BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

水上のリアル鬼ごっこ

12R優勝戦  並び順
①池田浩二(愛知)15
②上平真二(広島)13
③山口 剛(広島)11
⑥赤岩善生(愛知)16
④中野次郎(東京)14
⑤柳沢 一(愛知)17

 池田が勝った。イン逃げではなく「抜き」での勝利。上平46号機との抜きつ抜かれつのデッドヒートは、長く語り継がれるだろう。

「赤岩がどこまでオラオラ前付けするか?」が戦前の大きな焦点だったが、それなりに激しく動いて4コース奪取(私の希望的推測よりはやや緩かった)。イン池田の助走距離もそれなりに深くなって100m起こしとなったが、これはおそらく池田の想定どおり。9R後のスタート特訓3本もスタート展示も、池田はすべて100m前後の起こしに徹している。赤岩×広島コンビの性格を掛け合わせて「ほぼ起こしは100m!」と結論付けていたか。

 十分のリハを積んだ池田は、ぴったり1艇身の余裕をもってスリットを通過した。昨日同様、他艇もそれを倣うかのようにほぼ横一線の見え方だ。が、ここからが昨日とは違う。2コースの上平名人がじわじわ舳先を伸ばし、1マークの手前で半艇身程度のアドバンテージを得ていた。池田に相応のプレッシャーを与えながらの差しハンドル。

 ただ、池田のインモンキー(やや寄りすぎではあった)のスピードも半端なく、ターン出口では2艇身近い優位を築く。選手の実績、力量を思えば「勝負あった」の差に見えたものだが、そこからだ!

 じりじり、じわじわ。
 再び上平46号機が不気味に差を詰める。そして、スリット裏を過ぎたあたりから、今度はツインカムターボのようにズーーンと一気に伸びはじめた。凄まじいパワーだ。2艇身の貯金があっという間に失われ、池田は2マークの先取りを諦めた。勢い、上平が颯爽と2マークを旋回する。46号機は直線のみならず、回り足も凄い。唸るようにサイドが掛かり、横ではなく前に突き進む。

 さ、さすがにこれは決まったか!?
 そう思うに十分な先マイだったが、今度は天才・池田のスピードが上平のパワーを蹴散らした。今節、何度か見せた2マークでの開いて差しての悶絶全速スピード差し!! わずか3秒ほどで体を入れ替える。ぴったり1艇身突き抜けたが、もはや「これで勝負あった」とは思わない。

 じりじり、じわじわ、ズーーン!
 瞬く間に差が詰まり、2周1マークの手前で2艇の舳先が並んだ。なんちゅう46号機。仕切り直しの逃げて差してのチェイスは池田に3艇身ほどの余裕を与え、2周2マークでは1艇身の貯金を生かしてやっと名人の猛追を振り払った。どの直線でも、ざっと2艇身ほど上平46号機が圧倒していたが、最後は池田浩二という稀有なアスリート能力がわずかに優位を築いた。

 パワーvsスピードの究極の鬼ごっこ。
 こう書くと、なんとなく上平名人に失礼に当たるかも知れないが、自称“モータボートレーサー上平真二”なら分かってくれるだろう。ボートレースの醍醐味がぎゅうぎゅうに凝縮された、実にスリリングな鬼ごっこだった。

 デッドヒートの末に節目のSG10Vという金字塔を築いた池田には、尼崎オーシャンカップ(予備3位だった)のチケットも手渡された。地区選のフライングでしばらくGIに参戦できない身の上、大きな賞金の上積みが期待できる“副賞”だ。大村グランプリのTOP18当確からTOP6当確へ、とこなめのスーパースターの挑戦は続く。惜しくも勝ちきれなかった上平も賞金ランク9位に浮上。48歳にして初のGPへと近づく、価値ある準Vという見方もできるだろう。(photos/シギー中尾、text/畠山)