ピットに入って真っ先に顔を合わせたのは、松田大志郎。こちらの姿を見かけると、松田のほうから挨拶を振ってくれた。うむ、嬉しい。手に白い勝負服を持っていたので、もちろん激励。「今日は水神祭、見せてくださいよ!」。大志郎、にっこり笑って、「頑張ります」と言った。
うーん、残念! スタートで後手を踏んで万事休す。伸び返す気配はあったが、2コースのジカまくりを浴びて、6着に大敗してしまった。レース後は落胆した表情も見せていたが、大志郎の魅力といえば果敢なまくり一撃! 気持ちを切り替えて、センター枠で持ち味を発揮し、水神祭を見せてほしいぞ。
大志郎を2コースからまくったのは、松井繁だ。松井といえば2コース差しのイメージが強いが、スタートでのぞけばもちろんまくる。というか、過去1年の2コース1着は、差しよりまくりのほうが多いんです。大志郎が伸び返して先マイをはかろうとするのを抑え込んでジカまくり。秋山直之に差されてしまったが、爽快な攻撃だった。
ピットに戻ってくると、松井はとびきりの笑顔! 吉村正明のエンジン吊りに参加していた白井英治と今村豊にからかうような喝采を送られて、「もう行けーーーっ!って行ってしもたわ!」と破顔一笑だ。まくり切ったからこその2着でもあり、それを強調もしていた。とにかく、王者はひたすらゴキゲン。今節も、気づいてみれば松井繁、となってもまったくおかしくないぞ。
その前の3Rでは、やはり2着の平本真之がご機嫌な表情になっていた。いや~、凄かったっすね! 2番手争いをしていたかと思ったら、ターンごとに先頭との差を詰めていくという。ここ3カ月でSG1つとGⅠ2つを獲っている男は一味違うということか。ターンといえば、茅毒桐が三羽烏と言われているが、そこに平も加えたほうがいいかもしれないな。3周2マークではついに舳先をかけるところまで追いついていて、思わず「あと1周……」とピットで呟いてしまった。
足的にはまだまだ満足していない様子で、レース後はさっそく調整に取りかかっていたが、その足取りも軽い! ひとまずは手応えのあるレースができた実感はあるだろう。
追い詰められたのは市川哲也だ。昨日も書いたとおり、地元グラチャン勝負駆けの市川にとって、ここは絶対に負けられない1号艇だった。気合満点の先マイで、もくろみ通りの結果となったわけだが、しかし冷や汗もかいたことだろう。だから、勝利者だというのに、ピットに戻っての表情は硬かった。結果を知らずに顔つきだけ見たら、敗者と見えてもおかしくなかっただろう。つまり、勝ったことで気を緩めたりはしていないし、こんなところで喜んでいる場合ではないという思いもあるだろう。
着替えを終えた市川は、本体を外した! 今日は1回乗りなので、時間をたっぷり使って本体と向き合うつもりだろう。市川の今後の戦いにはさらに注目が必要だぞ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)