1R発売中、白井英治の姿が水面にあった。白井にしては、実に早い動き出しだ。白井は大一番の前でも、朝の時間帯には大きな作業をせず、昼頃から臨戦態勢に入ることが多い(去年の徳山グラチャンでもたしかそうだった)。しかし今日は、朝から水面に出て、2R発売中にいったん切り上げると調整作業に取り掛かっている。JLC解説者の青山登さんも「珍しい」と唸っていた。
石野貴之も、1R発売中にいったんボートを陸へ。つまりそれよりも早く、水面での作業をしていたということだ。調整用の白プロペラを持っていたので、係留所での調整だったと思われる。その感触をもとに、作業は本格化していくことだろう。
3R発売中、篠崎仁志が水面に出た。試運転を数周。2R発売中には装着場で入念にボートやモーターを点検しており、その表情には力があった。準優を前に、気合乗りはかなり良いと見える。
ペラ調整所には、準優組が鈴なりだ。屋外調整所で、原田幸哉が立ったままプロペラを見つめる。その目つきがやけに鋭く尖っているのが印象的だ。昨日の6号艇では前付け2コース。11R6号艇の秘策は? ペラをどう叩くかも作戦のうち。原田の頭の中にはさまざまな戦略が渦巻いていそうだ。
整備室出入口脇の調整所では、田中信一郎と湯川浩司の同門コンビ。ここはテーブルがひとつあり、その上にペラ叩き台があるので、多くの選手は立ったままでペラを叩く。田中と湯川はテーブルを挟んで向かい合うようにハンマーを振るう。そうそう、田中は全24場制覇に向けて、残すはここ福岡のみ。まずは優出を決めてリーチをかけたい。
精力的に動く面々とは対照的に、ゆっくりと過ごしている準優組ももちろんいる。支部全員が予選突破した佐賀勢は、4人ともがエンジン吊りには控室からあらわれており、まだ調整作業はこれからのようだ。上野真之介はSG準優初だが、取り立てて緊張している様子は見えない。
仲谷颯仁も大きな作業は始めていなかったが、なにしろ新兵なので、装着場で姿を見る頻度は高い。やはりSG初準優も、様子は昨日までと変わらないと言える。新兵仕事もきびきびとこなしており、今のところは平常心で過ごしているようだ。
そして、もちろん吉川元浩も動き出しはまだまだ先になりそうであった。2Rのエンジン吊りに出てきたときには、まだケブラーズボンも着用せず、スニーカーのカカトをつぶしてはいていた。まあ、あの足を見れば、急いで動く必要がないのは明らか。エンジン吊りの際には今垣光太郎と談笑するなど、実にリラックスした様子が見て取れる。やはり死角はほとんどない、ということか。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)