BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――百戦錬磨

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 風も収まって、のどかな雰囲気になっていた朝のピット。まずペラ室を覗き込むと、古場輝義、江口晃生、金子良昭、藤井定美がペラ調整をしていた。ペラ室にはその4人のみ。すべてが準優組だ。

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 つづいて整備室に行くと、山口哲治が本体を割っている。SGでも準優外枠の選手が勝負をかけての本体整備をしているのは珍しくないが、今日は“元祖ヤマテツ”が早くも整備に没頭中だ。昨日までの気配は悪くないように思えたが、さらなるレベルアップを求めているのだろう。

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 やがて、ペラ室から古場がペラを手に登場。そのままモーターに装着し、すかさずボートリフトへ。試運転だ。装着場にあるボートのネームプレートを確認する。準優組のボートは17艇、装着場にある。そう、予選トップの古場が、準優18人のなかで真っ先に水面へと出たのだ。なんとしても優出の気合か、それとも気になる点が実はあるのか。これを書いている今も、古場は水面をぐるぐると回り続けている。予選トップが古場の兜の緒を緩めるものにはなっていないのだ。

 つづいて江口もペラを日光にかざしてラインをチェックしながらボートに向かい、予選2位が次の着水になるかと思われたが、江口はペラをボートに置いただけで、いったん控室へと消えていった。とはいえ、装着場の状況を考えれば、早めの着水になることは確実だろう。

 

 というのが、序盤戦の時間帯の準優組のおもな動きである。多くの選手が、ゆったりとした動き出し。ピットの空気ものどかになろうというものである。

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 1Rをモニターで観戦しようと陣取っていたら、北川幸典が登場。「おはよーーっす!」と微笑みながら、通り過ぎていった。永遠の青年、ですな。名人世代とは思えないほど若々しいし、爽やかだ。レースぶりもハツラツとしてるしね。しかも、本格的な動き出しはまだこれからということで、ずいぶんとリラックスした様子にも見える。こんな50歳になりたい……と思ったけど、僕にはもう無理そうです。

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 山﨑昭生もまた、本当に若い! 53歳? 見えません。僕と並んだら、こっちが年上に見られてもおかしくないんじゃないかしらん? 髪の毛フサフサだし……と見ていたら、開会式で年上選手のフサブサぶりに異を唱えていた西田靖と会話をし始めた。この二人、同期だ。「ライナーかましたけど、ぜんぜん変わんねーし」という西田の口調も若者っぽいが、それを穏やかな顔つきで聞いている山﨑はさらに若い。そんな53歳にはもうなれません、あたしゃ。

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 ま、そんなことはどうでもいいが、とにかく準優組はみな、そんなふうに落ち着き払っているのである。1号艇で少しは緊張するかも、とにらんでいた長谷川巌も、エンジン吊りで見る限り、そうした雰囲気は感じられない。もちろん、レースの時間帯が近づけば別。隣の枠には鬼のように強い男がいるわけだし。ただ、朝の様子を見ると、やはり名人組は百戦錬磨だなあ、という印象を抱くわけである。GⅠの準優勝戦は、彼らにとって修羅場のうちには入らないかもしれない。

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 で、そうしたムードをもっとも感じさせるのは、やっぱり今村豊なのである。1R、惜しくも3着に敗れた万谷章のエンジン吊りに参加した今村は、ボートを運び終わると万谷と話し込んだ。万谷の顔はどんどんと穏やかな笑みに包まれていき、今村が軽妙なトークを展開しているのは明らか。春の日差しが降り注ぐなかでのその様子は、まるで縁側での日向ぼっこのようにすら見えたのであった。カポック着て日向ぼっこってのもおかしいけど、それほどまでに柔らかい空気を醸し出す二人。それを微笑みながら眺めていた岡孝も実にいい感じでした。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩=山口、北川 黒須田=万谷 TEXT/黒須田)