ド根性の3カド
11R
①今村 豊 10
②瓜生正義 10
③茅原悠紀 04
④今垣光太郎 09
⑤桐生順平 10
⑥石野貴之 09
もはや「王国の茅原」ではない。「茅原王国」が、ヒタヒタと近づいている。
スタンドがドッと沸いた。茅原が3カドに引いた瞬間だ。まだ初戦だというのに、茅原は危険な勝負手を放った。スタート展示はスロー発進だったし、3カドは起こし位置の関係でスタートが見えにくいと言われている。その危険ゾーンに、この若き韋駄天はあえて踏み込んだ。そして……コンマ04、トップS!
これだけでも脱帽に値する勝負根性なのだが、その後のレースっぷりがまた凄まじい。2コースの瓜生に強ツケマイを浴びせるようなスピードで、まくり差しを狙ったのだ。これまた、一歩間違えば(瓜生に弾かれたりしたら)惨敗もありえる戦法だ。瓜生のターンの速さは言うまでもない。そのスピードに少しでも遅れを取ったら、作用反作用で弾かれるである。
だが、茅原は弾かれなかった。逆に、天下の瓜生をズッポリと引き波にハメ、そのまま先頭まで突き抜けた。ふたつのリスキーな勝負手を、ものの見事に成功させた。この自信、この根性、このスピード。どれを取っても、今すぐSGを制覇するに足る資質だと思う。疑う余地がなく、茅原悠紀はSGを獲るために生まれた人間なのだ。
レースはまさに茅原の独壇場だったが、私が注目した桐生70号機もさすがのパワーを披露した。前を行く今垣、石野の的確な応接に手を焼き、ターンマークごとに引き離されたが、また次のターンマークまでにグイグイ追い上げ勝負形に持ち込んだ。そして、今垣をダンプ気味のターンで追い抜き、十八番の強ツケマイで石野を引き波にハメて大逆転の3着ゲット。さすがのパワー&テクニックだった。それでも、まだまだ70号機の本来の動きとは言えないが、しっかり合わせれば賞金王も夢じゃないと思う。明日も同じ5号艇で、どこまで70号機と呼吸を合わせられるか。それで順平の明暗が決まる。
成長のタッチスタート
12R 進入順
①井口佳典 03
②仲口博崇 06
⑥田村隆信 12
③毒島 誠 01
④池田浩二 03
⑤丸岡正典 05
下関チャレカの茅原VS毒島の一騎打ちを見て、私は「近い将来のグランプリファイナルの前哨戦」と表現した。この予言めいた言葉が、あるいは12月23日に実現するのではないか。そう思わせる毒島の一撃まくりだった。
もちろん、レースを揺さぶったのは田村だ。この稀代の勝負師は、直前のスタート特訓で3本とも6コースから行った。おそらく、チルト3度に跳ねていたはずだ。が、「伸びない」と悟ったのだろう。チルトを戻して、コースを奪う戦法に変えた。「勝つためには何でもする」勝負師らしい方針変更ではあったが、少なからぬデメリットも背負うことになった。深いスロー起こしのスタート勘だ。3度の特訓を棒に振ったため、田村は泣く泣く?スタート展示から3コースを奪った。敵に手の内を見せた。最大の敗因は、これだったかも知れない。
一方、毒島はこの前付けを受け入れた。去年の賞金王ファイナルでは全速のモンキーで完全ブロックしたが、今日は別の戦法を選択した。おそらく、これはそのまま毒島の成長だろう。去年は“コース”を主張したが、今日は“勝つべきコース”を主張した。この1年の自信と成長が、そうさせたのだ。
田村を受け入れ、4カドに引いた毒島は「絶対にまくる」と心に決めていたと思う。強い将棋指しは、一手前に指した手が悪手であっても最善手であっても、その手の言い分を通す手にこだわる。このレースで言うなら、「田村を入れた以上は、自力で潰す」。それが最強の継続手なのだ。
だから、毒島はスタート勝負に行った。途中で放ったらしいが、コンマ01。1年前より格段に強くなった。これら一連の勝負手に、そう思わずにはいられない。そして、一撃でまくりきった。結果は後から付いてくる。私が茅原&毒島に空恐ろしさを感じたのは、己を信じきって1マークまでに全身全霊の勝負手を放ったことだ。
さて、私が注目した仲口53号機は……毒島のひとまくりを浴びて5着に敗れ去った。パワー云々を問える展開ではなかったが、うーーん、ちょっとスリット付近では物足りなさを感じたなぁ。もちろん仲口がかなりアジャストした可能性もあるので、いきなり評価を落としたりはしない。明日は5号艇で1着勝負。モンスター53号機の本来のパワーを100%引き出せば、十分に2ndステージに駆け上がれる。そう信じている。(photos/シギー中尾、text/畠山)