BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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王者がお茶目なトーナメント

 

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 A1勢がわりと順当に勝ち上がった、という感じのトーナメント。5RはA1級が3~5枠で、この3人がきっちりと勝ち上がっている。これで2マンシューは美味しいよなあ。5号艇の小野生奈が豪快なまくり差しで勝ったことが荒れた要因で、小野-石橋道友の2連単もマンシュウなのだから、「やっぱりA1が強い!」という傾向を察知できていればなあ、と悔やみますね。また、8RはやはりA13名が3着まで入線、渡辺浩司は3着ながら不良航法で賞典除外となってしまったけれども、これで3連単580円と圧倒的な人気サイド決着だった。

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 トーナメントは2回乗りの選手が有利かも、という説も、今日は見事にハマっていた。トーナメント8個レース中、今日2回乗りだったのは実に6人。1回乗りで勝ったのは、エース70号機の近江翔吾と1号艇の重成一人で、これは勝つに足る条件を備えていた。もっとも近江は6号艇6コースだったから、大殊勲と言うべきなのだが。この法則、来年まで覚えておこう。年に1回だけのことなので、1年後にはすっかり忘れていそうな気もするが。ちなみに、5Rの小野は同レース唯一の2回乗りだった。姫園は「極選にするのはここだったか……」と悔やんでおりました。

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 そうしたなか、4着以下に敗れた選手たちの表情は一様に重い。優勝のチャンスが皆無になったわけではないけれども、たった1走で“予選落ち”を強いられるのだから、当然だろう。まして、人気にも推され、力も上のはずのA1級でセミファイナルに進めなかった選手たちは、実に深刻な表情になる。1号艇で4着に敗れてしまった平山智加はなおさらで、クイーンズクライマックスの敗戦後かと思うほど、カタい顔つきになっていた。坪井康晴も、6号艇だったとはいえ、グランプリ戦士のプライドに傷がつくような事態だから、ほんの十数日前に見た、トライアル敗退後の雰囲気と変わらない様子のレース後なのであった。

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 勝ち上がりの選手たちは、1着選手はわりと淡々とした感じで、2~3着選手がひとまずセミファイナル行きの権利を得たことの安堵からか、笑顔で引き上げてくる選手が多かったように思えた。5R3着の茅原悠紀は石橋道友とレースを振り返り合いながら爆笑する場面もあったし、12R3着の井口佳典は松井繁に声をかけられて「負けてたら(4着以下なら)何言われるかわからん」と大笑いしていた。1着で大喜びしていたのは、ガッツポーズを見せていた峰竜太と、爽やかに笑っていた平本真之くらいか。また、2着ではあったが、1号艇で敗れてしまった今垣光太郎はかなり落胆した様子で、うつむきながら控室へと消えていった。

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 さて、今日はちょっとした“異変”があった。選手の帰宿バスは、グランプリ時には10R終了後に第1便が出発したのだが、今日はピットの隅に駐車されたまま動く気配がなかったのだ。今日は1便がない!

 なぜかといえば、12R終了後にセミファイナルと復活戦の枠番抽選があるから。昨年の平和島では、開会式の際に数字が記された紙が入っている封筒を引き、各レースでその数字の若い順番に内枠から入るという方式で2日目の枠番抽選は行なわれている。今年はトーナメントと同様、それぞれのレースでガラポンを回しての抽選となり、各レースのメンバーは12Rが終わらなければ確定しないため、出場選手全員が最後まで残って、一堂に会しての抽選会と相成ったわけである。

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 抽選はまず復活戦から行なわれ、その24名が1便として先に帰宿。その後にセミファイナルの枠番抽選が行なわれている。レースごとに選手の座席が指定されていて、ひと目で各レースのメンバーがわかるように設置されていた。それを見て茅原悠紀が「うわ~、このレース、濃すぎ~」と嘆きの声をあげる。茅原のレースのところには、松井、井口、中野、馬場、近江。「賞金王が3人もいる~」とも言っていたらしいが、あなたもですよ。それ以外にもエース機や前検タイムトップの好機がいたりするから、たしかに濃い。もっとも、なにしろA1級が多く勝ち上がったから、どのレースもなかなかの豪華メンバーですけどね。松井繁も「どこもええメンバーになったんちゃうか」と言っていた。

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 その松井が、抽選会では主役になっていたぞ。選手班長だから立会人になっているわけだが、実にテンション高く、弾けていた。白球を引いた選手には、球を目の前に突き出す。峰竜太が緑を引いたら、さらに強烈に突きつける。樋口由加里が白を引くと、それをやはり突きつけて、カメラ目線でガッツポーズしろと命令する。こんなにお茶目な王者はなかなかお目にかかれないぞ(笑)。

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 菊地孝平も役者だった。トーナメント4の5番手だった菊地は、なかなか白が出ないことで「おぉっ!」とどんどんボルテージを上げる。ついに自分の番まで白が出ないと、「よっしゃー!」と気合満点でガラポンの前に。そして白が出ると大ガッツポーズ! カメラマンのフラッシュの雨が降ると、「明日の新聞で使ってください!」と絶叫。ただし他の選手からはブーイングが飛んでましたが(笑)。

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 その盛り上がりを一気に自分のものにしたのが、やっぱり王者。セミファイナル3の3番手で引くと、出た、白! 菊地を上回る力強いガッツポーズ! その態勢のままあたりを睥睨する仕草は、見得を切っている歌舞伎役者のようだった。すかさず重成一人から「成駒屋!」……じゃなくて「松井さんが白引くのを初めて見た!」と野次が飛ぶ。それでも松井は得意げに重成を睨み返すのであった。

 今日の枠番抽選も王者のおかげで、極上のエンターテインメントでありました。明日の枠番抽選(と、もしかしたらセミファイナル2着組、復活戦組のファイナル行き抽選)も楽しみだな~。(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)