BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ざわつく10R

 10R、佐藤隆太郎が3カドまくりで1着! いやあ、凄い。モーターも出ているが、しっかり手のうちに入れて抜群の成績につなげているあたりは、昨年SG初出場を果たしたキャリアとは思えない。3月にクラシックでSG初優勝を果たしたことにも驚かされたが、それが一気に彼を成長させたのか。レース後は淡々。それは今節のどの勝利とも変わらないが、何もなければ予選トップを決める勝利であるにも関わらず、浮足立ったようなところを見せないあたりもたいしたものである。

 ただ、実はピットでは少し騒然となっていた。白井英治が6号艇で前付けに動いて2コースに入った。2号艇の今垣光太郎は白井を迎え入れていて、佐藤はその外に位置している。佐藤が4カドになるのか、あるいは今垣が得意の3カドに引くのか。そう誰もが注目していたとき、今垣が佐藤の外に艇を出すようなかたちになり、丸野一樹が「えっ!? マーク!?」と訝しそうに声をあげたのである。それで佐藤が3カドになったという次第だが、選手の感覚として「今の進入は正当なのか?」と疑問が湧いたようだ。実際、菅章哉が言った。「前に他の選手がマークに来て、今みたいな感じで3カドになったとき、待機行動違反をとられた」。選手たちの表情が一気に曇る。さらに、佐藤が3カドまくりを決め、マーク差しの今垣が並びかけながらも、佐藤がグイグイ伸びて先頭に立ったとき、「違反、とらないでほしい……」とそこにいた誰かが願うように言ったのだった。

 結果は、セーフ! 佐藤は待機行動違反をとられず、予選トップ通過確定! なにしろ、佐藤が今垣を置き去りにしたとき、減点の心配をしていた選手たちも「エッグーーーッ!」とのけ反ったほどの足である。誰もがSG2連続優勝が現実味を帯びたことを実感したに違いない。

 一方で、白井英治の落胆は大きかった。レースを迎えた時点でちょうどボーダーあたりに位置していたこともあっただろう、前付けで勝負に出た。しかし、まさに佐藤の3カドまくりを直接浴びる格好になってしまった。やるだけやった、とは言える。しかし佐藤の武器を引き出してしまったかたちでもあり、正解だったのかとの悩みもあっただろう。カポック脱ぎ場では、今垣を交わして2番手にあがった峰竜太を中心に、朗らかな感想戦が行なわれていた。峰は声も大きいから(笑)、空気を支配していたと言ってもいい。そんななかで白井は、苦虫を噛み潰したような表情のまま、黙々とヘルメットを磨いていた。峰が去ると、1号艇だった瓜生正義に「瓜生さん、ごめん」と進入を深くしたことを詫びたが、その声もまた力弱かった。痛々しい姿ではあったが、しかしそれが全力で勝ちにいった証し……。

 この結果を受けて、勝負駆けについてはトップ争いは決着、ボーダー争いもほぼ趨勢は決まった。菅が現在のボーダーをこちらに問いかけてくる。菅自身は予選敗退が決まっているが、同支部の後輩である島村隆幸が5・80でボーダー近辺にいたのだ。その時点で島村は17位。19位以下から2人が島村を超えてくれば予選落ちとなってしまうわけだが、僕の持っていた資料を覗き込んで島村を超えるのは最高で1人と確認された。「おっ!」「やったじゃん!」。島村は6号艇にはなりそうだが、準優当確! 島村の顔がぱーっとほころび、菅も嬉しそうに笑ったのがなんとも微笑ましかった。二人ともそれまでまあまあ胃の痛い思いをしていたんでしょうね。

 11R、18位圏内から準優圏外に落ちる可能性があったのは片岡雅裕のみ。しかしきっちり2着を獲り切って、地元SGでの準優進出を決めた。片岡にガッツポーズを見せて祝福を送ったのは西山貴浩。森高一真つながりで仲良しですからね。ちなみに、西山は20位。昨日の選責転覆がなければ……。

 そして、次点は深谷知博だった。まさに片岡が落ちてくるのを待つしかない立場で、残念そうな顔を一瞬は見せたものの、サバサバした様子だった。選手たちは他人の失敗を願うようなことはあまりしない。むしろ周囲のほうがヤキモキしていたのではないかと想像するし、ただしもし浮上できたときにはしっかり喜ぶものです。今回は残念だったが、あと2日、意地の走りを見せてくれ!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)