BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――仲間たちの歓喜

 

 

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 今朝のピットは実に静かである。装着場に選手の姿はあまりないし、ペラ室も1R展示後には4~5人しか姿がなかった。整備室内の調整所には篠崎兄弟がいて、じっくりと話し込みながらゲージを当てたりしていた。だが、そこにいたのは、あと松田大志郎と3人だけ。そして、今朝はついに本体整備をしている選手はいないのであった。

 朝一番から、桐生順平が本体を割っていた、という情報はあった。教えてくれたのは青山登さんで、湿度が上がった昨日から変調をきたしているとのこと。「こういうときは電気(一式交換)なんだけどなあ」と元選手ならではの解説も示してくれた。桐生自身も足落ちには気づいているようなので、8Rには部品交換を施して登場するかもしれない。ちなみに、顔色は昨日までと変わりなく、焦りのようなものは見えなかった。ある程度のメドは立っているか。

 

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 整備室の隅でゲージ擦りをしていたのは、片岡雅裕と平高奈菜の香川コンビ。黙々とゲージと向き合っていた。早い段階からゲージ擦りをしている人はエンジン出てる、の法則は何度も書いた。一方で、後半になるとゲージ擦りをする選手が格段に増えたりする。この段階になると、整備は大方やり尽くしている。ペラの微調整などは必要ではあっても、大きな作業をする選手がぐっと減るのだ。そこで取り掛かるのがゲージ調整だったりする。情報を蓄積しながら選手は戦っていくわけで、時間を見つけてゲージ擦りをすることも、今後を見据えれば大切な仕事なのである。

 

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 ゲージ擦りテーブルは、整備室出入口の近くにあって、そのドアを開けると目の前に装着場内のモニターがある。報道陣がここでレースを見ることが多く、選手も装着場で作業中だったりすると、ここで観戦していることもある。1R、モニターを見つめていると、「おはようございます!」と平高が隣にやって来た。ゲージ擦りを一時中断して、いちばん近くのモニターにやってきたのだ。視線の先にいるのは、もちろん白いカポック。鎌倉涼だ。大外から松尾昂明が伸びてきたときには一瞬「あっ」と声を漏らしたが(松尾も同期だ)、鎌倉がしっかり先マイすると「よしっ、逃げた!」と小声だったが歓喜をあらわした。ほぼ安泰の隊形になると、ホッとした様子でゲージ擦りに戻ったが、つまり鎌倉の動向をおおいに気にかけていたわけである。

 

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 鎌倉は今節、苦しんでいる。機力的にはかなり悪いほうだろう。それでも、鎌倉は調整と試運転を続けた。昨日の記事の100期ピース写真は、足合わせの感触を確かめあっていたときのものである。もちろん、平高はその努力を知っている。ピース写真にともに写っていた秦英悟もそうだ。というわけで、レース後は鎌倉本人よりも周囲が歓喜に沸いていた。同県である秦はエンジン吊りに参加しながら、目を細める。遠藤エミら女子選手も歩み寄って声をかける。さらには桐生もやってきて、笑いかけていた。鎌倉以上に仲間の笑顔が目立ったのだ。頑張る姿ってのは、必ず誰かが見ているもんですね。そしてそれが報われたときには、みんなが喜んでくれるのである。僕らも頑張ろう。

 

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 さて、これでもいちおうボート雑誌の編集長なので、取材にはいろいろな情報を頭に叩き込んで臨むわけだが、時折、引き出しに入れ忘れたものがあったりして、ピットでの様子を見ながら、ハッと気づいてビックリするなんてことがあったりする。

 青木玄太と遠藤エミが、ボートを挟んで話し込んでいた。ああ、珍しい組み合わせだなあ、100期と102期かあ、なんて考えながら、ファインダーを向けたのである。

 あ、二人とも滋賀じゃん!

 そうなのでした。びわこの未来を担う、若武者&ナデシコなのでした。二人の絡みを見てすぐに思いが至らないとは、まだまだ取材者として甘いということなのか、それとも年とったということでしょうか……。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)