田村、終戦。
10R
①片岡雅裕(香川)08
②寺田 祥(山口)14
③田村隆信(徳島)09
④篠崎仁志(福岡)14
⑤磯部 誠(愛知)11
⑥椎名 豊(群馬)12
片岡マー君が危なげなく逃げきった。1号艇で展示タイムがもっとも遅かったものの、そこはゼロ台のトップスタートで損失補填。スリットからじわり伸びた3コース田村の握りマイを封じて、ターンの出口で必勝態勢を築き上げた。
ちょっとしたサプライズは、4カド仁志のレース足だった。正攻法の二番差しからバック最内をするする伸びて2番手確保。ロスなく握って攻めた田村より、明らかに優勢な行き足だった。正直、3日目までは「C」=下位レベルと見ていた仁志14号機。昨日の2走を見て一気に「B+」=中堅上位まで引き上げたが、それでも上げ足りなかったか。田村69号機の足落ちがあったにしても、今日の仁志の実戦足は「A」が最適な見え方だった。
田村にとって唯一の逆転チャンスは2周1マーク。仁志の2艇身後方からつつつと内に舳先を寄せ、敵を迷路に誘い込むような絶品の切り返しを見せた。対する仁志は全速の抱きマイで交わそうとしたが、ギリギリの直前で一気に減速して差しに転換。モンキー態勢に入ってからの冷静沈着な作戦変更が功を奏し、田村の渾身の勝負手を空振りに終わらせた。もしも当初の予定通りに抱いて回ったら、田村との接触を避けられずに逆転3着もありえただろう。機力の上積みのみならず、精神面とテクニック面でも仁志の成熟ぶりを感じさせる2着だった。
「菊地超え」の予兆
11R
①石野貴之(大阪)13
②平本真之(愛知)08
③桐生順平(埼玉)15
④瓜生正義(福岡)17
⑤松井 繁(大阪)13
⑥上條暢嵩(大阪)12
ここも大本命の石野がしっかり逃げきった。スリット隊形はやや冷や汗もの。2コース平本がすんっと抜け出たように見えたが、そこからの伸び返しが半端ない。すぐに舳先を揃え、くるり1マークを先制してバック突き抜けた。
おそらくそのインモンキーはターンマークをちょいと外していたと思うのだが、それでも正確に差した平本をまったく問題にせず突き放していた。83号機の出足~行き足は今日も節イチだった、と思う。レース後の石野も「先に回ってしまえば勝てると思ってたので」と83号機の確かな信頼を吐露していた。
2着も順当に2コースから冷静に差し回った平本。こちらも外から追いすがった松井ら後続を寄せつけず、SG準優にしては珍しく早々に完璧なワンツー隊形が固まった。平本の足も上々で今日の私は(ようやく予想段階で)Aランクを授けたのだが、ターンごとに後続を突き放す様子はまさにAが相応しい。
そして、その平本を寄せつけなかった石野83号は、帰納法的にもSで間違いない、とお伝えしておこう。3日目のインタビューで「(賞金ランク4位の)菊地超えを目指します」という宣言が、かなーり現実味を帯びてきた。
不完全な“王手”
12R
①山口 剛(広島)11
②馬場貴也(滋賀)10
③関 浩哉(群馬)12
④羽野直也(福岡)11
⑤池田浩二(愛知)08
⑥深谷知博(静岡)07
ここもやっぱり大本命・山口の逃げ。ただ、準優3個レースの中でいちばん余裕のない勝ちっぷりだった。3コースからぶん回した関をギリギリ防ぎ、さらにバック横一線で襲い掛かる後続艇と足色は一緒。2マークの旋回は最内から伸びた深谷の舳先があわやぶつかるかも、という緊迫したターンになっていた。
「うーーん、このままだと……明日の2番が厳しいんで」
「明日は機力では2番が上なんで、皆さんの応援が欲しいです」
レース後のインタビューで、山口は2度も同じ番号を口にした。「2番」はもちろん石野83号機。確かに、同じイン逃げでもターン回り~出口の押し足の迫力はライバルがかなり優勢だった。となると、明日の山口はひたすら石野に対抗するための調整と作戦に専念することだろう。その思いがあまりに強すぎると、山口×石野の局地戦を横目にとんでもない埋伏の兵が突き抜ける可能性も想定しておきたい。
さてさて、2着はあっと驚く大外の深谷。深谷39号機は「いちばん伸び――るお宝モーター」として戦前からイチ推しにしていたのだが、いざフタを開けてみたらば強力な出足タイプに変身。それはそれで乗り手にフィットした相棒として高く評価していたらば、3日目あたりから自慢の出足も衰退の一途。深谷本人も「良いところがなくなった」と迷走コメントを口にするほどだった。
そんなこんなで私もちょいと軽視していたらば、今日の実戦足はどうだ。前述、バック最内からするする伸びて、2マークは窮屈な小回りなのにサイドがビシッと掛かって2番手進出。あとは後続を寄せつけないパワフルな足色で、奥方と同じファイナル6号艇をもぎ取ってしまった。単純な比較はしにくいけれど、こと機力に関しては山口19号機よりも上だったと思う。明日も6号艇を余儀なくされる深谷39号機だが、もちろん「まったく軽視できない大外枠」とお伝えしておこう。(photos/シギー中尾、text/畠山)