なんだか松井繁がゴキゲンなのである。
1号艇で2着。優出は決めたものの、松井にとっては決して本意ではなかろう。実際、レース直後にはそう見えたのだ。5日目はレース終了後にボートを洗剤を使って洗浄する。その作業中、松井は大阪支部の面々に笑みを向けてはいたものの、目は笑っていなかったし、口元は開いているものの、歯が開いていなかった。まるで歯を食いしばっているかのような、苦しい笑みだったのだ。苦笑いではなく、苦しい笑い。
ところが、会見では意外なほどに饒舌だった。「バランスがとれていていいんじゃないかな。出ていくとかはないけど、やられる感じもないし、いいレベルやね。今日は智也がまくってくるのが見えて、握らないと仕方ない展開だったし、うねりにも乗ったところがあったね。仕方ないでしょう」。1号艇で敗れた王者がここまで細かく話すとは、ちょっと想像していなかった。
そのうえ、ここまでノーハンマーを通していて、明日も何もしないと宣言。コメントどおりに仕上がっているのだ。王者のノーハンマーなんて、今までにあったのだろうか。だからこそ怖い。本当にゴキゲンであるならば、なお不気味だ。本当にゴキゲンであるならば? 質問に答えて笑みを見せた後に、すっと真顔に戻る瞬間が何度かあったので、少しだけ疑っている次第だ。ただ、それを差し引いてもたしかに王者は明るかった。やっぱり怖いのである。
反対に、勝った白井英治は明日もプロペラ調整に励むことになりそうだ。今日の調整で「外れてましたね。旋回後期で押していない」。これをやり直す一日に、明日はなる。
しかぁし! それで松井を差し切ったのである。レースを見れば、どう考えたっていい足ではないか。もちろん白井もそれを認めている。つまり、完璧な足を求めて、納得のいかない部分を埋めようとしているのだろう。もし不満がない状態で優勝戦に臨めることになれば抜群の節イチだろうし、そうでなくとも強めの足だ。メンタル面は良好の模様。チャレンジカップがF休みにかかっているので、グランプリ勝負駆けを強く意識して優勝戦に臨む可能性もある。もしかしたら、心機ともに節イチがこの男になるかもしれない。