BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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TOPICS 3日目

真骨頂

 

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 見てくれ、このまくり、これが生奈だ、博多のまくり姫だーーッッッッ!!!!

 長嶋万記のFはじめ、壊滅的な成績に終わった女子軍団。そんな中、7Rの小野生奈が観衆のド肝を抜く大技をやらかした。4号艇だった生奈は、ピットアウトからあれよあれよと締め出されて最アウトの単騎がまし。内を仰ぎ見れば、5人ともSGを制覇した歴戦の猛者ばかり。

 

 

 

 

 

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 だがしかし、一撃まくりにゃ名前も格もテクも関係ない。生奈は行った。コンマ16のトップSから、すぐに舳先を内に傾ける。最初に引き波にハメた敵は、松井繁。王者をぎゃふんと言わせてから、さらに締める締める締める。あっという間にSGレーサー5人をまくりきってしまった。

 残念ながら、バック直線で平石和男に舳先を捩じ込まれ、「王者を攻め潰してSG水神祭」という快挙は幻と化した。が、今日の破壊力抜群の絞りまくりは、ボートレースファンの心に「小野生奈」の名を深くでっかく刻み込んだに違いない。このレースだけで、笹川賞に選出された重責を果たしたと思うぞ。さすが、まくり姫。相手関係も含めて、特大の「あっぱれ!」を贈呈したい。

 

 

 

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 嗚呼、それにしても……この痛快無比に見えたまくりが不良航法とは……確かに、烏野賢太に接触して不利を与えたことは間違いない。だが、スリット一撃の締めまくりには、多少の接触は付き物だ。減点を喰らうほどのラフプレーだったのだろうか。私の目には、そうは映らなかったのだが……この大舞台での反則で、生奈の内面に「絞ったらすぐに反則を取られる」という恐怖心が芽生えたかも知れない。最近、まくり差しや最内差しも使うようになった生奈が、さらに優等生っぽい走りへと傾倒する可能性は否めない。

 ルールはルールとして仕方がないのかも知れないが、ファンが何を期待して小野生奈というレーサーを選出したか。十階級突進のようなこの大抜擢は、こういう痛快なまくりを見たかったから、ではないだろうか。生奈には、これにめげずに今後もスリットからどんどんがんがん攻め続けてもらいたい。うーん、水上の格闘技だった“競艇”は、今いずこ……(涙)。

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 女子でもうひとつの大きな話題と言えば、やはりエース宇野弥生の6・6惨敗だろう。凄まじい伸び足で観衆を沸かせたあのパワーが、今日は完全に不発に終わった。スリットで後手を踏み、追い上げもまったく利かなかった。どうしたのだ、47号機!? 「5・6号艇の明日、大崩れがなければ……」と昨日の当欄に記した私だが、まさか6・6まで這ってしまうとは。このありえない大崩れで、予選7位から一気に31位まで転落した弥生。明日1着を獲っても、勝率5・60。準優がはるか彼方に遠のいたが、ミラクル突破を信じて、明日は47号機のパワーを余すところなく水面に投下してもらいたい。

 

 

 

 

 

 

優勝の予感

 

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 3日目を終えて、予選トップは毒島誠、2位は今村豊。このふたりの記事はすでに書いたので、今日は3位の選手にスポットを当てよう。山崎智也。昨日はアウト6コースから切れ味抜群のブイ差しで先団に取り付き、今村暢孝との火花散る競り合いを制して1着。

 今日もまたド派手に攻めるレースで観客を魅了した。2コースだった5Rは、スリットほぼ同体からイン寺田千恵を締めて締めてのジカまくり。峰竜太の差しを浴びたが、自力で勝ちに行った強攻は「負けて強し」を強く印象付けた。

 圧巻は、9Rだ。3コースからコンマ22のスタートに甘んじた智也。対してインの井口佳典はコンマ16だった。到底勝ち目のない隊形に見えたものだが、智也は敢然と握って攻めた。屈指のイン巧者として知られる井口に、力まかせの強ツケマイ攻撃。これが、ものの見事に決まった。もちろん双方のパワー差もあっただろうが、私の目には智也の気迫が井口のそれを圧倒したように見えた。ド迫力のツケマイ一撃勝利だった。

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 今年の智也の強さは、ここで詳しく書く必要もないだろう。すでにGI3勝。煮え切らなかった去年の自分を叱咤するように、智也は勝ち続けている。そのリズムと勢いが、今節の福岡水面でもそのまま反映されている。前検で私は智也をSランクに指名したが、この強さはパワーを超えた別次元のものだという気がしてならない。

 これはちょっとオカルトな余談なのだが、モーター抽選の前から、私は「今節、智也が優勝するのでは?」と予想していた。なぜか。ここ3年ほどのSGやGIで、私が前検へと向かう旅の途中で出くわした選手(複数と出くわしたときは、最初に見かけた選手)が優勝する。そんな偶然が1度や2度でなく、6度ほども重なっているのだ。瓜生正義、佐々木康幸、白井英治、篠崎仁志……あとは誰だったか忘れたが、とにかく8回くらい誰かに出くわし、6回くらい優勝しているのである。この確率って、かなり凄いのではないか。

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 そして今節、私は羽田空港の64番登場口でひとりの選手を発見した。山崎智也だった。声を掛けるほど親しくない私はただ智也をチラチラ見る程度だったが、心の中では冗談含みにこんなことを思っていたのである。

「おめでとう、智也。今回は君の番なんだね」

 実にくだらない世迷言ではある。だが、今日の智也の気迫に満ちたレースっぷりを見ていたら、私だけのオカルト都市伝説がまた今回も現実のものになってしまうのではないか。そう思えてならない。(photos/シギー中尾、text/畠山)