BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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おめでとう! セミファイナルのピットから

●8R

 末永和也が差し切って1着。セミファイナル組からはファイナル行き一番乗りとなった。評判機のパワーをしっかりと活かして、また的確に差しハンドルを入れて、ターン出口では完全に先行したのだから、見事な勝利であった。
 今節最年少の末永は、レース後は笑顔控えめで、戦った先輩たちや、エンジン吊りを手伝って先輩たちに丁寧にあいさつ。喜びを表現するより先になすべきことがある、とばかりに、ひたすら礼を尽くすのであった。

 1号艇の中島秀治は2着。もちろん、まだファイナル5号艇の可能性は残されているわけだが、しかし1号艇を引いた運を活かし切れなかったのは痛かった。エンジン吊りの間にヘルメットを脱ぎ、悔しさが目元に滲む表情を見せていたが、すぐにまたヘルメットをかぶるという謎の行動。別に涙を隠しているような様子でもなかったけれども……。
 末永があいさつに歩み寄ると、またヘルメットを脱いでいた中島は露骨に悔しそうな表情を末永に向けたのだった。124期の同期生が真っ向勝負となっていたこのレース、同期ワンツーとはいえ、1号艇で敗れた悔しさは尋常ではなかろう。同期相手ならなおさらだ。中島は右手で末永の右肩を優しくパンチ。その瞬間、末永はおかしそうに微笑んで、中島がようやく末永に笑顔を生んだ格好だ。まさしく同期生の信頼感、というわけだ。

●9R

「誕生日おめでとう!」
 出迎えた日高逸子の声がピットに響く。そう、今日は赤坂俊輔の誕生日。見事すぎるバースデーウィンです! 本当におめでとう! そして、ファイナル行きも決定。重ね重ね、おめでとう!
 そんな赤坂の様子は、なにしろヘルメットをかぶったまま控室に戻っていったので、しっかりとうかがうことはできなかったのだが、嬉しくないわけがないですよね。ちなみに、今日で40歳! 不惑! 06年メモリアルでSG初出場した時のことを思い出す。実に初々しい若者は、前検日に報道陣に囲まれて「注目されるのはきっと今日だけですよね」なんてはにかんでいたものだった。当時は24歳ですか。俺も30代だったなあ……。きょうのあみだ抽選で、さらなる誕生日プレゼントがもらえたりして!?

 1号艇の田村隆信が2着。ピットでヘルメットを脱いだ田村の表情は、やはりというか、曇り気味なのであった。1号艇で敗れれば、それがどんなレースであれ、こうなるのがボートレーサーというもの。しかも1着勝負の戦いなのだから、悔恨はより大きくなって当たり前だ。
 ただし、田村はトーナメント1着だったので、ファイナル5号艇の可能性を残した。この時点で、中島秀治の敗退が決定。この後のセミファイナルでは、白井英治が2着だった時のみ、敗退となる。複雑な思いにとらわれながら、田村は11Rを見ることになるのだろう。

●10R

 今節の主役というべき西山貴浩は、セミファイナルで姿を消すこととなった。3コースから気合のまくりを放とうとしたが、2コースの重成一人が意表のジカまくり。これと完全に航跡がかぶり、万事休すだった。
「早く切りすぎたぁ!」
 帰還してそう嘆いた西山。重成が握ると読めていれば、逆に絶好の差し展開が転がり込むことになっていたわけで、攻めっ気の強さが逆に仇になった格好。ただ、地元の目立つレースで、自力で攻めて勝ち上がろうという思いは誰にも否定できない。それでこそ西山貴浩だろう。一声、唸ったあとは意外にもおとなしめに控室に戻っていた西山。悔恨の思いはかなり強かったのかも。

 1着は和田兼輔。重成に抵抗した分、バックでは桐本康臣に差されてしまったが、2マークで内から伸びた椎名豊を桐本が交わしている間に差し返した。薄氷の勝利ではあるが、レース後の雰囲気は実に爽やか。桐本とも笑顔で言葉を交わしている。

 桐本は2着に敗れ、トーナメント1着だったものの、選考順位では田村よりも下ということで敗退決定。勝利が見えた展開だけに悔いも大きいと思うのだが、先述したように和田とにこやかに話していたし、わりとサバサバした様子だった。2着では勝ち上がれないと覚悟していたか。

●11R

 白井英治が逃げ切って、セミファイナルの最後は順当な決着となった。この前のレース、土屋南が展示中に浮遊物を巻き込んで再展示となっており、また佐々木完太もレース間のスタート練習でやはり浮遊物を巻いたらしい。展示準備に向かう際、白井は僕の顔を見つけて、「浮遊物、多いみたいだね。ちょっと怖いな」とポツリ。実際、このレースもピットアウト直前にレスキューが浮遊物を除去している。ただ、これはあくまでレアケース。そうした状況を素早く察し、めったに自分に降りかかるものではないにせよ、しっかり警戒する。この人の強さの一端は、こういうところにもあるのかと思った次第だ。とにかく、これでファイナル勝ち上がり。明日の12Rがぐっとコクの深いものになったのは間違いない。
 なお、この結果で田村隆信のファイナル行きも決定。5号艇からどんな手練手管を見せてくれるか楽しみだ。

 池田浩二は悔しい2着。「日高のバカーッ!」と叫んで選手たちを笑わせている。日高逸子はピット離れで後手を踏み、回り込んでの3コース獲り返し。これにより、池田の起こし位置が想定外のものになったようで、愚痴った……というかおどけてみせたわけだ。

 で、日高はといえば、池田はもちろん、4号艇の萩原秀人、さらには6号艇の金児隆太にも、両手を合わせて頭を深々と下げていた。最年長が後輩に礼を尽くしているわけだが、その様子がなんともチャーミング。池田が思わず呼び捨てにするくらい慕われているのもわかろうというものです。
 

 さあ、12R終了後にファイナルの枠番抽選が、スーパーあみだマシーンにより行なわれました! 白井英治や和田兼輔は、楽しそうに笑顔を見せていましたが、最年少の末永和也はやや緊張気味。まあ、先輩だらけで、凄いメンバーのなかでのファイナルだから当然ですよね。

 号艇番号が隠されたプレートを、トーナメントの得点上位順に好きな位置に貼る→→6本の仮ラインのうち、活かすラインを番号札を引くことによって決定(2本は消える)→→あみだスタート!→→4人の行き着く場所が決まったところで、上から順番に号艇を明らかにする

 この手順で枠番が決まりました。って、文字にするとわかりづらいな。ともかく、いちばん上に辿り着いたのが和田で、号艇の数字を隠しているシールを外したら、いきなり1号艇! 和田、ガッツポーズ! という次第でありました。会場の後方で見ていた田村隆信、森永淳が「もう終わっちゃった」と寂しそうにつぶやいておりました(笑)。みんな、1号艇が出るかどうかのドキドキが楽しいんでしょうね。

 白井は4号艇となり、外枠にSGウィナーがズラリ並ぶという構成に。内枠勢が勝つのか、格上勢が外から幻惑するのか、楽しみなファイナルだ!(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)