BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――のどか優勝戦

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 大一番の朝に緊張している峰竜太。これはいつものことだ。今日も、頬が赤みがかった顔は、明らかにカタい。10年後のSG優勝戦で峰に会ったとしても、やっぱり緊張しているような気がする。

 今日はこれまでとは違う部分もあった。

 一昨年のダービー準優、SG初準優に緊張しているかと訊ねると、「緊張していません」と言いながら、声が震えて目が泳いでいた。昨年の3度のSG優出では、声をかけると笑い返してくれたが、顔が引きつっていた。だが今日は、同じく笑い返してきたその顔が、なんとも爽やかで、実にいい笑顔なのだ。緊張していることを否定もしなかったし、「でも楽しんできます」と言った口調も力強いものだった。

 たくましくなったなあ。偉そうな物言いだが、そう思った。ピュアなところは変わらないけど、さまざまな経験、大舞台での修羅場を経て、峰竜太は間違いなく強くなったのだと思う。優勝戦直前はきっとめちゃくちゃに緊張しているだろうけど、峰竜太にとって、それはもはや不安材料ではない。

 

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 桐生順平はリラックスしまくりだ。西山貴浩がちょっかい出しまくるから。昨日も見かけたこのコンビは、今日も行動をともにしていた。というか西山がひたすらいじり、桐生は大笑いしていた。仕事サボらせようとしたり、プロペラ装着をしている桐生の背後から忍び寄って大声を出して驚かせたりする西山。そのたびに桐生は満面の笑顔となる。SG初優出の若武者に、緊張しているヒマはないのだ。

 もちろん、桐生もレース目前には緊張感が高まるはず。それでもこの時間帯に消耗せずに済んでいるのは、大きいだろう。結果はともかくとして、自分のレースができるだけの状態で優勝戦に臨むことができるはずだ。桐生が大仕事を成し遂げたとしたら、影のMVPはニッシーニャだな。

 

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 井口佳典がリラックスしてるのにも驚かされる。優勝戦1号艇、言うまでもなくもっともプレッシャーがかかる局面である。しかし井口はきわめて自然体。昨日までと少しも様子が変わっていない。賞金王1号艇を経験した男にとって、もはやこの程度のことは重圧でも何でもないのか。

 動き出しも早かった。1R発売中には係留所でニードル調整などをしていたし(試運転もしたのかも。ピットでは確認できなかったが)、2R発売中に陸にいったん上がると、ペラを叩き始めている。そのとき、大きな調整を始めていたのは井口のみ。つまり、1号艇の選手が真っ先に始動していたというわけだ。これはけっこう珍しいことである。

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 静岡三人衆については、渡邉英児がゲージ調整をしているのをまず発見。着用しているのはいわゆる通勤着で、まだ乗艇着に着替えてもいなかった。なんとも余裕の様子だ。口元には微笑が浮かんでおり、隣でゲージ調整をしていた峰が神妙な顔をしているのとは対照的だった。

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 菊地孝平が、1R後にこのテーブルに加わっている。今日はレースを終えた選手のモーター返納があり、菊地は積極的に参加していたが(静岡支部の選手がいなくても)、それを終えると力強い足取りでゲージ調整テーブルへ。動き自体は忙しそうだが、雰囲気は落ち着いていた。

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 坪井康晴も実にゆったりしたたたずまい。いちど、プロペラ調整所の彼のポジションに座り込んだので、ペラ叩きが始まるのかと思ったら、特に何もせずに立ち上がって、控室へと消えていった。急いで調整する必要を感じなかったか。ということで、坪井も積極的に返納作業のヘルプ。おそらく、優出インタビューのあとに、本格的な作業開始となるのだろう。

 

 ヒリヒリするような緊張感をほとんど感じなかった朝ピット。優勝戦前に入ったときに、どれほどのギャップを感じるだろうか。

(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)