シリーズ組は静かな動き出しだが、
決定戦組はやはり様相が違う。
優勝戦に乗るためにはあと2走のみ、
時間にして14時間程度しかないわけだから(1日7時間作業として)、一刻も早く納得のアシに仕上げなければならないわけだ。
まして今日は湿度が急上昇。
ただでさえ調整が変わってくるわけだから、
ピリピリとした空気が生まれて当たり前。
挨拶の声をかけても、
ナーバスな顔つきのままの選手も少なくなかった
(白井英治、丸岡正典、井口佳典など)。
そんななかで、今日も松井繁が
ゲージ擦りをしているのだから、驚かされる。
昨日のレース後の会見では
「今日は僕がいちばん出ていたと思う」と言っていた。
そういうことなのだろう。もちろん、
レースの時間帯が近づけば、
懸命な調整作業をしている王者に会えるはずだが、
朝の時点での動きについては、
ともかく余裕に見えてしまうのである。
今日は、峰竜太も同じテーブルにおり、
ゲージを擦り擦りしていた。
峰も何らかの手応えを得たということだろうか。
1Rが終わったあと、山崎智也が本体を外している。
智也といえば、基本はペラで仕上げていくタイプ。
本体整備自体が実に珍しい。
青山登さんによれば、智也の26号機は初おろし以来、
一度も部品交換がなされていない。
好素性だから誰も触らなかった可能性が高いが、
住之江のモーターの中で交換履歴のないものは
26号機だけなのだから(34号機も過去にリングなど交換履歴あり)、
青山さんに言わせれば
「バラしてチェックしてみる必要はあるだろうね」とのことだった。
智也はピストンを取り出しており、
交換があるとするならコレかピストンリングだろう。
初交換が果たしてどう効果が出るのか、
レースや試運転をチェックしておきたい。
なお、瓜生正義も本体を外している。
交換があるかどうかは直前情報を確認してください。
智也が本体整備をしている頃に
水面に飛び出したのは、坪井康晴と丸岡正典だ。
初戦で大きな着順を取ってしまっている二人。
坪井は2戦目を6号艇で戦わなければならないわけだから、
少しでも……いやできる限り上積みして
レースを迎えたいところだ。
表情はわりと柔らかいあたりは、いつも坪井康晴。
しかし、心中には焦燥感も含めて、
坪井の足を早足にしてしまう何かがありそうだ。
最後に、気になる雰囲気は今垣光太郎。
エース機を引き、初戦は2着、
枠番抽選で1号艇をゲット。
流れを掴んでいるようにも思えるのだが、
表情に余裕はうかがえない。
もちろん精力的に作業をしており、
まだまだ何も満足などしていないという風情だ。
光ちゃんの座右の銘ともなっている「平常心」。
僕には今日のような雰囲気こそ、
今垣光太郎らしい平常心、だと思うのだが。
もちろんポジティブな意味で。
(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)