準優勝戦のピットは、男女ともに実に静かなものだった。もちろん、それぞれの選手に思うところはあるはずだが、あまり感情が表に出ているのを見ることができなかった。いずれもが淡々と、レース後の時間を過ごしているように見えた。
あえて、悔しさを顔に浮かべていた選手をあげれば、地元の数原魁だ。6号艇6コース、しかしそれが地元戦で優出を逃していい理由にはならないだろう。いや、数原はまだ優出の権利がないのだから、優出はノルマというほどではなかったか。だとするなら、せっかくの地元優出チャンスを逃したのは、やはり口惜しいものだろう。
男子で優出した井上忠政、佐藤航、高橋竜矢の3人のうち、笑顔が見えたのは高橋。仲間からの祝福に、人の好さそうな柔らかい表情を見せていた。ただ、その後は真顔に戻って淡々と着替えをしている。
井上の場合、どうしたことかピット離れに不安が生じてきており、そのあたりに思いが至った部分もあっただろうか。会心の様子でもないし、優勝に近づいた手応えというものもその様子からは感じられなかった。もっとも、少し話したところ、「ピット離れは(ちゃんと)出ると思います」と言い切った。根拠があるというわけではないはずだが、すなわち足的にもリズム的にも自信があるということだ。
女子準優を勝った渡邉優美は、ピットにあがるや、競技本部から呼び出しのアナウンスが入っている。待機行動またはレースでの航法に注意を受けたか(お咎めはなし)。それを耳にした渡邉はエンジン吊りを終えるや競技本部に駆け出しており、やはり歓喜の様子は見られず。西橋奈未に迫られてもいたから、会心というわけでもなかったかもしれず、それも充実感が伝わってこなかった理由ではなかったか。
優出を果たしたのはあと、西橋、中里優子。中里は鎌倉涼を競り落としての3着で、それこそ充実感があふれているのではないかと想像したのだが、そうでもなかった。エンジン吊りを終え、角ひとみと肩を並べて対岸のビジョンに見入る。12R後はすぐにビジョンにリプレイが映し出されるので、同じようにビジョンを見つめる選手は多い。まさに優出をあと一歩で逃した鎌倉も同様に見ていたのだが、両者の顔を見比べると、どちらが勝者か敗者かわからないほど、同じように神妙な面持ちなのであった。
レディースvsルーキーズもこれが8回目だが、ここまで特に感情の揺れ動きが見られない準優勝戦はあまり記憶にない。その理由は今のところ何とも言いづらいのだが、しかし明日の優勝戦が淡々と終わるというものではないはずだ。ファイナルバトル、団体ポイント12をも懸けた優勝戦が熱くなることを期待しよう。(黒須田)