BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――熱いぞ勝負駆け!

 

 

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 勝負駆けはやっぱりいいっすね。さまざまな思いが渦巻き、交錯する。特に今日は、ボーダーが上がり気味だったため、「さらにひとつでも上の着順を!」という思いが終盤の選手には強かった。たとえば茅原悠紀だ。3周1マークで見せた、なんとしても着を上げるのだという気合のターン。ドリーム戦のアクシデントから必死に巻き返してきて、最後の最後でくじけるわけにはいかない。

「5着だったらダメでしたからね~。もう必死でしたよ。いや~、良かったです!」

 12R出走前に、5着では足りないと認識していたようだ。だから、舟券には絡めない位置にいても気を抜くわけにはいかなかった。舟券圏外での必死の走りを、お客さんはちゃんと見ているものだ。茅原の闘志を胸に刻んだファンも少なくないはずである。

 

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 茅原もそうだが、なんとか残った選手たちは一様に安堵の表情を見せている。吉田拡郎は上平真二との激しい2番手争いに敗れて3着。ピットではボーダーが6・33くらいになるのではないかという声もあがっていて、吉田は2着で6・67、3着で6・33。安心してレースを終えるには2着が欲しかったのだ。

 JLCが展望のインタビュー収録をしているので、スタッフが呼びに来たら準優進出の合図。スタッフにインタビュー場所に導かれる吉田の表情は、やはり柔らかくなっていた。

 

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 予選ラストに5着を獲ってしまった笠原亮も、少しだけ不安を抱いていたのか、11R発売中にこちらの顔を見るなり「セーフ?」と聞いてきた。いくらなんでも6・67でアウトはない。もちろんセーフと返すと、目じりを下げてうなずいた。

 今日はどこが悪かったということはないのだが、ちょっとした違和感はあったという。ただ、その理由がハッキリとはわからなかった。言葉にすれば、合わせられなかった、ということになるわけだが、昨日までと違うことをしたわけではないし、気候も変わってないし……ということらしい。などと話しつつ、「あ、ペラのせいにしているようじゃダメですよね」と矛先を自分に向けるのが笠原らしさか。どこをどう調整する、ではなく、しっかり調整する、という課題が見つかったのなら、明日はそこを目指すだけだ。

 

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 予選突破を決めた選手たちがホッとしている一方で、予選落ち組はやはりやるせない表情を見せることになる。「力尽きました」は原田幸哉。11Rは5着で6・00。本来なら準優に行ける得点率だが、今日はこれが次点の数字になっている。あとひとつ着順を上げられていたら……原田の表情に落胆の色が濃くなるのは当然だ。

 原田は明日、誕生日を迎える。あの原田幸哉が40歳とは驚くばかりだが、うまくいけばバースデー準優を勝って優出、なんてことにもなっていたわけだ。まあ、そんなことを狙うような年齢でもないかもしれないが、そうなっていれば我々には書くことがひとつ増えていた(笑)。記念すべき不惑の誕生日に一般戦を走ることになってしまったが、ここは意地を見せてもらおうではないか。

 

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 あ、あと篠崎元志についても触れておこう。篠崎は11R、勝負駆けを走っていない。1着でも5・67と、絶望的な状況での出走であった。モチベーションとしては、勝負がかかっている選手のほうが強かったかもしれない。だが、かといって、負けていいなんて元志は思っていなかった。勝ちたいと思ってピットアウトした。結果は6着である。レース後のゆがんだ顔つき、イライラした様子といったら! ゆがんでもイケメンなのは悔しい限りだが(笑)、大敗したことを許せないでいる姿にはやはり痺れる。4日目って、勝負駆けではない選手が時に穴をあけたりもするので、元志の表情をちゃんと覚えておこう。

 

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 さて、予選トップに立ったのは、なんと、守田俊介である。いや、なんと、は失礼か。しかし、畠山が20年も追いかけ続け、いつか必ずタイトルを獲ると信じ、しかし何というか……トホホな一面も多く、最近はすっかり水面以外で話題を振りまき、さらにピットで会ってもどこかのほほんとしていて、畠山も「俊介ぇ~~~~」と情けない声を出すことが多い……って、けなしてんのか、おい、という感じの俊介が、ついに大きな大きなチャンスに出くわしたのである。ようするに、感慨深いのである。

 なんたって、ピットでは報道陣に囲まれちゃってるのである。これまでに見たことがあっただろうか……。その輪の中の俊介は、いつもと変わらずほよほよと笑っているのだが、この状態がすでに感動的だ。なんと、とか書いちゃうよね。

 1位が決まったのは、12R後。原田篤志が1着なら、こちらが上だったが、1マークで原田の攻めが不発に終わった瞬間、守田の1位が決定。1号艇・太田和美のエンジン吊りに出てきた守田は、といえば、状況がわかってんのかわかってないのか、まるで判じられない淡々とした表情。報道陣には当然聞かされていたはずなので、だから表情の変わらなさはかえって心強かった。

 そんな男が、重圧がかかるはずの場面でどんな顔を見せるのか。明日、もっとも会うのが楽しみなのは、間違いなく守田俊介である。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)