BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――勝負師!

f:id:boatrace-g-report:20171213104751j:plain

 江口晃生は思いのほか、サバサバとしていた。目が合うと、微笑みながら「ウェーン」と泣き真似。完全に切り替えられている。

 引きずることなく今朝を迎えられたのは、簡単なことだ。江口は意識して勝負した、からだ。もちろん返還については申し訳なく思っているが、「絶対に遅れられない」と強い気持ちで臨み、それを果たせたことについては達成感がある。たまたまフライングになってしまったが、もし遅れて、まくられて大敗していたら、究極の後悔をしていただろう。

 江口の決意を示す事柄がある。明日、遅めの飛行機を予約しているのだ。もちろん、表彰式に出るのを想定して、である。王者はクラシック(総理杯)優勝後、「最初からこのストーリーを作ろうと思って、尼崎に来た」と語っていた。江口も同様だ。残念ながらストーリーを完結させることはできなかったが、江口がどんな決意でここに臨んだのかを如実にあらわしている。

 最高の勝負師だ!

 ということで、明日は時間を潰さなきゃいけなくなっちゃったのだが、「イカでも食べにいこうかな~」。江口さん、唐津に来たら、やっぱイカでしょ! 日本一のイカを腹いっぱい食べる資格が、渾身の勝負を見せてくれた江口さんにはあると思いますよ。

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171213104809j:plain

「青山さん、イカ食った?」

 金子良昭が青山登さんに話しかける場に偶然居合わせた。もちろん、青山さんは食った。だって3日前に一緒に食ったもん。美味かったっすよね~。

「いいな~。豪勢だな~」

 羨ましそうに青山さんを突つく金子。金子さん、明日は最高の美酒とともにイカ食えるといいっすね。

 それはともかく、金子がこんなことを言っていた。

「今日は落としてもブレーキかからないよ。舟も向かないなぁ」

 今日は朝から強い追い風が吹いている。先ほど電光掲示板を見たら、風速8mとなっていた。1マークも波立っている。こうなると、1マークで艇は流れる。思い通りのハンドルを切れないのだ。追い風の唐津は差し、がセオリー。準優3号艇の金子にとっては、戦略の判断に頭が痛いところだ。

 とはいえ、青山さんとイカの話をしているくらいだから、悲壮感みたいなものはまったくない。このあたり、百戦錬磨だよなあと思う。

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171213104828j:plain

 というわけで、準優の朝。空気は非常に和やかで、準優組もそれほど慌ただしそうではない。岡孝が検査員さんと話し込んでいる様子は実にのんびりしている感じだったし、レースが始まってからでいえば、ペラ室で見たのは西山昇一だけである。

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171213104842j:plain

 係留所を覗いたら、新良一規と高橋淳美がぺたっと座って話し込んではいたが、清涼な風が吹き込むなかでは、世間話でもしているように見えてしまう。

 

 

 

f:id:boatrace-g-report:20171213104852j:plain

 というわけで、姿を見るのはおもにエンジン吊りの際、ということになるわけで、本格的な始動はまだまだこれからのようだ。そうそう、1R後、原田順一がエンジン吊りに参加していた。出走表を見ると、九州勢、一人も出てないじゃないか。それでも率先してエンジン吊りにやってくる原田順一。素敵すぎます!(PHOTO/中尾茂幸=江口 池上一摩 黒須田=新良&高橋 TEXT/黒須田)