11Ｒ。長嶋万記にとっては悔しいレースとなってしまった。逃げて先頭を走りながら、２マーク出口でキャビって失速。先頭を明け渡してしまった。猛然と奪い返しにはいったものの、届かず。１着を想定し、また実際に逃げてもいるので、レース後の痛恨の表情は当然である。ただ、キャビった原因について、「こうしておけばよかった」と思い当たるものがない、ともいう。進入の波が残っていたのなら、それはどうすることもできないし、調整自体には満足していたそうで、敗戦直後は失敗という感触もなかったようだ。それだけにさらに悔しいわけで、明日はまず切り替えて臨むほかなかろう。
逆に、香川素子は笑いが止まらない１着か。もちろん、１マークしっかり差して２番手を走り、２マークもきっちり旋回したからこその、逆転１着。それでも、長嶋の失速はまさかというべきものでもあったのだから、実にツイている。そして、このツキはこうした短期決戦においては実に大きなポイントとなるだろう。エース機のパワーは存分に見せていると思うのだが、香川自身は「みんなも出とるよ」。むしろ12人のなかでは下のほうでは、なんて言ってのけたりもするのだから、実に余裕を感じさせるのである。夏冬女王戴冠の偉業にぐっと近づく勝利、と言ってしまうのは気が早いと思いつつ、ふと思いを馳せたくなるというものである。
長嶋も悔しそうだったが、最も落胆を見せていたのは堀之内紀代子だ。２戦連続のシンガリ負け。チルト１度で臨んだのだが、ピット離れがもたずに遅れ、腹を据えて６コースへと回ったのだが、伸びなかった。道中も見せ場らしい見せ場を作れずに、優出は絶望的と言える６着２本となってしまった。エンジン吊りを終えて控室に戻る間中、ヘルメットをかぶったまま、俯いていた堀之内。注目も集めていたことを理解しているだけに、不甲斐なさを感じるしかないのだろう。このまま終わってほしくはないのだが……。
12Ｒ。中村桃佳がコンマ01と踏み込んだが、放ったか攻め切れず。平山智加が守屋美穂のまくり差しを押さえて、逃げ切った。レース後は歓喜というよりも、かなり柔らかな、余裕のある雰囲気で、リプレイの２マークを見ながら「しぶき、すみません」と他の選手に頭を下げていたりした。例年の想定ボーダーである21点が今年もボーダーとなるのなら、平山は優出当確。ちなみに、守屋が２着２回となり、現時点で得点率トップに立ち、こちらも当確だ。
攻め切れなかった中村だが、３着に入って、優出へ望みをつないでいる。それもあってか、レース後は笑みも漏れており、雰囲気は悪くない。平山とは笑顔を向け合う場面もあり、安堵の思いもあったかもしれない。
表情が冴えなかったのは寺田千恵だ。結局、４番手競りにも敗れて僅差の５着。優出はなかなか厳しい状況である。出迎えた堀之内紀代子にずっと何事かを話しながら、険しい顔つきで控室に戻っていき、その途上では「ハァ」と大きな溜息もついていた。堀之内も微妙な笑みを返すしかできない感じで、平山や中村の周囲との雰囲気は対照的に過ぎた。
枠番抽選では、１号艇を引いた田口節子と平高奈菜が満面の笑み。特に平高はド派手なガッツポーズとともに「よっしゃーっ！」と歓声もあげていた。大事な大事なトライアル第３戦。１号艇で戦えるのはとにかくデカい。
一方、寺田千恵と守屋美穂は６号艇。守屋は思わず天を仰いでおり、大事な大事な第３戦の外枠を嘆いた。Ａ組は１番手の香川素子が５号艇、２番手の守屋が６号艇で、いきなり外枠が出てしまっている。そこで誰かが「もうゴンロクないんだから」と声を上げて、笑いが起こったのだった。守屋も思わずニコッ。なんだかんだで、枠番抽選は実に和やかですね。今年の枠番抽選はこれにて終了！
シリーズ。ボーダー争いは、９Ｒを終えた時点で19位以下から浮上する選手がいなくなり、また10Ｒ出走組は無事故完走で当確か、勝ってもボーダーに届かないかというメンバー構成。つまり９Ｒの結果によって、準優18名は実質上、決まっていたことになる。ボーダー18位は中田夕貴。得点率は５・50で、３日目終了時点の５・80から下降している。中田は７Ｒで５着に大敗しており、肝を冷やしたことと思うが、なんとか生き残った。
惜しかったのは清水愛海。８Ｒはスタートタイミングこそ悪くなかったが、放ったのか外から伸びられていったんは５番手。それでも３番手まで押し上げたのは見事だったが、得点率トップから陥落してしまった。ピットではあまり感情をあらわにしていたなかったけれども、惜しいことをしたという思いは残っただろう。
さらに惜しかったのは、清埜翔子だ。中田が順位を下げたことにより、得点率トップに浮上。10Ｒは１着条件でトップ通過という簡単な状況ではなかったが、持ち前のまくり一撃は前半の４コース戦でも飛び出しており、ここも期待がかかるところだった。しかし、まくりは不発で、あろうことか６着大敗。準優１号艇まで手放してしまった。ピットに戻ってからはさすがに無念の表情を見せており、何度か天を仰いでもいたのだった。２日目後半から３連勝といい流れだっただけに、この大敗は痛恨か。それでも準優は２号艇と好枠、この鬱憤を晴らしたいセミファイナルとなる。
予選トップ通過は、８Ｒで清水を破った大瀧明日香。結果的には直接対決でトップを奪取したという格好である。ちなみに、清水は２着なら大瀧と同得点率だったが、上位着順数の差により大瀧が上位。８Ｒの１着は果てしなく大きい勝利だったのだ。流れを完全に手中にしたと見えるのだがどうか。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩 ＴＥＸＴ／黒須田）
