BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――闘志節イチ

 大きな動きのある選手、ない選手に二分されている優勝戦メンバー。組み分けすれば、篠崎元志、白井英治、湯川浩司と、松井繁、峰竜太、毒島誠。お気づきかとは思うが、前者が動いている組である。

f:id:boatrace-g-report:20171207112755j:plain

 毒島誠はゲージ擦りをしていた。これも作業には違いないが、余裕のある選手が取り組むことが多く、毒島はおそらく6人のなかではもっともモーターが動いている。6号艇だからということもあるのか、表情は実に柔らかで、はじめてのSG優勝戦を迎えている重圧のようなものはまったくうかがえない。勝負の時間が近づけば、その一種独特な空気を強く実感することになるだろうが、現時点での毒島はかなりリラックスできていると言っていいだろう。

f:id:boatrace-g-report:20171207112811j:plain

 一方、峰竜太からは緊張感がバリバリに伝わってきた。少し話をしたとき、峰は最初はパッと笑みを浮かべたが、話していくうちにどんどんと表情がカタくなっていく。「楽しんで帰りたい」という言葉は笹川賞でも聞いていて、そう語りながら胸の高ぶりを押さえようとしているふうに聞こえなくもない。

 でも、それでいいのだ。昨日も書いたように、峰は緊張して大勝負を迎えたほうが力を発揮できると思う。緊張している自分をごまかすより、素直に緊張と対峙したほうがいいに決まっているのだ。

f:id:boatrace-g-report:20171207112858j:plain

 王者は余裕です。たまたまプロペラ室を覗いたとき、松井繁が笑顔満開で横澤剛治とジャレている姿があった。また、エンジン吊りのあとに中島孝平に声をかけられて、「やったやんけ~」とやはり満面の笑みで祝福(?)している姿もあった。今日もプロペラ調整が作業の中心となるのだろうが、3R前までには本格的な調整を始めている様子もなかった。泰然自若に優勝戦までの時間を過ごすことだろう。

 

f:id:boatrace-g-report:20171207112907j:plain

 動いている組では、1R展示後にはすでに湯川浩司のボートが係留所につけられているのを確認している。青山登さんによると、昼イチでキャリーボディーを交換したとのこと。優出インタビューを挟んで試運転を行ない、1R展示後にはプロペラ調整に入っていた。

f:id:boatrace-g-report:20171207112916j:plain

 白井英治は1R後にボートを水面に下ろしている。係留所での調整を経て、試運転。何周かしたあとには、すぐにボートを水面に上げた。数周の試運転で濡れたボートを丁寧に丁寧に磨く白井。これは白井のルーティンでもあり、賞典レースだろうと一般戦だろうと、白井はボートを丁寧に扱い、語りかけるように汚れや水滴を拭っている。時にはモーターを磨いていることもあるくらいだ。動いている組では、比較的緩やかな動き、だろうか。

f:id:boatrace-g-report:20171207112928j:plain

 で、最大級の動きを見せているのは、篠崎元志である。篠崎は昼イチから整備室にこもり、いったん水面に出たあと、ふたたび陸に上がってキャリーボディー交換。その後すぐに水面に出て試運転を行ない、また陸に上がって整備室へと飛び込んでいった。これが2R終了後のことだから、短時間に3回も整備室にこもったのである。チャーリー池上カメラマンによると「いい減量になります」なんて整備士さんに笑っていたそうだが、厚着をして陸上でも水上でも走り回っている姿には、必死さがとことんあらわれているのであった。いや、必死さなんて言葉じゃ足りないか。なんとしてもパワーアップを成功させ、地元SGを勝ち取ろうという執念か。この動きが実るとは限らなくても、篠崎としてはやらずにはおれない。後悔しないようにとか、納得できるレースをとか、そういうことを超えた次元で、篠崎は勝利を渇望しているのである。たぶんアシは6人でもっとも劣勢だろう。だが、闘志は節イチである。(PHOTO/中尾茂幸=毒島、松井、篠崎 池上一摩=峰、湯川、白井 TEXT/黒須田)