9R、吉田裕平が逃げ切り。ドリーム戦はまくり差しを狙って行き場なく大敗してしまったが、今日は前半3着、そして後半1着と、しっかり巻き返しを果たしてみせた。ピットに戻って来たときには淡々とした様子で、そこにはすっかりSGレーサーの風格も見えたりしたものだった。もはや一介の若手ではなく、SGでも決して位負けしない強豪に成長した。得点率も上位をうかがう位置につけて、後半はさらに勢いを加速させたいところだ。
と、そんなふうに吉田を見ていたら、急にニッコリ笑って、若々しい顔を見せたのだ。それを引き出したのは池田浩二。それまで愛知勢全体で淡々とエンジン吊りをしていたのに、池田は突如やや素っ頓狂な声をあげて吉田を称えたのである。スーパースターの先輩がおどけてみせて、自分を祝福してくれたら、そりゃあ吉田も頬が緩むよね。勝利の感慨みたいなものも沸き上がってきたかもしれない。西山貴浩をはじめ、池田を慕う後輩は支部を問わず多いわけだが、こうした心安い素顔が後輩との壁を低くしているんでしょうね。人徳ということだ。
その池田とじゃれ合っていたのが、やっぱり西山貴浩。ただ、昨日まで、もっと言うと1号艇で敗れた今日の前半まで、西山の意気がどうにも上がっていないように見えていたのである。機力が冴えないからなのか、いよいよ年末が近くなっていつもと違う心持ちになっているからなのか。西山は賞金ランク6位圏内でこの時期を迎えている。西山にとって初めての体験だ。それが西山に“異変”をもたらしているのか。しかし池田と絡む西山は、いつもの陽気さが戻っているように見えた。
今日の西山はレース後もペラ調整と試運転を続け、それは10R発売中まで続いた。そして、試運転を切り上げて控室に戻る際、こちらの姿を見つけると、実に力強い声色でウッスとか何とか言ってきたのである。今朝なんて軽く会釈する程度だったのに。これは機力一変と見たがどうか。ボートレーサーの機嫌はモーターの感触次第でいくらでも変わりうる。というか、劣勢のときには調整方法などいろいろ考え込むから、気もそぞろになりがちだ。まあ、今までの西山は劣勢のときには愚痴やらなんやらこぼしたりもしていたものだが、ベスト6が見えている今、やはり意識は変わっているのかもしれませんね。とにかく、精気が戻ったようにも見える西山の姿は頼もしいぞ。
その西山と延々試運転を繰り返していたのが柴田光だ。今日の4Rは6号艇で、前付けも実らずに6着大敗。枠番を考えれば致し方ないところもあるわけだが、柴田本人はそんなことをひとつも考えずに、ただただパワーアップにいそしんでいたという次第だ。試運転を切り上げた後には、足合わせでの感触を話し合っていたのか、西山と真剣な顔つきで向き合う姿もあった。
土屋智則が、背中に「継続は力なり」と大書されたTシャツを着ていた。これは柴田のSGデビューを記念したもの。34YEARS 5MONTH。そうも書かれていたが、柴田はそれだけの歳月、ひたすら努力を継続して、ここに辿り着いた。それだけの長き時間を、大舞台は縁遠かったかもしれないが、腐らず費やしてきたのである。それは後輩たちにとっても嬉しく、そして誇りであろう。今日、遅くまで延々と試運転をしていたのは、まさにその体現だ。うーむ、早く水神祭を見たいっすね! それをかなえたとき、後輩たちもそのTシャツを着て一緒に飛び込むんだろうなあ。
さて、初日にFを切ってしまった田口節子は、6Rでは2着。3マンシュウの片棒を担ぐこととなった。1着は1号艇の江口晃生で、逃げ切りのピンマンがなんと3マンシュウ! F後の田口がいかに軽視されていたか、そんな高配当である。まあ、江口も初日大敗があったから、やや人気が割れてもいたわけだが。
その田口、レース後は本体整備! 明日は部品交換があるかもしれないので、直前情報をチェックしてください。つまり、田口は賞典除外になってもまったく緩めていない! スタートを攻められないのは仕方ないが、機力をアップさせてしっかり戦おうと、臨戦態勢を崩していないのである。そう、F後だからといって軽視してはならない(ならなかった)のである! 明日からの田口節子にも要注目!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)