BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――今村vs亀本!?

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「ダ~メだぁ」

 今村豊が係留所からの渡り橋を昇りながら嘆いた。

「今日はなんで?」

 展示待機中の鈴木幸夫らに問いかける。どうやら、今日になって気配が一息らしい。ちなみに、昨日一昨日と下がっていた気圧が初日と同レベルに戻っている。

 青山登さんによると、今村は「優勝するには、ちょっと足りない」と言っていたそうだ。準優に乗るとか優勝戦に駒を進めるとかではなく、優勝を前提にして話をするあたりが、今村豊の一味違うところ、だから今村豊は強いのだ、という話を青山さんとしていたわけだが、今村の口ぶりからすると、今日はもう一丁、手応えが良くないようである。

 そんな今村に「先輩!」と叫びつつ、亀本勇樹が歩み寄った。ヘルメットをかぶっていたので、それ以上何を言っているかは聞こえてこなかったが、今村の肩を何度もポンポンと叩いて、妙に尊大な態度である。今村は笑いながら、肩を落とす。

 その数十分後、今村が西島義則と話していた。

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「カメに負けたのが相当ショックだよ~」

 そう言ってまたまた肩を落とす今村、どうやら朝の試運転で亀本と足合わせをして、がっつりやられてしまったようなのだ。亀本に足合わせで負けることは、今村にとってはかなり不名誉なことらしい。まあ、仲がいいからこその対抗意識なのだろうが、今村は半ば本気で悔しがっており、それもあっての手応えへの不満なのだ。

 ただ今村さん、亀本の足はかなりいいようですぞ。2R、4カドに引いた亀本はまくり一発! 鮮やかに勝利をもぎ取っているのだ。レース後の亀本はやけに「このまま行ったら早いと思った~」とスタートの話を連発しており、それが快勝したことの照れ隠しにも見えたりしたわけだが、ともあれその表情は実に明るく、勝利と機力の手応えへの喜びにあふれている。亀本は、負けたレースのあとはいつも疲れ切った顔でガックリうなだれているものだが、そんな様子とは正反対の2R後。だから今村さん、足合わせで負けても仕方ないんじゃないですかね。

 ……あ、今村と亀本は12Rで直接対決! その結果がにわかに気になってきたぞ。もしレースでも亀本が勝ったとしたなら、今村さんのショックはいかほどのものになるのか……。

 

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 その2Rは、鈴木幸夫と西田靖、さらには鵜飼菜穂子も揃っていて、進入がおおいに注目された。結局、鵜飼は6コース回りを選択し、鈴木と西田の前付けを制して山口博司がイン主張。そして亀本がカドまくりを決めたというわけだ。

 レース後、カポック脱ぎ場に先に着いて着替えていた西田が、鈴木が戻ってきた途端に、「ごめんなさい~」と歩み寄った。両手を合わせて、悲しげな顔で、本当にごめんなさい~と何度も謝っていた。

 進入の話かと思ったら、1周2マークで展開がもつれたことに対するものだったようだ。たしかに鈴木が行き場をなくしたかたちで後退しており、ピットから見ていたらやや危ないシーンのようにも感じられた。そのとき、西田の艇が鈴木に接触してしまったようなのだ。

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 ヘルメットを取った鈴木の表情は……笑っていた。西田の説明を受けながらも、仕方ないとばかりに笑みを絶やさず、西田の顔も笑顔になっていく。一見しただけならは、楽しそうに振り返っているようにも見えてもおかしくないぞ。鈴木には西田を責める気など皆無なのだ。 接触などあって当たり前なのがボートレース。他のレースでもあの手この手で相手にプレッシャーを与える展開が見られるし、切り返し突進はこの世代には当然のこと。それを仕掛けられる選手も同様に思っているから、彼らは全力で真っ向勝負を繰り広げられるのだ。SGなどでももちろん同様だろうが、名人戦では選手たちのそうした闘志や哲学をさらに色濃く感じられて、それが本当に心地いい。ボートレースの本質はここにあるのだと確信できるものを目の当たりにできることは、まったくもって気持ちのいいものなのだ!

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 などと興奮しつつピット内に目を戻すと、石川正美がTシャツ一枚! たしかに今日は好天で、非常に気持ちのいい気候だが、ピットの気温は17℃。半袖だけでは風をやや冷たく感じる陽気だ。そんななかでTシャツ一枚! もちろん石川ただひとりで、いやはや、若すぎ! ほんと、若輩にとってはいろんな意味で、名人戦には頭が下がりっぱなしなのだ。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)