをしっかり証明したい。

f:id:boatrace-g-report:20211030184058j:plain

 秦英悟は2着で、昨年の当地グランプリシリーズに続くSG優出。ただ、やはり1号艇で2着では満足はできない。田中和也や西村拓也ら、同じ大阪支部の世代が近い面々とレースを振り返りながら、何度か首を傾げていた。失敗というより、仕上がった平本のパワーにしてやられた部分もあるから、今日の自身の仕上がりにも疑問を抱いたか。会見では「握りすぎた」とも述べており(桐生、松井が視界に入ったようだ)、その反省もあったかもしれない。

f:id:boatrace-g-report:20211030184152j:plain

 松井繁はスリットから伸びて内を脅かしたが、桐生順平に抵抗されるかたちで後退。このあと長いF休みに入る松井は、これでグランプリ出場が消えてしまった。F2ながらさすがのしぶといレースで予選突破し、準優も見せ場は作った。そして、これも百戦錬磨の風格か、レース後は特に表情を変えることもなく、淡々と振舞っていた。来年の逆襲に向けて、早くも切り替えを済ませているようにも見えた。

●11R

f:id:boatrace-g-report:20211030184222j:plain

 江口晃生は本番でもいっさい緩めなかった。強烈な前付けでコースを獲りに動き、濱野谷憲吾、深川真二がこれに抵抗して、3艇が横並びでぐんぐんとボートはスリット方向に向かっていった。
「早くない?」
「80でもきかないんじゃないの?」
 3艇があまりに早く舳先を向けたため、観戦していた選手たちもざわついていた。桐生順平は原田幸哉に、80mを切ったら起こしは何秒なのか尋ねていたりもしている。選手たちもいろいろな意味で心を動かす、江口の前付けと濱野谷、深川の抵抗。これがボートレースだ!

f:id:boatrace-g-report:20211030184256j:plain

 一方で、地元のエース濱野谷にとってはキツいレースとなってしまった。コンマ08のスタートを決めながら、やはりスピードに乗り切れず、4カド辻のまくりを浴びる。連動してまくり差した深谷知博にはなんとか食らいつこうとしたが、勢いの差で先んじられてしまった。痛恨の準優敗退である。
「くぅぅぅぅぅぅっ!」
 それまでクールに振舞っていた濱野谷が、ペラ調整所で仲間と顔を合わせた瞬間に、ちょっとおどけながらだが、悔恨をあらわにした。それが本音に違いなく、レースの綾で仕方ないとはいえ、痛々しく振り返ることになる一戦になってしまったようだ。

f:id:boatrace-g-report:20211030184322j:plain

 辻と深谷は、もちろん笑顔! 辻は祝福を受けながらガハハと笑ってもいた。ああ、久しぶりだ。辻のガハハ笑いは実に久しぶり。これが快勝後の、あるいは笑うしかないような敗戦後の、辻のトレードマークだ。今年はベテランが席巻する1年である。これに乗るとしたら、辻ということになるだろう。

f:id:boatrace-g-report:20211030184417j:plain

 深谷はこれで連覇の可能性が残った。まあ、外枠でもあるし、それを意識できるようなポジションではないかもしれないが、快挙につながったことは確かである。今節はかなりペラを叩き続けた深谷。明日も朝からハンマーを振るう姿が見られるだろう。

●12R

f:id:boatrace-g-report:20211030184442j:plain

 常套句すぎて陳腐な物言いではあるが、やはりボートレースは何が起こるかわからない。1号艇の峰竜太が敗れ、準優は白カポックがすべて負けた。勝ったのはすべて2号艇。これを想像していた人は少なかったはずだ。
 そして、この結果、優勝戦1号艇は平本真之に! 昨日、予選トップを掴みかけて、手からこぼれ落ちて、うなだれた平本に、予選トップで準優を逃げたのと同じ結果がもたらされたのだ。平本はさすがに露骨によろこんではいなかったが、周囲の選手たちに祝福されて素直な笑顔を見せていた。これもしっかり切り替えて前を向いた、その効果だと言っておこう。

f:id:boatrace-g-report:20211030184504j:plain

 さすがに峰は、悔しそうな表情を隠さない。2着で優出は確保したが、「2着は負け」と言い切っている。そりゃあ勝ちではないが、この男が口にする負けは、もっと大きな意味がある。記者会見でも深刻な表情を見せていて、冗談めいた質問に対しても、受け答えはするものの、乗っかろうとはしなかった。もし勝利のあとだったら、絶対に茶目っ気を見せていただろうに。この敗戦を受けて、明日はどう調整し、戦うのか。1号艇とは違うかたちで、注目度は増すことになったと思う。

f:id:boatrace-g-report:20211030184528j:plain

 勝ったのは白井英治。気持ちよく峰を差し切って、レース後は勝っても負けてもクールに、あるいは眉間にシワを寄せる白井が、爽快な笑顔を見せていたのだった。ゴキゲン! 珍しいほどに頬を緩めるその様子に、気分の良さが最高潮にあらわされていたのであった。勝利者インタビューでは、「今村さんにダービーは最高峰と言われてきた」と、ダービーにこだわってきた師匠・今村豊を意識するコメントも出している。機力も精神力も整って、明日は引退した師匠への思いを水面に叩きつける。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)