BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――明るい兆し

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「おい、どうしたどうした!」

 山崎智也が黒の勝負服をつかんで、詰め寄った。詰め寄られたほうは、困ったように笑うしかない。コンマ68のドカ遅れ。そして2着。そりゃあ智也じゃなくたってからかいたくなるだろうし、岡崎恭裕は苦笑以外に返すものがない。

 それにしても、あのドカ遅れから、最後はきっちり2着に入るのだから、ある意味すごい。勝ったのは1コース峰竜太で、結果的には「逃げて差して」のオーソドックスなものと変わりはない。もちろん、その原動力は「必死でしたよ~」という意地であり、そして「足はすごく良くなっていた」というパワーの上積みである。

 そう、調整が当たったのだ。「スタート同体で差して2等、とかだったら実感できなかったと思うけど、このレース展開になってかえって足の良さを実感しました」とのことだが、つまりは非常に大きな手応えを得ることにつながったのだ。「でも、恥ずかしい(苦笑)。明日からはもう(こんなスタートは)しません(笑)。集中していきます!」とスタートには反省しつつ、しかし前を向けるだけの材料は手にしたということである。

 だから、こんな痺れる言葉が最後に出ている。

「準優を目指すというのではなく、もっと上を狙うレースができると思います」

 そう、感触的には「明日の勝負駆け頑張ります」以上のものがあるということだ。となれば、明日のノルマは楽々とクリアしてくれると信じよう。明日は、岡崎らしいレースをたっぷりと魅せてもらおうではないか。

 

 

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 今日は連勝者が3名! 初日2日目と6着2本、精彩を欠いていた服部幸男が一気にペースアップ! 6R、4カドまくりはカッコよかったっすね~。といっても、服部の行動が変わるわけではない。ペラ調整はしっかりと行なうし、顔つきの鋭さもそのままだ。やはりこの男、とことんストイックである。

 平石和男も連勝。初日2日目はしぶとく着をまとめていたが、連勝で準優当確! 平石が笹川賞を勝ったのは、もう11年も前のこと。それからSG制覇はなかったが、常に第一線で戦ってきたのだから、その息の長さは素敵すぎる。そして、足が仕上がれば若手相手にも一歩も引かず、優勝戦線に絡んでくる! 明日は準優好枠をにらんだ戦いとなる。

 

 

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 もう一人は、峰竜太! 昨日まではどうにも波に乗り切れず、大きな着順が並んだわけだが、3日目連勝で竜太モードに突入! 10R後はさすがに笑顔をほころばせており、「ラッキーもありました!」と言いながら、気分が乗ってきたのは間違いなさそうだ。気持ちで走るタイプなだけに、さらに突っ走る可能性大! あ、勝利者インタビューでもらったペラ坊ぬいぐるみを「あ、あげます!」ということで、いただいてしまった。サインを入れてもらってBOATBoyの読者プレゼントに出しますので、ご注目を。

 

 

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 一方で、井口佳典は出口が見えない状況に陥ってしまっている。9Rは1号艇、枠なりのイン戦。予想にも書いたが、現在の井口はイン戦艇界最強である。足が厳しいのはわかっていても、だからこそ狙いたくなった。ところが、あっさりまくられてしまうのだから、重症である。レースをモニターで見ていた新田雄史が、山崎智也がまくりを放った瞬間に「あー、あかんあかんあかん」と呟いていたが、師匠のピンチを即座に感じたのだろう。足色もわかっているだけに、思わず悲鳴をあげたわけである。

 井口はレース後、整備室にこもっている。準優進出はかなり厳しい状況だが、まだあきらめていないし、予選突破はならなくとも、この足のまま戦うわけにはいかない。10Rのエンジン吊りに出てきたとき、松井繁、太田和美、田中信一郎、鎌田義、湯川浩司らにめちゃくちゃからかわれており、井口は笑いながら「ハゲるハゲる」! 一瞬、そこにハゲがいると僕を指しているのかと思ったが、そうではなくて、悩み過ぎて毛が抜けてしまうということだろう。僕もずいぶん悩んできたもんなあ……はどうでもいいとして、それほどまでに井口は切羽詰っているわけである。10R後の1便で帰宿する大阪軍団&カマギーに、「みんな帰るんすか?」と寂しそうに問いかけた井口。結局、井口の整備はそれからも延々と続いたのだった。少しでもいいから、パワーアップしますように……。

 

 

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 さて、1便で帰った松井繁だが、実はその前に試運転に励んでいる。今日は7R1回乗りで、松井にしては早めにレースが終わったわけだが、5着に敗れて何か感じるところがあったのか、松井はボートに試運転用のプレートと艇旗をつけて、ふたたび水面へと出て行ったのである。終盤レースに組まれることが多いという事情もあるだろうが、レース後に試運転を行なうのは、松井にしては珍しいことだ。今日は時間があった、だから気になった部分はすぐに原因を究明して、解消をはかる、ということなのだと思われ、松井に言わせれば「別にどうってことない」ことなのだろう。それでも、やはり王者のレース後試運転には、特別なものを感じざるをえない。そう思わせることが、王者の風格なのである。

 成績的には、ドリーム1着から尻下がりとなっている松井。明日は2回乗りで勝負駆けだ。今日の午後の試運転が、何をもたらすことになるのか。王者の勝負駆け、注目しよう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)