BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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宮島レディースオールスター優勝戦 私的回顧

最強の“27位”

 

12R優勝戦

①山川美由紀(香川)09

②松本晶恵(群馬) 12

③海野ゆかり(広島)14

④細川裕子(愛知) 30

⑤今井美亜(福井) 26

⑥香川素子(滋賀) 28

 

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 讃岐の女傑が、ゼロ台のスタートで外の5艇を蹴散らした。強かった、の一語。2連率26・9%の低調機をグイグイ押し上げ、時にはコースを奪い、道中で若手を抜き去り、2211221①のオール2連対V。そのうち3度のイン戦はコンマ12、コンマ13、そして今日のコンマ09……分かってはいるが、その衰えることのない集中力には改めて敬服するしかない。

 

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 そうそう、ブッチギリで水面を疾駆する山川を見ながら、私はぼんやりこんなことを思った。

――もしかしたら、今節の山川には「ナニクソッ!」という気持ちもあったのではないか。

 ファン投票の最終ランキングは27位。彼女の実績と実力を鑑みれば、それは不当に低い評価だった。26位以内には、デビューから数勝しかしていない若手レーサーもいた。そんな極端な“サプライズ現象”が、50歳の女傑をメラメラ燃えさせたのではないか。あくまで勝手な推測でしかないのだが、そう思った。

 

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 で、表彰式の山川の言葉を聞いて、私はムフフとほくそ笑んでしまった。

「この優勝で、来年はもうちょっとオバチャンたちにも票が入るといいですね」

 やっぱり、大なり小なり意識してたんだなぁ。そう思いつつ、その後の記者会見でもさりげなく尋ねてみた。

――ファン投票での山川さん自身の順位と、全体的なランキングに関して、何か思ったことはありますか?

 山川は「あ、えっと、それは、ですね」とあれこれ考える素振りを見せてから「ノーコメントです」と言って爽やかに笑ったのだった。はい、それで十分です!(笑)

 

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 第1回のイベントということで、私なりの感想を記しておきたい。総体的な選手のレベルとしては、GⅢオールレディースとほぼ同じだった。この企画シリーズをはじめて知ったときは「女子のビッグレースの常連に、まだ実力のそぐわない若手が何人か混じるのかな」くらいに考えていたのだが、ファン投票の結果を眺め、さらに有力どころがF休みや私傷病などで続々と欠場するに至って、「オールレディースと変わらないな」と思い直した。いざ本番、開会式での木村沙友希ショーにはじまり(笑)、お祭りとしてはそれなりに楽しく過ごさせてもらった。が、予選レースのレベルはやはりGⅡという冠にはそぐわないものだった、と言わざるをえない。山川の優勝で来年はもっと「オバチャン選手票」が伸びるかどうか。それはわからないが、お祭り気分だけでなく「オーシャンカップの得点に直結するGⅡ」という意識を抱いた一票が、より多く投じられることを祈る。

 ともあれ、今日の山川の優勝そのものは、メンバー的にもレース内容的にも女子のGⅡに恥じないものであった、と銘記しておこう。

 強い選手はやっぱり強い。

 そんな当たり前の思いが、より鮮明に心に刻まれるシリーズだった。(TEXT/畠山、PHOTOS/シギー中尾)