BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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W優勝戦 私的回顧

ダッシュ連動!

11R
①高田ひかる(三重)14
②細川裕子(愛知) 21
③田口節子(岡山) 20
④守屋美穂(岡山) 31
⑤中村桃佳(香川) 09
⑥鎌倉 涼(大阪) 11

 3連単を367倍まで跳ね上げたのは、やはり『魔性の穴女・ミポリン』だった。導火線は年末の住之江クイーンズクライマックスへ2着以内が欲しい鎌倉。6コースでは厳しいとみた鎌倉は、スタート展示からゴリゴリ動いた。

 そして守屋だ。スタ展では鎌倉に抵抗してスロー4コースに構えた守屋は、いざ本番ではスッと舳先を翻してピット方向へと逆走した。意表の5カド。内4艇がズンズン深くなる。守屋はまさにピットの岸辺、キワのキワまで艇を引っ張った。そして……

 重量挙げで鍛え抜いた勝負術なのか、守屋美穂はひとつの戦法を選んだら1ミリも妥協せずに最後まで貫き通す。今日も行った。内4艇の隊列なんぞ見向きもせずに唯我独尊のコンマ09、おそらく全速のトップスタート! カド受けの鎌倉はコンマ31だからして、ぴったり1艇身半差の突出だ。

 もちろん、守屋はさらなる継続手として迷わず一気に絞めまくった。いや、スタートがスタートだけに、ハコまくりに近い。2月の桐生レディースオールスターに続いて、またまた一撃のカドまくりVか!? 思った瞬間、インからしっかりスタートを行っていた高田が飛びついた。身を投げ出すような猛ブロックは、地対空の迎撃ミサイルのように守屋にヒットし、まくりのスピードが激減。

 そして、やっと今日のヒロイン・ピーチ姫の登場だ。6コースから守屋を徹底マークした中村がスパーーンと艇団を切り裂き、あっという間に先頭に立っていた。展開一本の勝利ではあるが、スタート展示から鎌倉の前付けを迎え入れ、「単騎ガマシで勝負したる!」という覚悟が優勝を呼び込んだ。そういう意味では、文句のつけようのない自力優勝だ。長い産休などでビッグレースの頂点から遠のいていた桃佳だが、今日の優勝をもって「お帰りなさい」の言葉を贈りたい。

 嗚呼、それにしてもの守屋美穂。結果は2着だったが、あまりにも峻烈なスリットラインとともに、多くのファンの記憶の襞(ひだ)に彼女の姿が強く深く濃厚に焼きついたことだろう。そう、彼女のシンプルな口癖もまた、1ミリの妥協もない本心なのだ。
――見ててください!

★女子賞金TOP12
①遠藤エミ
②平高奈菜
③守屋美穂
④田口節子
⑤平山智加
⑥香川素子
⑦中村桃佳
⑧高田ひかる
⑨寺田千恵
⑩細川裕子
⑪長嶋万記
⑫堀之内紀代子

史上最大の番狂わせ??

12R
①山口 剛(広島)11
②石野貴之(大阪)13
③片岡雅裕(香川)14
④平本真之(愛知)06
⑤篠崎仁志(福岡)15
⑥深谷知博(静岡)11

 ま、ま、またしても6コースが勝って446倍!! 天変地異のようなW優勝戦だったが、こちらの波乱を演出したのもカド選手。4カドに引いた平本だけがコンマゼロ台突出。勢いカド受け片岡の舳先を踏みつぶすような絞めまくりで、人気の内2艇まで呑み込みに行った。並びもスタート隊形も違うが、11Rを彷彿させる波乱の展開だ

 ただ、この平本の進軍を止めたのはイン山口ではなく2コース石野だった。節イチ83号機らしい伸び返しで、平本と舳先を揃えたところでゴッツンコ。作用反作用で石野は山口ともゴッツンコとなり、1マークの直前まで差しもまくりも叶わない態勢を強いられた。ここで優勝の芽がほぼ潰えたと言っていいだろう。

 軽い玉突きを浴びた山口も窮屈な先マイを強いられたところ、外から内へ猛然と襲い掛かったのが平本マークの仁志だった。山口の内フトコロに舳先を突っ込み、2マーク直前まで粘る粘る。だが、伸び足でやや劣勢だった仁志は、舳先を抜いて外に持ち出す。逆に仁志を絞め倒そうとしていた山口はまったくマイシロのないターンで、真横に大きく流れる。

 仁志の差し抜けか?
 思った瞬間、お待たせしました、今日のヒーロー深谷知博が凄まじいスピードで2艇の間を突き抜けて行った。いつの間に?? とレース後にリプレイを見直したらば、平本が絞めている間に全速でぶん回しつつ、仁志の外にぴったりと貼りついていたのだな。昨日の準優は6コースの差し内差しから2着~今日も6コースから二段のマーク差しで大逆転の優勝!!

 素晴らしい。相棒の39号機は私の大好きな超伸び型から、前検・初日で深谷好みの出足型にシフト。それはそれでゴキゲンな足と見ていたら、3日目あたりからいきなり推進力を失った。深谷本人も4日目だかに「良いところがなくなった」と迷路宣言しており、あの時点では優出どころではなかったはずだ。
 ところが、準優でチルトを跳ねるなどの調整をしたらば完全復活! いや、おそらく全部の足が初日より上向いたはずだ。迷路からどんなインスピレーションで抜け出した分からないが、この独自の調整が6コース×2激走の奇跡を生んだに違いない。

 そしてそして、この大会の勝者には、とっておきの“副賞”も用意されている。3300万円の加算で、賞金ランク25位から第5位までゴボー抜き! 大村グランプリの圏外からトライアル2nd・3号艇発進の権利が与えられたのだ。
 うーーん、返す返すも素晴らしい。準優も優勝戦も6号艇6コースから天変地異の下克上を起こした男。さらに、この勢いで黄金のメットまで奪うようなら、アルゼンチンvsサウジアラビアをも超越する奇跡として語り継がれるだろう(笑)。もちろん、今日の優勝を遂げた時点で、それはもう“番狂わせ”と呼ぶ次元ではないのだが。

賞金TOP18
①馬場貴也
②山口 剛
③片岡雅裕
④原田幸哉
⑤深谷知博
⑥菊地孝平
 ――――
⑦白井英治
⑧池田浩二
⑨桐生順平
⑩椎名 豊
⑪石野貴之
⑫毒島 誠
⑬遠藤エミ
⑭磯部 誠
⑮羽野直也
⑯上條暢嵩
⑰瓜生正義
⑱丸野一樹

(photos/シギー中尾、text/畠山)