13時40分から公開優出選手インタビューがあり、それもあってベスト6は本格的に始動はしていない。モーターをボートに乗せたのも、平本真之、田村隆信だけで、ペラを外したのは平本のみ。その状態は1Rが終わっても保たれたままで、調整などを始めるのはまだ先のことになりそうだ。
平本が言っていたのだが、湿気が少なくて追い風が強めという1R前後の気候が、12Rの頃にはどうなるかわからない、というのも大きいようだ。これがナイターの調整の難しいところで、日が落ちて気象条件が変われば、昼の時間帯の調整は意味をなさなくなってしまう。最低でもある程度の仕上がりにある優出メンバーが、早くから動き出すわけもないのだ。
だから、誰もがまだ余裕のある表情を見せている。1号艇の寺田祥にしても、見た目は普段と変わらず、クールである。選手仲間と話す表情も、柔らかだ。白井英治が今節、減量して臨んでいるのはすでに書いたが、実は寺田祥も同様である。前節の徳山お盆開催、優勝した最終日の体重は53kgだった。それから約10日、昨日の寺田は51kgジャスト。減量を気合のあらわれとするなら、寺田は顔色ひとつ変えるわけではないが、胸の奥は熱くなっている、ということになる。夜に向けてどんな表情になっていくのかには、注目したい。
白井英治、森高一真も、すでに険しい表情を見せたりもしているが、これもまあ、いつものことだ。二人とも運動靴を履いているから、作業はまだまだ始める様子はない。したとしても、プロペラを点検する程度だろう。
同じことは前田将太にも言えて、ただしこちらは明るく穏やかな表情である。前田はよく、冗談で「黒須田さんは僕を推してくれない」と言う。そんなことはないのだが、たしかにBOATBoy誌面には篠崎兄弟の写真のほうが多く載っているかも(笑)。そのたびに、活躍すれば大きく載るよ、と返して笑い合ったりするわけだが、優出したのだから来月号は間違いなく取り上げられます(笑)。そんなやり取りもあったので、前田は意味深に笑顔を向けてきた。単なる優出で掲載、以上の結果になるといいっすね。
選手もファンも気にしているのは、田村隆信の動きであろう。どんな出方をするかで、展開も変わる。田村とは話すことができたが、僕の感触は「5コース勝負」ではないか。1R、結果的に3着にしりぞいたが、齊藤仁が5コースからのまくり差しで先頭に出ようかという勢いで1マークを回った。そのエンジン吊りに向かう際、田村は後ろから僕の肩をポンと叩いて、ニヤリと笑った。これが田村が描いているイメージではないか、と思ったのだ。もっとも、田村も決め打ちしているわけではなさそうで、優勝戦までにさまざまな戦略を練って、勝てるポジションを探すことだろう。前付けがあろうがなかろうが、やはり田村のレースぶりをあれこれ想像するのは最高に楽しいのである。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)