遠藤エミが屋外のプロペラ装着場にいた。隣には同期の樋口由加里。樋口は今節ラストランに向けて懸命な調整を行なっているわけだが、遠藤はといえば、ハンマーを手にする様子はなかった。ゲージを当てて入念に形状の確認。時折、布でプロペラを磨いたりもしていた。調整というよりは、点検作業といった趣きだ。途中、おもむろに立ち上がり、整備室へ。こっそりついていってみると、やはりプロペラを磨いており、今のところ叩いたりするつもりはないらしい。よく見ると、服装は普通のジャージ姿。ケブラーのズボンもシューズも身に着けていない。ということは、ボートに乗るつもりも今のところはないということ。これは確実に、好仕上がりの証しだ。ペラを磨いたりしているのは、何もしないでいると落ち着かないとかかな。毒島誠と遠藤は、優勝戦1号艇でも朝から乗って、調整して、の代表格。毒島が辿り着いた「我慢」の境地に遠藤もまた到達しているのかもしれない。
対照的にペラをかなり叩いているのは藤原菜希だ。4号艇なら伸びに寄せる調整も、と言っていた準優後。その調整をまさに行なっているところのようだった。けっこう強くハンマーを打ちおろすこともあって、ひとまず形を完全に叩き変えているのは明らか。これで乗ってみて、効果がなければ元に戻す可能性もあるわけだが、4カド一撃の可能性を模索しての調整はしばらく続きそうだった。
整備室脇の調整所では、細川裕子がプロペラ調整。今節はずっと、細川はここで調整を行なってきた。優勝戦の朝も変わらず、細川はそこで時間を過ごしている。6号艇で6コース濃厚。アウトが利きにくい福岡水面だけに、自力で攻められる可能性は薄いように思える。それでも、いざ展開が向いたときにはきちんと突けるだけの足に仕上げる。諦めることなく、懸命の調整を続けているわけだ。
渡邉優美は整備室奥の調整所に。これも渡邉が節間通してペラ調整を行なってきた場所だ。昨日は本当にいい仕上がりになっていた。渡邉はそう言って、朗らかな笑顔を見せた。これで遠藤さんに対抗できるかも、とも。意外とピリピリした印象は受けなかったのだが、それも仕上がりに手応えを得たからだろう。足が良く、1号艇でもある遠藤は間違いなく強敵で、渡邉も挑戦者の心持ちになっているようではあるが、だからこそ撃破の意気込みもまた強い。やはり精神的な仕上がりは超抜である。
櫻本あゆみと浜田亜理沙はややマイペースな過ごし方のように見えた。櫻本は2R発売中にプロペラを外し、3R発売中に調整をスタート。浜田はすでにペラは外されていたが、本格的な調整は4R発売中からとなっていた。浜田曰く、12Rの時間帯の気象に合わせ切れなかった、と昨日のレース後(12R2着)。今日も12Rだから、昨日を踏まえて調整開始の時間帯をやや遅めに設定したということもあるのだろう。櫻本も浜田もここから調整のピッチを上げていくことになる。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)