BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――気合充満!

 

 

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 今朝は、と断わっておくけれども、男子と女子の絡みをあまり見かけていない。足合わせも男子同士、女子同士がほとんどだし、そうなると試運転後の情報交換は男子同士、女子同士に分かれる。作業に関しても、もちろんエンジン吊りは共同だが、それ以外でともにいる姿というのをほとんど見ないのだ。もっとも、初日は慌ただしいもので、それぞれが急ぎ動いているから、なかなか足を止めての会話にはならないとも言える。それでも、装着場で男子と女子が絡んでいる場面は実に少なく、別のレースを走っているという感覚が非常に強いわけである。

 そんななかにあって、例外と言えるのは岡山支部。いや~、仲いいですなあ。寺田千恵の存在、だろうか。ダービーで紅一点だったテラッチだが、吉田拡郎や茅原悠紀の若手ともまったく違和感なく輪を作っていた。それとほぼ同じ光景が、今日もあった。テラッチが、岡山支部に和やかな空気を作っているように思えるのだ。拡郎もテラッチとはニッコニコで話しているし、茅原も同様。テラッチには別のレースを走っているなんて感覚はまったくないのかもしれない。

 

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 ダービーにいなかった岡山支部の選手は、川﨑智幸と守屋美穂。このツーショットは新鮮だなあ。イーグルの重鎮と若き姫なので、もともと仲はいいはず。いや、仲がいいというより、川﨑にとって守屋はかわいい後輩だし、守屋にとって川﨑はもっとも頼れる大先輩だろう。だが、この二人が大舞台に揃い踏みしたのはもちろん初めてで、それだけに見ていて実に微笑ましい。こうして大先輩と壁もなく絡めることは、守屋の大きなアドバンテージではないか、と思えた。今節のレースにおいても、賞金王をめぐる超ハイレベルな戦いを実感するうえでも、だ。

 

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 たぶん平山智加はそうして成長しているのではないかな、と思ったりする。今年はSG常連、紅一点として参戦することも増えている。最高峰の戦いに挑んでいくなかで、レースでもピットでも、支部を問わず多くの先輩と絡んでいたものだ。もちろん、その戦いのなかに身を置いてきたことも大きかっただろう。結果、夏のレディチャン(女子王座)では、明らかに雰囲気が他の選手と違っていた。ナデシコバトルに加わったことで、平山の凄さがハッキリと感じられたのだ。

 今節も同様だ。というより、平山を見ていると、SG出場選手のような感覚になる。レディースチャレカじゃなくて、チャレカのほうの選手かな、と一瞬考えてしまうのだ。やはり現在の女子選手のなかでは、ちょっと抜けた存在かもしれませんね。なお、ちょっとだけ言葉を交わしたが、実にリラックスしている様子だった。その後、整備室にこもっていたが、悲壮感はほとんどないように思えたなあ。

 

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 チャレンジカップのほうでは、本来中立であらねばと自分を戒めつつ、しかし今節ハッキリと肩入れしてしまう選手がいる。

 まずは濱野谷憲吾だ。言うまでもない。14年ぶりに平和島で開催されるグランプリ(賞金王)、この人が不在じゃあかんでしょ! というわけで、現在好評発売中のBOATBoy12月号では巻頭インタビューで直撃し、思い切り煽りまくったわけだが、もちろん濱野谷自身、己の立場をよくわかっている。だから、今節の濱野谷は一味違うはずなのだ。

 と言いつつ、今のところ、濱野谷と言葉を交わすチャンスがまったくない。というより、顔を合わせる機会がないのだ。昨日のレース場入りのときは、我々が待ち構えていた場所とは別の入口から入ったようだったし、前検時にもなぜか姿をなかなか見つけられなかった。今朝も、結局エンジン吊りでしか見かけておらず、せめてインタビューの礼を言おうと追いかけようとしたら、風のように整備室に飛び込んで、その奥のペラ調整室に入っていったのだった。ひとまず、表情にはキレがある、ということしかつかめていない。

 

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 同じ意味で、石渡鉄兵にも奮闘してもらわねば困る。開会式では「東京支部全員の思いを背負って」と言っていたが、東京のファンの思いだって大きい。本来なら濱野谷と石渡、両方にベスト18に入ってほしい。最低でもどちらかは決定戦のほうに出てほしい。当然、石渡だって自覚はしているだろう。

 で、石渡とは挨拶だけはできた。ただ、それ以上はできなかった。ものすごい表情だったのだ。といっても、好人物の鉄兵ちゃんだから、穏やかな顔つきではあった。ただ、顔に「気合入ってます」と書いてあるかのような、力強さが発散されていたのだ。本当は、髪型カッコいいっすくらいの軽口も用意していたのだが、そんなことを言える雰囲気ではなかった。だから言葉に詰まって、挨拶しかできなかった。今節の石渡鉄兵は明らかに一味違う。それは実感できたのであった。

 

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 もう一人、鎌田義を応援しないわけにはいかない。BOATBoyにとって、コラム連載をしている鎌田はファミリーなのだ。5月だったか6月だったか、グランプリへの思いも連載に盛り込もうかという話になったとき、「頑張ったけどダメでした、ということにならないようにしよう」とも話し合ったものだ。クラシック(総理杯)後は2位につけていた鎌田は、チャレンジカップを迎えて24位までランクを下げてしまった。おそらく優勝戦で上位に入らなければ、ベスト18には届かないだろう。

 先週、それについて鎌田と話をした。その時点で、すでに気合が伝わってきた。今朝、とてつもない気合のこもった鎌田がいた。レース前には鋭い表情になるのはいつものことだが、今朝はその目つきが尖っていた。これは、地元SGだったクラシックで見せていた表情だ。今節は、地元SGにも匹敵するだけの決意を胸に戦っているのだ。

 濱野谷にしても石渡にしても鎌田にしても、その思いが結果に直結するわけではない。だが、彼らのベスト18への思いには注目せずにはいられないし、個人的に肩入れもしてしまうわけである。最終日、彼らの笑顔が見られるだろうか。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)