勝負駆けのゆくえは、終盤戦に差し掛かっておおいに白熱したか、と言われればそうでもなかった。ボーダーが5・33あたりまで下がりそうな様相で、勝ってもそこまで到達しない選手が9Rや10Rにも出走していたりしたため、バッキバキの勝負駆け色はそれほど濃くなかったように思う。
地元の魚谷香織は大敗していたら危険な状況だったが、枠は1。今節のインの強さを考えればかなり有利で、だからなんとなく安心して見られるような雰囲気があった。もっとも、魚谷自身がそう捉えていたかどうかは微妙で、地元戦のドリーム1号艇として、予選敗退だけは避けたいという思いがプレッシャーになっていた可能性はある。
その魚谷は、今井美亜の強襲に屈して2着。これで予選突破は確実となっている。しかし、やはり1号艇で敗れたこと、あるいは逃げられなかった足色について、やはり納得はいかないようで、ヘルメットの奥の表情がハッキリと曇っていた。寄り添った同支部同期の犬童千秋も同じように苦虫を噛み潰したような表情になっており、準優進出を決めた喜びや安堵は少しも伝わってこなかった。ホッとしている場合ではなかったのだ。
一方、勝った今井美亜は会心の表情だ。予選突破を確実にする一発なだけに、気分が高揚するのは当然のこと。また、出迎えた仲間たちも素晴らしい戦いぶりを手放しでたたえている。着替えを終えてインタビューに向かう今井は、その途上でエンジン吊りを手伝った鎌倉涼に気づいた。駆け寄って、今井は深々と頭を下げる。すると、鎌倉は手を掲げてハイタッチを要求。今井も慌てて手を差し出して、鎌倉の右手に応えた。鎌倉はその手をガッチリと握る。今井の顔がぱーっとほころぶ。見ていた仲間も爽快さを感じる、今井の勝利だったのだ。
予選ラストレースの10Rは、トップ争いの直接対決となっている。1号艇・平山智加が逃げればトップ。2号艇・岸恵子が差し切ればトップ。ここに焦点は絞られていて、結果は平山が逃げて、岸が2着となった。10Rのワンツーがそのまま、予選ワンツーである。
平山を笑顔で出迎えたのは山川美由紀だ。二人はわりと眺めの時間、談笑をつづけ、最後にはワハハハと高笑いしている。平山の力からすれば予選トップは順当でもあり、とはいえレースでは岸の差しに一瞬だけ迫られるようなところもあったから、危なかったねえ的な笑いもあったかもしれない。そこに海野ゆかりも加わって、やっぱり高笑い。実に楽しそうな語らいなのであった。
敗れた岸に対しても、山川はねぎらいの言葉をかけている。平山はかわいい後輩だが、岸だって同じ四国地区の後輩である。健闘を称える気持ちになって当然だ。山川が両手をボートに見立てて展開を表現している場面もあった。どこのシーンかはわからないが、山川の見立てを岸に伝えていた場面のように見えた。もし、岸が差して1着でも山川は祝福しただろうし、平山が敗れたならやはりしっかりと慰めて、準優へのゲキを飛ばしていたことだろう。
さて、前半の記事で102期のトライアル組同期コンビについて書いた。100期もトライアル3人を占める一大勢力だとも。では、それに挟まれるかたちの101期はといえば、シリーズに山下友貴、矢野真梨菜、櫻本あゆみと3人が参戦しているのである。残念ながら、枕を並べて討死という格好になってはしまったが、ひとつ先輩とひとつ後輩の勢いに負けてはいられない。全員ではなくとも、いつかトライアルで顔を合わせて、最高の舞台で剣を交えてほしいものだ。山下も矢野も櫻本も、積極的に新兵仕事をこなしていて、その健気さには感心させられる。今年は残念だったが、来年は飛躍の年にしてほしいぞ。Burning Heart!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)