BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――もっとも早い着水は……

f:id:boatrace-g-report:20171206182237j:plain

 岡崎恭裕が前方のカウル部分をすりすりとこすっていた。優勝戦メンバーのボートには今日、カウル部分に艇番色のシールが貼られている。その部分を岡崎はこすり、首を傾げていた。違和感があるのだろうか。近くにいた服部幸男にも何か訴えており、やがて岡崎は艇修理室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171206182247j:plain

 優勝戦以外の選手のボートを見ると、前方カウルの中央下部には、丸い穴があいている。シールは、これを隠しているのだ。岡崎は、この部分に違和感を覚えたようだ。素人考えでも、ここの穴がふさがれていたら風の流れが変わるような気がする。結局、修理係の方がカッターでこの部分を切り取って、穴をむき出しにしていた(もちろん全艇)。岡崎の訴えは正解だったのだ。

f:id:boatrace-g-report:20171206182257j:plain

 そんな部分に気が回る岡崎には余裕があるとも言えるし、また微細な部分にもこだわって勝利を追求しているとも言える。

「優勝します」

 優出インタビューは本当に痺れた。あの日も、優出インタビューでそれを言って、スリットオーバーに散った。もしトラウマがあるのなら、今日その言葉を封印していただろう。それを言ってのけたことが、すでに痛みを吹っ切って前に力強く進んでいる証しだし、あの日の無念を絶対に晴らすのだという決意表明である。最高のレースをしてみせることが、あの日悲しみにくれたファンや関係者に借りを返すことだと、きっと岡崎はわかっている。

 

 早い時間帯の岡崎の動きは書いたとおりで、作業らしい作業は始めていなかったが、他の優出メンバーも大差があったわけではなかった。

f:id:boatrace-g-report:20171206182309j:plain

 峰竜太はインタビュー出演後、さっそくペラを調整し始めていたが、叩く作業よりはゲージを当ててラインをチェックしている時間が長く、急いで調整しているという雰囲気はない。本格的な調整はまだこれからであろう。峰とは挨拶を交わせただけだったが、SG優勝戦で見るいつもの峰竜太。緊張感は伝わってきたし、しかしそれが峰をガチガチにしてしまうようなものではないようにも思えた。

f:id:boatrace-g-report:20171206182319j:plain

 服部幸男も、早くにペラ調整所にあらわれている。ただし、こちらも本格的に調整を始めたわけではなく、同様にゲージチェックが主たる動きだった。ペラ叩きに使う台座にペラをセッティングすることもなかったし、やはり調整はまだ先のことのようだ。表情は貫録充分、である。

 

f:id:boatrace-g-report:20171206182327j:plain

 湯川浩司については、作業している姿を見ることがなかった。装着場にあらわれるのはエンジン吊りの際だけで、最終日の今日はすべての出走を終えた選手がモーター返納をするので、湯川はそのヘルプで飛び回っていた。表情は昨日までとは変わらないし、急いで調整を始める必要はなさそうなので、優勝戦には万全の状態で登場することだろう。

f:id:boatrace-g-report:20171206182337j:plain

 新田雄史はモーターのチルトアジャスターのあたりをカチャカチャといじっていた。今節は4日目にチルト0度で走っている(2着)以外はマイナスで走っているが、ふたたび0度にしたのだろうか。もしその作業だとしたら、新田は感触を確かめるためにこのあと早々と水面に出てくるはず。もちろん、その結果マイナスに戻すこともあるだろうし、あるいは別の数字になることもあるだろうから、直前情報はしっかりチェックしてほしい。いずれにしても、新田は自分にできることはしっかりとやって、優勝戦に臨もうとしているのは間違いない。

f:id:boatrace-g-report:20171206182349j:plain

 で、桐生順平はなんと、1Rが終わるとボートを水面に下ろした。早い! 優出組でもっとも早い始動がポールポジションの選手とは。一概には言えないが、12R1回乗りにもかかわらず早い動き出しを見せるのは、パワーアップをはかりたい選手のはず。桐生はそれにはあたらないはずだから、その動きが少し気になったのだ。

 思い出すのは昨年のチャレンジカップ。優勝戦組でもっとも早く着水したのが、1号艇の平尾崇典だった。平尾は忙しく動くことによって1号艇のプレッシャーを紛らし、メンタルを整えてレースに臨んだ。桐生の場合は果たして……。ただ、陸にいるときの桐生の表情には昨日までとの差異は感じられないのもたしかだった。桐生は今日一日、どんな思いで過ごし、優勝戦を迎えるだろう。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)