BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――峰が水面一番乗り

 14時からイベントホールで優出メンバーの公開インタビューが行なわれている。終了後、真っ先にピットに姿を現わしたのは峰竜太だった。何かを思案しているかのようにまっすぐ前だけを向いて、自分のボートに一目散に向かう。あっという間にペラを装着した峰は、そのまま水面へ。これが1R締切間際のことだから、かなり早い着水である。
 おそらく緊張感はある。というより、今節はずっと同様の様子だった。まして、優勝戦1号艇である。すでに経験もしてきている峰とはいえ、まったくの平常心でいられるはずがない。ただ、やはりプレッシャーに搦めとられているような雰囲気でもない。さまざまな経験や紆余曲折を経て、峰は緊張感を味方につけられるようになっていると感じる。

 峰に次いで水面に向かったのは山口剛。こちらはかなりリラックスした雰囲気で、記者さんから声を掛けられると陽気に、朗らかに接している。声には張りがあり、少し離れた場所からも内容が聞き取れるほどだ。前半戦はSGやGⅠに出場できず、今年はどこまでできるのか半信半疑なところもあっただろうと想像されるわけだが、この優出でグランプリ出場はかなり有力なところまで這い上がってきた。それが精神的に充実感を覚えさせているのではないか。

 山口に続いたのが桐生順平だ。つまり、優勝戦内枠が相次いで水面に出ていったことになる。優出メンバーは早い時間はゆったりと過ごすというのがよくある光景なのだが、特に内枠勢が揃いも揃って早い始動というのはなかなか珍しい光景である。もっとも、峰にしても山口にしても、この桐生にしても、2R発売中には早くもボートを陸に上げて、次の作業に移っている。1回乗ってみて感触を確かめ、それをもとに調整。そういった場面だったということだろう。

 その頃、6号艇の馬場貴也は整備室へと入った。インタビューが行なわれている頃、優出組のボートを何気なく眺めていて、馬場のボートにはモーターが乗っていないのは確認していた。単に装着していないだけなのか、整備するつもりなのか、と思案していたら、後者なのであった。2R発売中にはいったん整備を切り上げて、モーターを装着。ここから試運転をしながら、さらに煮詰める作業に入っていくことだろう。6号艇とはいえ、もちろん諦める気などさらさらないわけだ。

 ピットに姿をあらわすや、ペラ調整に取り掛かったのは茅原悠紀だ。といっても、別に焦ったりしているようなところは見当たらず、粛々とやるべきことを始めたという感じ。のんびりと過ごすつもりはない、といった風情であり、ある意味すでに臨戦態勢に入っているということもできるだろう。

 いろいろ気にかかる吉田裕平は、さまざまな人と会話を交わしていた。さまざまな人と言ったが、ようするに報道陣だ。やはり吉田がどんな心持ちで今日を迎えたか、誰だって気になるところだ。新兵の仕事をこなしている姿に、浮足立ったり重圧に悩まされたりといった様子は見えないが、内心どうなのかはわからない。だから話が聞きたくなる、ということで、次々に声をかけられるといった塩梅だ。僕は一言、頑張って、とエールを送っただけだが、吉田はいきなり直立不動になって、ありがとうございますと深々頭を下げた。それがどういう心持ちをあらわすかどうかはなんとも、だが、今日も変わらず礼儀正しい好青年である。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)