
11R。スタート展示では宮地元輝がピット離れで遅れ、本番では平本真之が遅れた。トライアルは一筋縄ではいかない。勝負駆けだから、回り込んでも誰も譲らない。敵失を徹底的に突く。勝負というものの真理がトライアルには詰め込まれている。
その勝負の綾を巧みに味方につけたのは地元の上條暢嵩だろう。3コースを獲り、1マークで好意につけると、2周1マークでは切り返して2番手を奪った。これで得点は21となり、この時点で当確とは言えなかったものの2nd行きへの視界が開けた。上條は、安堵なのか、それとも戦い切ったという達成感なのか、どこか感慨に浸るかのように天を仰ぎ、そのまま視線を上に据えながら控室へと歩を進めた。他の5人は、その後に道中で合流し、肩を並べていたのに対し、上條は我が道を行くと言わんばかりの帰路。全員が2nd行きを熱望して戦う1stだが、住之江が舞台という点においては、誰よりもここで敗退するわけにはいかないという思いが強かったのかもしれない。



この時点では、宮地元輝、河合佑樹、西山貴浩が2nd進出絶望的という立場になってしまった。宮地はしきりに首を捻り、峰竜太がいたたまれないといった表情で傍らに寄り添う。河合はどこか明るさも見えたのだが、もちろんそれは本音ではあるまい。悔しさを悟られまいとする、そんな風情としか思えなかった。そして西山はただただ肩を落とし、池田浩二が特に言葉もなく並びかけた。勝って2nd行きを確定させた土屋智則に蹴りかかる素振りを見せたあたりが精いっぱいの西山らしさだったが、こちらも本音はその前に見せていた落胆の表情だろう。

そう、土屋は進入がもつれながらもしっかりと逃げ切った。当然、こちらは笑顔である。昨年は1st敗退、そのリベンジを果たした格好でもあり、2ndで待つ毒島先輩と戦えるという喜びもあっただろうか。ひとまず、この時点では平本真之も当確。ただ平本はバナレで遅れて大敗を喫しており、複雑な表情を見せている。

12R。一筋縄ではいかない、とはいうものの、やはり事故は見ているこちらも痛い。それも、松井繁の転覆なのだから、一気に空気が緊迫するのも無理はない。水面際でレースを見ていた上條が、ものすごい瞬発力で医務室へと向かう。その後、ピットに戻ってきた上條から「大丈夫のようです」という声が聞こえてきたが、それは重篤なものではないというほどの意味であって、残念ながら途中帰郷となってしまった。こんなかたちで久しぶりのグランプリが終わってしまうのはあまりにも無念だろうし、こちらもその思いは変わらない。年が明けたらまた、力強い王者の姿を見せてくれることを願うばかりだ。


事故レースということもあってか、どの選手も神妙な様子であった。勝って2nd行きを確実にして関浩哉も淡々と戻ってきているし、2nd行きがかなわなかった瓜生正義も特別悔しさを見せてはいなかった。瓜生の場合は選手会代表という立場的に、松井の容態を慮る思いも強かっただろうか。

佐藤翼は初のグランプリを2日で終えなければならなくなったわけだが、レース後はやはり粛々とした表情で、走って控室へと戻っていっている。ただ、着替えを終えて出てきたときには、はっきりと悔恨が伝わる表情だった。せっかく手にしたグランプリ切符がここで有効期限を迎えてしまったことは、痛恨極まりなくて当然だ。2ndで桐生先輩と戦いたい。そう強く願っていただけに、悔しくてたまらない。それは宿題として、来年はさらなる飛躍を期待しよう。

初出場組で勝ち上がりを決めたのは関、そして定松勇樹だ。定松は今日も深刻な表情となっていたレース後。松井の転覆のシーンは、もちろん定松に責任があるわけではないが、内からおっつけるような展開にもなっていただけに(また松井がキャビったあと接触があったか)、少し暗澹に襲われていたということか。それでも、2nd進出を決めたのだ。師匠の待つセカンドに。こうなったら師匠も含めた強豪先輩たちに真っ向からぶつかるのみ。いろんなものをリセットして、ハツラツとした戦いを見せてほしい。

シリーズ。7R、宮之原輝紀が逃げ切り。ただし2号艇、ピット離れで(片岡雅裕が遅れての?)イン強奪からの逃走劇であった。お見事! 今節2本目の逃げ切りで、好得点率で明日から合流するトライアル1st敗退組を迎え撃てそうだ。
レース後、峰竜太と話し込む姿があった。どうやら宮之原のほうから声を掛け、アドバイスを求めた様子。支部は違っても、スーパースターに自分から助言を求める姿勢はアッパレの一語だ。以前からそういうシーンをよく見かけていて、19年バトルトーナメントでは桐生順平と話し込んでいたり(当時はまだ大レースでの絡みはない時期)、今節も池田浩二と話し込んでいたりしている。臆することなく支部の違う大先輩とコミュケーションを取るのは確実に養分となっていくことだろう。

9Rは仲谷颯仁が3コースからのまくりで快勝。2コースの中島孝平がヘコんだ隊形で、仲谷は締めずに1マークでは開いた格好。おそらくイン寺田祥はまくり差しを警戒して落としたはずで、その瞬間に一気に外を握っていったのだからお見事すぎる一撃だった。寺田も抵抗にいったが間に合わず。ナイスショット! 出迎えた瓜生正義に称えられて笑みを浮かべた仲谷は、すぐに寺田と中島に頭を下げに行っている。もちろん詫びる必要などない快勝だが、そうして対戦相手に礼を尽くすのがボートレーサーたちの流儀。その後は中島と話し込みながら控室に消えていったが、その“感想戦”は実りあるものだったことだろう。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)