BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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三国オーシャンTOPICS 3日目

風の魔力

 

 ボートレースは腕とパワーの競技だが、“風の競技”でもある。つくづくそう感じた1日だった。台風のゾーンから外れてほぼ無風の1、2Rは、あっさりのイン逃げ2連発。が、台風の渦の悪戯で、いきなり向かい風が吹きはじめた3Rからレースががらり変わった。このレースは石野貴之の4カドまくり。まあ、これはパワー差が歴然すぎる勝利でもあった。

 

 

 

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 ファンの度肝を抜くのはここからだ。続く4R、超人気薄の5コース須藤博倫が4カド・吉田拡郎の攻めに連動してまくり差し快勝(491倍)、5Rは6コース茅原悠紀が自力で攻めつつシャープにまくり差して圧勝(47倍)、8Rも最アウトの平本真之が5コース田中信一郎の握りマイを利用してスピーディな一閃のブイ差し(259倍)、11Rは5コース森高一真が豪快にまくりきって快勝(445倍)、最終12Rも5コース中田竜太が4カド茅原の攻めに乗じて鮮やかなマーク差しを決めた(278倍)。

 

 

 

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 向かい風になった3Rから最終Rまでの10戦で、4~6コースが実に6勝の大暴れだ。考えられる大きな理由はふたつ。

①昨日までの追い風→向かい風の変化でS勘にムラが生じてスリット隊形が極端にバラけた(特にスロー勢の遅れが目立った)。

②向かい風の効力でスロー勢よりダッシュ勢の伸びが目立ち、多くのカド選手がまくりに行った。

 

 

 

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 この2点が相加相乗効果を生み出し、ダッシュ勢が一気に台頭したのである(断定)。逆に、2コースから差した選手はほぼ壊滅状態だった。11Rは節イチパワーの石野をもってしても、森高&原田幸哉のアウトセットの強襲の前になす術なく敗れ去っている。凸凹のスリット隊形といい、ダッシュ勢の伸びっぷりといい、15年くらい前の一般戦を見ているようだったな。三国水面は広いから追い風の6コースは相当な苦戦を強いられるが、こういう水面になれば十分に頭まで狙える。やはりボートレースは風の影響がでかい、と重ね重ねお伝えしておく。台風が去った後の風がどう変わるのか……昨日までと同じ追い風に戻れば、今日とはまったく違うレースになることだろう。

 

石野が負けた!

 

 

 

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 数行前に書いたとおり、初日から破竹の4連勝(前節も含めると10連勝)でシリーズを引っ張ってきた石野貴之に土が付いた。2コースから百点満点の差しハンドルを入れたように見えたが、原田幸哉の全速のまくり差しとは勢いが違いすぎた。ツケマイ気味の引き波を食らって万事休す。ただ、そこからの追い上げの凄まじいこと。

 前を行く同期の吉田拡郎に喰らい付き、2周ホームで内からギリギリ舳先を掛けた。昨日の石野VS長田に続き、見逃せないパワー勝負だ。もちろん、互いに同期のライバルとして負けたくない思いもひとしおだったろう。胸突き八丁の2周1マーク、内の石野がターンマークを目指し、拡郎がその外をぶん回した。勢いは、明らかに拡郎が上。抱いて回って突き抜ける、そんなド迫力で握り続けた。もちろん、石野は飛びついて応戦する。その舳先が抜けるか、持ち堪えるか……並のパワーなら拡郎が圧倒したはずだが、石野33号機は磁石のように拡郎の内フトコロに貼り付いていた。

 

 

 

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 あとはもう……昨日の長田戦と同じ、バックでぐんぐん伸びて拡郎の外マイを指で弾くくらいの素軽さで力強く抜け出していた。見た目には同期ふたりの熾烈なデッドヒートだったが、ことパワー差だけでいうならはっきり大差だった。5連勝は逃したものの、貴重な6点を加算して節間成績9・20。明日10R5号艇で2着を取りきれば他艇に関係なく予選トップが確定する。

 

 

 

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2位・幸哉、3位・信一郎が前半戦で着を落とすようなら、さらにその条件は緩和されることになる。選手の資質的にもパワー的にも、現時点で優勝の確率はかなり高いとお伝えしておこう。もっとも怖いのは他の選手云々より、ややチグハグなスタート勘か。あ、ひとりだけ、今節は我慢に我慢を重ねているあの「ミスター平常心」が同じレースの3号艇になったりしたら、厄介な存在になることだろう。(photos/シギー中尾、text/畠山)