BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準優ダイジェスト、一部「極私的回顧」

女王ふたり旅

 

10R

①谷川里江(愛知)02

②中谷朋子(兵庫)03

③福島陽子(岡山)07

④寺田千恵(岡山)02

⑤守屋美穂(岡山)03

⑥渡辺千草(東京)38

 

 

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 女王の貫禄、女王の意地、女王の覚悟……どんなタイトルを付けても、大差はないだろう。インからコンマ02。これが、このレースのほとんどすべてだ。谷川が極上のスタートを決めて、他を寄せつけずに逃げきった。今節の谷川のスタートはコンマ22→19→10→10→09、そして02。さほどスタート勘がいいタイプではないが、徐々に勘を合わせて大一番でガツンと張り込んだ。どこが勝負処か、知り尽くしていた。谷川のパワー評価は、昨日よりも伸びを中心にそこそこ上昇していたと思う。それでも上位の下くらいだと思うのだが、どうか。

 

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 2着はやはり元女王のテラッチ。4コースからこれまたコンマ02まで張り込み、シャープな差しから危なげなく2番手を取りきった。ふたりの女王が、悠然とふたり旅。そんなレースではあったな。テラッチのパワーはやはり程度の高いバランス型で、自力で突き抜ける迫力はない。が、もちろん1マークの展開さえ嵌れば、一撃ズッポシ優勝が可能な足だ。11日の優勝戦も1号艇。台風一過、おそらく今日よりも気温、気圧がかなり上昇するはずで、その変化に合わせつつもうひと伸び付けたら、かなり怖い存在になるだろう。

 

2着の明暗

 

11R 進入順

①水口由紀(滋賀)07

③平山智加(香川)07

②平高奈菜(香川)07

④長島万記(静岡)15

⑤日高逸子(福岡)12

⑥鎌倉 涼(大阪)09

 

 内3艇が完全な横一線で、外3艇がやや後手を踏んだ。これが予選レベルなら、外の3艇にもチャンスはある。だが、ここは準優。パワー的にも内3艇が優位な立場なのだから、外3艇に見せ場らしい見せ場はなかった。

 

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 まず、1マークで力強く抜け出したのはインの水口だった。節イチ級の回り足が、若手の突出したターンスピードを完封した。強い。優勝戦でも、この回り足があれば自信と余裕を持って過不足のない旋回ができる。唯一の弱点は、ほんのわずかだがストレートがトップ級より弱い点か。1マークに到達する前に、全速で一気に締めに来られる展開は避けたいところだ。とすると、やはり何よりもスタートが重要になる。どこまで行けるか、どこまで行けたか、で優勝の確率がゼロ~95%の範囲で変動すると思う。

 

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 一方、熾烈を極めたのが香川のヒラヒラコンビによる2着争いだ。結論から言うと、その明暗を分けたのはコース獲りだったと思う。ピットアウトで平高がやや凹み、すかさず平山が2コースを奪った。そのコースの遠近が、そのまま1マークに反映された。2コースから差した平山、3コースからまくり差した平高。初動もターンスピードも回り足も、ほとんど同じ。ツケマイ気味に攻めた平高を、平山がガッチり受け止めた。バックで2艇の舳先が並ぶ。迫力満点の攻防ではあったが、こうなってしまえば内の優位は岩よりも堅いのだ。

 

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 あの手この手で猛追する平高を振り切って、平山が優勝戦のキップを掴み取った。もしも枠なりで同じスリット隊形だったなら、2人の明暗は真逆になっていたはずだ。この激闘を見る限り、総合的なパワーは平高のほうが上だったと思う。それにしても、未来の女子界を担うふたりのボートチェイスは、実に見応えがあったなぁ。

 

嗚呼、我が娘が……!?

 

12R

①今井美亜(福井) +01

②海野ゆかり(広島)07

③三浦永理(静岡) 07

④松本晶恵(群馬) 12

⑤小野生奈(福岡) 13

⑥宇野弥生(愛知) 12

 

 

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 敗者のことを書こう。今節の台風の目というより、台風そのものだった今井美亜。最年少の23歳にして予選トップ~進出戦圧勝と大暴れしていた美亜ちゃんが、フライングに散った。しかも、スリット写真で見る限り0・0001秒……いや、しっかり入っているようにさえ見えるギリギリの勇み足だった。惜しい。本当に惜しい。

 今朝、福井駅前を出発したファン送迎バスの車内は、美亜ちゃんの話題で持ちきりだった。私の隣のオッサンふたりも、実に嬉しそうに話していた。

「昨日の時計、1分46秒5、ありゃオバケじゃ。負けても勝っても、美亜ちゃんに乗らなあかんわ」

「そんなん、決まっとるやろ、他のアタマなんか買うかいや」

 

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 たったひとりの福井支部。今節限定とはいえ、地元のオッサンファンにとって美亜ちゃんは可愛い可愛いひとり娘のような存在なのだろう。いや、地元でもなんでもない私でさえ、元気いっぱいにシリーズを突っ走る美亜ちゃんに、すっかり心を奪われていた。

「この子がいるから、今節はとびっきり楽しい」

 と、目を細めていた。お転婆すぎる娘を見守っているような。きっと、全国に何万人かの「にわか父親(母親も)」が出現したのではあるまいか。

 それが……急転直下の結末。悲しい。勝てるかどうかはともかく、あのまま逃げきって優勝戦1号艇の晴れ舞台まで見守りたかった。

 

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 嗚呼、それにしても、昨日はモミモミニギニギのコンマ03で冷や汗をかいたというのに、今日もまたキワのキワまで行ってしまうとは……美亜ちゃん、やはりあんたは今垣光太郎率いる福井支部の申し子なんだなぁ。そのど根性(いや、平常心なのか)に、ある意味敬服の念を抱かせてもらった。全国のにわかお父さんたちも、何度も頷きながら「よしよし、仕方ない、よくやったよ美亜」なんて呟いたことだろう。台風のように暴れて、台風とともに去りぬ、か。

 

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 さて、パワー評価。恵まれで1着に躍り出た松本は、やはり素晴らしい足だった。行き足~伸びを中心に、全部がいいと思う。昨日から急に良くなったので、気候の変化がやや心配だがこの足を維持できれば自力、他力のどちらでも優勝のチャンスは十分にある。

 その松本をぐいぐい付け回った生奈の足もかなりいい。こちらはサイドの掛かりが強烈で、得意の一撃まくりとは別物の仕上がりではある。優勝戦では多少ターン回りを落としてでも伸びの部分を強化して欲しい。そう願うのは、私だけだろうか。(photos/シギー中尾、text/畠山)

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