勝負駆けにおいて、最もホットだったのは9Rだったか。宮地元輝と佐藤翼、どちらかが1着なら得点率トップに立つ、という戦い。6号艇の松井繁が前付けし、展示では佐藤翼が突っ張ってスローに入り、宮地が5カドだったが、本番は宮地が佐藤をブロックするような格好で126/345の並びに。やはり宮地は5カドより4カドが欲しかったのだろう。その駆け引き自体、熱かった。
4カドからトップスタートを決めた宮地は、しかし絞めるのが難しいと悟ったか、直進して鋭く舟を返す、宮地独特の差しを繰り出す。だが、これは2番手まで。予選トップ通過の目は潰えた。レース後の宮地は、まず拗ねたような表情を見せ、次いで顔を歪める。トップを意識していたのは明らかな、そのための策が不発に終わったことへの無念がつのる、そんな様子なのであった。
それにしても、だ。佐藤翼は6着に敗れ、5・80まで得点率を落としてしまった。トップの目もあったのに、一転して予選落ちの可能性が生じてしまったのだ(この時点では18位)。突出した得点率が出ていないからこその現象。佐藤はやはり、やや蒼ざめた表情のレース後となっている。(結果、まさかの予選落ち……)
そのトップ争いに隠れていたというわけではないが、実は1号艇の西山貴浩は1着条件の勝負駆けだった。深い進入にも動じずに、好発から気合の逃走。勝負駆け成功! ピットに戻るや篠崎元志にガッツポーズを見せつけ、声を掛ける選手たちには快哉を叫ぶ。ウィナーインタビューに向かう際には、係留所にいた森高一真のところまで駆けて行って、わざわざ勝利自慢。とにかく力強い顔つきで、勝利の喜びをあらわしているのだった。お見事!
10Rは菊地孝平がイン逃げ1着。菊地はピン条件だったので、見事に勝負駆けクリアだ。とはいえ、この時点で18位なので、残り2つのレース次第ではまだ予断は許さない。松井繁に称えられて、爽快に笑ってはいたものの、しかしキュッと気を引き締めて「この程度で喜んでちゃダメですよね」と、ギリギリの戦いを強いられている自分に喝を入れたのだった。
峰竜太は2着条件で臨み、2着でクリア。ドリーム戦を快勝し、あれだけラッパを吹きまくっていたにもかかわらず、かなり厳しい勝負駆けとなっていたのだから、何が何やらといった感もあります。それでも、ここでしっかり決めるのがスーパースター。枠番を考えれば、準優も決して楽な戦いにはならないだろうが、この男なら何か魅せてくれるのではと思わせるものがある。実際、声をかけてきた仲間には「まだまだ!」と返しており、本番はここからだという思いが強そうだ。
同じく2着条件の丸野一樹は転覆で終戦。少し時間が経ったあとに丸野とは話ができたのだが、やはり落胆している様子があって、声にも力はなかった。だが、「こんな時もある、ってことですよね。次のオーシャンで頑張りますよ」と前を向いてもいる。オーシャンはグランプリのトライアル2ndでFを切り、SGから遠ざかるきっかけとなった因縁の地・大村開催だ。すべてを吹っ切るべく、力強く踏み出してほしい。
11Rで勝負駆け成功は馬場貴也。2着条件のイン戦をきっちりと逃げ切っている。今節はやや苦戦気味で、最後に回ってきた1号艇。今日は2号艇で2着の前半とあわせて、1着2着だから、薄氷の予選突破とも言える。というわけで、馬場のレース後はひたすら安堵の雰囲気。足的にもまだまだ不満があるということもあるのか、あまり歓喜の様子はうかがえないのであった。西山貴浩とはちょっと対照的ではあった。
あまり感情をあらわすほうではない片岡雅裕が、悔し気に目を見開いていたのも印象的。片岡は2着条件で、いったんは2番手を走っている。しかし椎名豊との競り合いになり、ピットで「マーちゃん、いけーーーーっ!」と声をあげる西山貴浩の思いもむなしく、3番手に後退してしまっている。西山は控室へと戻る片岡に「足の差があったな」と声をかけ慰めていたが、それも含めて、片岡の顔には無念が貼りついていたのであった。それだけ気持ちが入ったレースだったということだろう。
12Rは桐生順平が逃げ切り。4日目ピンピンで勝負駆け成功! しかも、一気に5位まで浮上したのだから値千金の連勝であった。崖っぷちから生き残ったことで、やはり桐生の顔にはホッとしたような安堵感が漂っていた。明日は2号艇で、1号艇は同期の宮地元輝! 100期対決に注目しよう。
それにしても、12R前には圏外にいた桐生が一気に5位にまでランクアップしたように、とにかく混戦模様の準優切符争いだった。なにしろ、6・00の“13位タイ”が7人! つまり、1人はベスト18からこぼれてしまっているわけである。それが山田康二。1Rでなんとか6・00をキープしたのだが、一日経って次点に押し出されてしまったのだから残念すぎる。さらに、10Rで条件をクリアしていたはずの菊地孝平もまた、圏外に落ちることとなった。予選最終日のボーダーは生き物、その呼吸次第で明暗は残酷なまでに分かれてしまう。
12Rには、結果6・00となった選手が二人。関浩哉と中田竜太だ。関は2勝しているので、6・00グループのなかでも上位。だから逃げ切った感があったのか、レース後はホッとしたような笑顔が見えた。
一方、中田は1勝で、状況を完全に把握していなかったとするなら、かなり微妙な6・00であった。だからなのか、レース後は呆然とした様子だったし、一瞬だけ顔をしかめてもいた。痛恨の4着だったのだ。しかし、結果は18位! 浜田亜理沙と夫婦準優出! 明日は中田のほうは外枠になってしまったが、夫婦SG優出の偉業をかけての準優となる!
なお、予選トップ通過は定松勇樹! 7Rでレースを終えていた定松は、その後は試運転と調整、さらには新兵仕事と忙しそうに動いていました。ひとまず、プレッシャーを感じるヒマはなさそうな、4日目の午後なのであった。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)