BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――クリア!

 菊地孝平、カッコよすぎでしょ! 進入でややもつれながら、腹をくくって6コース選択。そしてまくり一撃! 4Rの時点で予選トップ通過を確定させてしまったのだから、あざやかの一語である。
 しかも、菊地はそこでまったく気を緩めなかった。その後も調整と試運転を遅くまで続けたのだ。トップ通過だ、ああよかった。そんな思いはひとつもない。これで優勝に近づいたと、安心もしていない。11R発売中には、中島孝平と“孝平足合わせ”。入念に感触を確かめた。明日も、クリアすれば明後日も、これくらいの時間帯を走るわけだから、ここで感触を確かめているのはアドバンテージになりうる。なんだかもう、菊地の優勝で間違いないのではないか、などとも外野の人間としては思ってしまうわけである。

 SG初出場の若者が予選突破! 宮之原輝紀が得点率6・00で予選を終えた。新兵仕事をしながら、こちらの姿を見つけると、今節見たこともないほど穏やかな表情で、「なんとか残りました」と微笑んだ。初日にあれだけ泣いていたものが、じわじわと上積みをはかって、準優に向かう。いろんな意味で、充実感が生まれたことだろう。「でも、ここで安心したらダメなんですよね」と、自分に言い聞かせたのか、こちらに問いかけたのか、そう言ってまた微笑んだ。それがわかっているなら、明日も全身全霊で戦いに臨めることだろう。失うものはない、という精神で戦え!

 10Rでは今垣光太郎が勝負駆けを成功させた。メンバーではもちろん最年長なのに、戦った相手に丁寧に頭を下げるあたりは光ちゃんらしい。安堵した雰囲気で、ふうっと息を吐いて、カポック脱ぎ場へ。振る舞いは、50代とは思えない若々しさである。

 池田浩二は、4着条件で4着と、薄氷の予選突破である。疲れた顔つきでピットに戻ってきた池田は、ヘルメットを脱ぐと苦笑いを浮かべて控室へと向かった。常滑で予選落ちは絶対に許されない。そんな思いは当然彼にもあるわけで、安堵と同時に、ここまで追い込まれたことに複雑な思いもあるだろうと想像される。準優は外枠になりそうで、前付けもあるかも!?

 11R、瓜生正義が逃げ切って勝負駆け成功。21位から一気に13位にまで浮上した。といっても、レース後の瓜生は淡々としたものだった。渾身の逃げ切りには違いないが、そこまでの気合の発露を表に出さない泰然自若とした振る舞いが、さすがの風格といった感じだ。

 濱野谷憲吾は4着条件で3着。安堵とか会心とか、そういった感情をあらわすよりも、河合佑樹が自分の外を超えていった、その足の良さを盛んに河合に向かって話していた。身振り手振りも交えながら。河合は、大先輩に称えられるかたちになって、恐縮したような笑みを返す。それでもなお、河合に賛辞を送っていたようで、河合はさらに頭を下げまくるのであった。なんか、勝負駆け成功したというのに、そんなの他人事といった感じ(笑)。そうしたある種の暢気さも、ファンタジスタらしいという気がしますね。

 12Rは、深川真二のみが逆転準優行きを目指していたが、及ばず。山口剛は大敗禁物だったが、しっかりと逃げ切った。勝利の後は、公開勝利者インタビューに向かうため、大急ぎで着替えをして、送迎の車に乗り込んでいる。予選突破の安堵というよりは、とにかく急がなきゃ、という雰囲気なのであった。

 柳生泰二も大敗ならばアウトだったが、関浩哉の猛追を浴びたものの3着確保。ピットでは、嬉しそうな笑顔を見せている。そんな柳生に、菊地孝平が歩み寄って祝福。カポックをポーンと叩くと、柳生の笑みはさらに深くなった。こんな光景、前にも見たなあ。そう、柳生のSG初1着のときも、菊地が祝福していたんだった。そんな二人は、明日準優12Rで対戦。菊地が逃げ、柳生が2着に入るようなことがあれば、また同じ光景が見られるかもしれないですね。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)