BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――淡々、粛々

 朝の特訓の時間帯にいったんピットに入ると、なかなかの賑やかさ。前半出走組はレースの準備や試運転に忙しいし、優勝戦メンバーもそれぞれに動きを見せていた。今日は雨が上がり、気温も上がっているから、感触を確かめて調整につなげたい。だから、優勝戦組ものんびりと過ごしはしない。

f:id:boatrace-g-report:20171212114401j:plain

 次に1R展示後にピットに入る。すると、一気に静寂さが増していた。装着場に選手はほとんど見当たらず、展示から戻った選手、2R展示の準備に向かう選手がちらほらと見かけられる程度。2R6号艇の池永太がいたので、「ドンマイ!」と声をかけると、ニッコリ。すでに気持ちは切り替えられているようで、何よりだ。といったあたりが目立つ程度で、優勝戦メンバーを探すのはなかなか大変だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171212114427j:plain

 やがて、今村暢孝が自艇に向かい、操縦席に乗り込んでモーターを点検し始めた。キャブレターを覗き込んでおり、必要なら調整をしようということだろう。レース後に渋い笑顔を見せていた今村も、こうなると眼光は鋭くなり、一気に迫力を増す。勝負師・ノブさんの顔が一気に表出するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171212114518j:plain

 松井繁が整備室に向かった。まさか本体整備? いや、松井のボートにはモーターが乗っかったまま。装いを見ると、まだケブラーズボンもケブラーシューズも着用しておらず、それまで控室でリラックスしていた雰囲気が見て取れる。松井はものの数十秒で整備室を出ており、追いかけて様子を覗きに行こうとしていたところで鉢合わせとなった。挨拶をすると、松井は目を見開き、柔らかい表情で「ウォッス~」。余裕綽綽だな、と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171212114535j:plain

 カウリングが艇番の色に換えられている優勝戦組のボートを確認しよう。全艇が装着場にあって、先述のとおり黄色いボート上にはノブさんの姿がある。モーターを一瞥すると、おっ、山口達也のモーターにのみ、プロペラがついたままだ。他の5艇のモーターからはペラが外されており、すぐにでも調整を始められるか、すでに始めているか。山口のみが、調整作業の準備も始めていないということで、これもまた余裕を感じさせることだった。

 1Rのエンジン吊りであらわれた山口達也の表情を覗き込む。一言、重圧や妙な緊張感はまるで見えない。茅原悠紀とは楽しそうに会話をしているし、寺田千恵とも同様。緊張を紛らすための笑顔のようにも見えなくて、この日を楽しんでいるかのようだった。SG2節目での初優出で、この余裕。大物だぞ。

 

 

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171212114554j:plain

 内枠勢では、中澤和志が相変わらず粛々、淡々。優勝戦の朝はどうしても優出メンバーを目で探す時間が多くなるが、なかなかその姿が見つからなかったほどだ。闘志を表にあらわすでもなく、緊張に慄えるわけでもなく、実に自然体で過ごす中澤。7年半前の総理大臣杯のときもこんな感じだったよなあ、とふと思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171212114612j:plain

 瓜生正義も、同様だ。優勝戦1号艇が瓜生の動きや心を狂わせるはずがないですよね。いつものとおり、瓜生のほうから「こんちわ~」なんて朗らかに挨拶してくるし、後輩たちは親しげに話しかけているし、それに対して瓜生本人も笑顔で返しているし、とにかく優勝戦1号艇と感じさせない空気が瓜生にはある。

 それでも、レースが始まってからの時間帯のなかでは、もっとも早く動き出したのが瓜生である。1Rには後輩の渡辺浩司が出走しており、これが最終レースのため、モーター返納作業があるわけだが、これをヘルプしたあとに瓜生は、ペラ室へと入っていったのだ。「明日の調整は、朝乗ってみてから考えます」と語っていた昨日の瓜生。天候変わった今日の感触を特訓で得て、いよいよそれに合わせてペラ調整を始めたというわけだ。まだまだ時間はたっぷりある。きっと瓜生は、万全で優勝戦に臨む。

 

 

 

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171212114629j:plain

 田村隆信もまた、2R中にはペラ叩きをする姿があった。井口佳典と背中合わせにすわって、黙々とペラを叩く。このときは山崎智也もペラを叩いていて、田村に何か話しかけて「ダハハハハハ!」と大声で笑っていた。笑い声が聞こえてペラ調整所を見ると、田村はすでにペラに視線を向けており、何があったかは不明。とにかく、ペラ調整所はなんだか実に華やいだ空気となっていたわけで、田村もかなりリラックスしていたように見えた。

 2Rが終わり、中四国勢が出走していなかったので、田村はベンチに座って小休止。そしたら井口が「タムちゃん!」と呼び寄せて、新田雄史のエンジン吊り→モーター返納を手伝わせていた。立ってる者は優出メンバーでも使え!? ベンチに座ってたけど。ほいほいっと新田に駆け寄る田村の様子は、ちょっとだけかわいかった(笑)。

 

(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)