シリーズは順当に予選が終わったというべきだろう。シリーズ出場のクライマックス出場経験者は、高橋淳美以外は全員が予選突破を果たした。高橋にしても今日は気合の勝負駆けを見せてくれたわけで、準優進出はならなかったものの、格上の意地を見せてくれている。やはりシリーズに回れば強者たちは格上である。それを見せつけられる結果だったわけだ。
シリーズ初出場の塩崎桐加や渡邉優美が、先輩たちに一矢報いるところも見たかった。いや、健闘は見せた。渡邉は“実質3連勝”の場面もあったし、1着も獲った。塩崎も思い切ったレースぶりで片鱗を見せた。ただ、やはり納得できる結果ではなかったし、この舞台の壁の厚さも実感しただろうし、特に塩崎は不完全燃焼だったのではないだろうか。シリーズ組では上位級の機力だということは、本人も自覚してきた。もっと活躍できる可能性は充分にあった。しかし、ここまで未勝利に終わってしまっている。残り2日間で、なんとか手応えを得て住之江を後にしたいところだろう。
ということで、塩崎は今日、延々と試運転を続けていた。新兵の仕事のかたわら、ピットを走り回ってもいた。この思いが報われるよう祈りたい。そして、少しでもスッキリした気分で、先輩たちの大一番を目の当たりにしてほしい。
予選トップは中谷朋子! 9Rは飛んできたまくりをきっちり受け止めての、強い逃げ切り勝ち。これが実に大きく、10Rの結果を受けて首位に立つこととなった。
ただ、10R後の中谷はそれを把握していないようだった。レースが終わってもただただ淡々としており、エンジン吊りから控室に戻ろうとしたときに1着の山川美由紀と歩が並んだため、「私が持ってきまーす」と勝負服とカポックを受け取ったりしていた(山川は勝利者インタビューに向かうため、装着場の真ん中でそれらを脱いでいる)。それを見た今井美亜らがすっ飛んでいって中谷からカポックをもぎ取っていたが、ともかく中谷に予選トップ確定の高揚感は皆無だったのである。
ま、えてしてそんなものです。得点率順を細かく計算している選手のほうが少ないのだ。
一方、3着で予選トップ、しかもバックは2番手を走った谷川里江は、2マークで樋口由加里と接触して後退、5着に終わっている。レース後の谷川は無表情に近い顔つきで、それがむしろ憮然とした様子に見えたのだった。
それは、得点率トップから滑り落ちてしまったことに対してというより、単純に着を落としたことに対してのように見えた。その瞬間、やっぱり得点率がどうこうと考えていたとは思えない。まして、中谷が逃げ切ったとき、谷川は展示ピットでそれを見ているのだ。レース前の緊張感のなかで、自分と中谷との関係をいちいち計算はしないほうが自然だ。
と勝手に想像して、谷川の表情には純粋な勝負師としてのレース後を見たのだった。やっぱりこの人、小さな巨人である。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)