BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――準優勝戦の午後

 

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 9R後のスタート特訓のあと、瓜生正義、原田幸哉、池田浩二が並んで引き上げてきた。そのとき、池田が浮かない顔をしている気がしたし、瓜生は“今日の調整の難しさ”を口にした。

 やはり、この時期とは思えないほど気温が上がっていることが影響しているのだろう。瓜生の言葉に対して原田は「日本には四季があるんだから」と言い、池田は「今日だけじゃなく、こういう日が続くんですよ」とも返していた。

 3月のこの時期、こんな気候が「続く」ことはないだろう。明日はまた気温が下がる予報なのだから、選手は大変である。

 今日にしても、8Rあたりでは気温24度になっていたのに対して、12Rでは20度まで下がっていた。ピットにいても、お昼前後には「暑い!」と感じていたのに、12R前には涼しくなったと感じられていたくらいだ。この時間帯のレースに出る選手は、そういうことまでを考えながら調整を進めなければならないわけだ。

 このスタート特訓後、3人はそれぞれプロペラ調整を始めているし、その時間帯には、中島孝平や田中信一郎らもペラを叩いていた。それだけペラ調整に時間をかける選手が多かったというのもこの時期ならではのことだ。

 

 

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 それでもやはり、そんな光景に慌ただしさが感じられないのは、それぞれの選手が一流のプロである証しだ。

 田中にしても、カツカツカツカツと、細かい音を立てて微妙なペラ調整をやっていた少しあとには、森高一真と向かい合って、雲竜型と不知火型の土俵入りを確かめるようなことをやっていた(湯川浩司もそれを見ていた)。

 そしてその後、展示航走のために控室に向かっていく際には、お尻をパンパンと自分で叩きながら、気合いパンパンの表情になっていたのだ。

 その田中は、とてつもないメンバー構成となっていた準優12R(6人合わせてSG36冠!)で2着となり優出を決めた。

 その後の共同会見では「明日は勝ちにこだわりたい」とも言っていた。

 

 

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 その12Rを勝ったのは池田だ。

 勝利後の共同会見では、

「プロペラが合わせきれないところがある」

「気温の変化があるので、毎日、その日になってみないと仕上がりがわからない状態」

 と口にしていたが、こちらもさすがの貫録だ。

 昨年の轍は踏まず、今年は年末の12ピットに入るためにも、明日は池田らしい隙のない戦いを見せてくれるのではないだろうか。

 

 

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 調整の難しさを口にしていた瓜生だが、今井貴士によれば、「毎日、(調整に関して)瓜生さんがピンポイントのアドバイスをしてくれていた」とのことである。

 準優10Rでは、その今井がしっかりと逃げ切り、優出を決めている。

 共同会見の中で、福岡笹川賞のことを振られると、「地元SGには出てみたいですね」と言いながら……。

「ここで優勝すると出られるんですか? そういう枠があるんですか?」

 と驚いていたのは彼らしい(そう。直近SG優勝者枠で笹川賞に出られるんです。ぜひ狙ってください)。

 ……会見のあとのピットでは、原田が手をあげて今井を待ち受け、ハイタッチ! 昨日は今井のことを「調子にのるなよ!」と、いじっていた原田だが、本当はそうして今井の力を認めて、人柄を愛しているわけである。

 

 

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 10Rで2着に入ったのは、現住所=福岡&東京支部の“地元選手” 齊藤仁だ。

「いい集中力で来ていて、地元で結果を出せた」

 と本人も喜んでいたが……。

「誤解しないでほしいんですが」と言って、SG優出を「通過点」だとも口にした。

 SG優出あるいはSG優勝などを目標に定めてしまうと、その目標を達成したあと、気持ちに空白ができてしまいそうなので、そうしたくはないというのが齊藤の考え方だ。

 齊藤というと、多くの選手、ファン、マスコミ関係者などに愛される好漢であるが、そうしたしっかりした考え方をするタイプの選手なのだ。

「エース不在」という言い方をされたこともある今回の総理杯だが、最高の地元選手を優勝戦に送り込めたのはハッピーなニュースだ。

 

 

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 準優勝戦11Rを勝ったのは中岡正彦だ。

 ピットでその様子を見ている限り、“掴みどころのない選手”という印象もあるが、「S一撃!」という、実にわかりやすいレースで優出を決めた。

 共同会見でもどちらかというと無口だったが、「スタートを行くしかない」という言葉を何度か繰り返していた。

 個人的には“飄々としたロンリーソルジャー”かつ“知る人ぞ知る、おシャレさん”というキャラクターだと捉えているが、長嶺豊さんも同じような印象を持っているのかもしれない。

 会見後、独りでピットを歩いている中岡を見ながら長嶺さんは、「格好ええなあ」「格好ええなあ」と、二度、三度と繰り返し口にしていた。

 

 

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 11R2着は山崎智也だ。

 この人はとにかく、年末から決まりすぎで、格好よすぎ!

 レース後、ボートリフトの手前でヘルメットを脱いで髪をかき上げる姿も、関係者に向かって笑ってVサインをしてみせる姿も、すべてが絵になる。

「今日は展開一本ですね」「年末からツキっぱなしです」

 とも話していたが、その快進撃はまだまだ止まりそうにない。

 ……節イチを争うといわれていた2人は脱落したが、明日の優勝戦は“絶対的な男”が1号艇に構えながらも、楽しみの多い戦いになりそうだ。

(PHOTO/池上一摩、TEXT/内池)