BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――笑顔のワケ

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 王者、満面の笑顔! 10Rを逃げ切った松井繁が、出迎えた後輩たちにニッコリと笑いかけた。安堵でも歓喜でもなく、会心のスマイル。今日は10R1回乗りで、早くから調整に動いていたが、納得の仕上げができたということか。昨日はレース後に速攻で試運転をしていたわけだが、それが実ったということかもしれない。

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 その松井は、11R後には原田幸哉のエンジン吊りに合流。モーター架台を準備しながら、4カドまくりを決めた原田に声をかけた。すると原田はド派手なガッツポーズ! 王者から幸哉へ、笑顔のリレーだ! でも、王者はそこにいてよかったの?「守田俊介のほうに行かなあかんのに」と王者。そう、このレースには近畿地区の守田が出走していたのだ。本来はそちらのエンジン吊りに参加するはずなのである。ということで、原田の作業が終わると、王者はダッシュで守田のほうに合流! 松井と原田はよく話し込んでいるのを見かけているが、原田の快勝に一声かけたかったんでしょうかね、王者は。

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 そんな爽快なスマイルを浮かべられない選手が2人。今垣光太郎と中田竜太、まさかのオール6着……。7Rのピットには駆け付けられなかったのだが、撮影していた池上カメラマンによると、今垣はバツが悪そうに苦笑いを浮かべていたそうである。ここまでの這い方はさすがに想像していなかったに違いなく、もちろん機力ももうひとつだから、元気はどんどんと失われていく。力なく笑うしかない、といったところか。

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 それでも、今垣も中田も遅くまで調整に励んでいた。中田は11R終了後にペラ調整を切り上げたが、今日は2R1回乗りだったから、その後もここまでペラと向き合っていたのだ。明日こそはこのトンネルを脱出してほしい! 

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 そうそう、笑顔といえば、10R5着の桐生順平と6着の高野哲史がレース後に会話を交わしながら、笑い合っていたのだった。大敗なのに何たること、などとは思わないでほしい。二人とも実に険しい表情で引き上げてきたレース後、エンジン吊りの間も複雑な表情だったのだ。たまたまエンジン吊りが同時に終わり、肩を並べて控室へと戻ることとなった。大敗を喫してしまった同士が、お互いを慰め合うように、もう笑うしかないと笑顔を交わす。胸の奥に宿ってしまった悔恨をそうして癒しているのである。二人とも準優への希望は非常に危うくなってしまっているが、これで前を向いて明日の1号艇で雪辱だ!(高野が8R、桐生が9R)

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 で、11R1号艇で4着に敗れた毒島誠は、呆然とした表情でピットに戻っている。確勝を期して臨んだはずの白カポックで、連にも絡めなかったのは痛恨だったに違いない。しかし、その後には寺田祥と談笑。これはおそらく2周1マークの話で、毒島は振り込んでしまって、後続の守田俊介と寺田がこれを避けるかたちで影響を受けている。毒島は最後に寺田に頭を下げ、寺田は右手をあげて気遣う仕草。レース後の笑顔には、いろんな種類や意味があるということですね。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)