●8R
危ないシーンが続くレースとなってしまった。1マークではキャビった深谷知博に茅原悠紀が乗り上げて、両者が離脱。さらに2マークでは2番手争いがもつれて、山田祐也が羽野直也にやはり乗り上げて羽野が転覆。3艇だけがあと2周を走るという波乱となった。3人ともその後、それほど痛んだ様子もなく、ピットにあらわれており、一安心だ。羽野とは話ができたが、「ご迷惑おかけしてすみません」。いや、こっちは何も迷惑などかかってないし、悔しくて痛いのは羽野自身。でも、羽野はそう言うのである。
羽野ともつれてしまった山田は、やはり渋い顔を見せている。羽野が失速していたため致し方ない展開ではあったが、やはり複雑な思いは残っただろう。
舳先が大きく浮いた上野真之介にしても、優出を決めながらも冴えない表情。会見では2マークは失敗と言っており、それが事故にもつながったことで、優出を素直に喜べないところはあったかもしれない。
勝ったのは新田雄史。今日も序盤の時間帯から着々と調整を続けて、しっかりと逃げ切った。握った山田、まくり差した上野に迫られたようにも見えたが、出口から突き放していく感じは調整の賜物だろう。エンジン吊りを終えて、東海勢に囲まれて浮かべた微笑には、たしかに充実感がうかがえた。シリーズ回りになって悔しさは今も消えていないのではないかと推察するが、ここまで来た以上は明日も全力で調整を続けて、優勝をもぎ取りにいく。
なお、新田は10R発売中に試運転に出ている。8Rで行なわれる準優というのがそうそうないことではあるが、ともかく準優を勝った選手がその後に試運転を走るというのは初めて見た。
●9R
西山貴浩が逃げ切って優出。レース後はさぞかし大騒ぎしてるだろうとご想像される方もいるかもしれないが、実のところそうでもなく、むしろ淡々とエンジン吊りを終え、淡々と控室へと戻っている。少しテンションが上がったのは、スタート特訓の準備をしていた篠崎仁志の目の前を通ったとき。西山は立ち止まり、両手でアクションをとりながら、声高にレースで起こったことを仁志に報告するのだった。篠崎兄弟とか峰竜太とか、インタビューとかでは悪口を言うことも多々の西山だが、実際はめちゃくちゃ仲がいいんです。
2着は岡崎恭裕。福岡ワンツー! とはいえ、西山と岡崎でハイタッチ、とかいう場面は目撃できなかった。取材が許されている場所からは、ボートリフト周辺にけっこう死角があるので、絶対にしていないとは言えないけれども。岡崎もまた淡々としたレース後ではあったものの、会見では優勝したいとも口にしており、今年のトレンドである「10年以上ぶりのSG制覇」にも期待したいところである(岡崎は10年オールスターでSG初優勝)。
悔しかったのは田村隆信だ。3番手から岡崎を猛追し、3周1マーク攻めたが岡崎と接触して大流れ。そのふところに飛び込んできたのが、なんたることか、同県同期の興津藍なのだった。控室へ戻る途上で興津が田村に追いつく。田村は興津の顔を見るや、もう笑うしかない。興津も微妙な笑みを見せており、盟友同士の反省会が始まったのだった。興津も田村を抜いちゃうとか、ビックリしただろうなあ。
●10R
9Rに続いて福岡勢が優出。篠崎元志だ。ボートリフトで真っ先に出迎えたのは篠崎仁志。仁志も優出して、兄弟がW優勝戦を戦うことになっていたら最高だったのだが……。元志は力みなぎる表情を見せており、気分が良いのは明らかだった。秦英悟が挨拶に駆け付ければ、イケメンスマイルが炸裂。元志ももう35歳なのだが、相変わらずカッコいいな……。
中島孝平が逃げて優勝戦1号艇を手に入れた。会見では、シリーズ→トライアル→シリーズと渡り歩いたことについて、前本泰和を気遣いながらも、「ラッキー」と言った。妙な運命に巻き込まれた格好ではあったが、それを前向きに捉えて全力で戦った成果がこのポールポジションではないか。今節では唯一の立ち位置で戦った中島だが、まったく動じず、ブレず、揺らぐことなく戦ってきた。優勝戦1号艇、やはりまったく動じることなく、外から攻め立てんとする後輩たちに立ちはだかる。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)