BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――王者も峰も由加里も走る!

 

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 選手の帰宿は多くの場で複数便制を採用しており、1~2便あるいは1~3便に分けられる。宿舎がレース場から離れている場ではバスに乗って帰るわけだが、下関の宿舎はピットに隣接しており、もちろん徒歩移動。30秒くらい? それでも複数便制であり、昨日も一昨日も10R終了後に何人かの選手が整列して宿舎に向かうのを見ている。

 今日も10R終了後には岡崎恭裕や篠崎仁志ら福岡勢や、谷川里江や川野芽唯など女子勢など10人前後が宿舎へと向かっている。今日も1便が出発したか~、とまあ、後ろ姿をぼんやり眺めていたのである。そしたらこれが、2便だった。えっ!? 10R終了後が2便? ふつう、1便が10R終了後に出発で、3便制の場なら11R後が2便、12R後が3便なのである。ところが、下関では8R終了後に1便が出るらしい。その時間帯はたいてい記者席で仕事をしているため、昨日も一昨日も、もちろん今日も目撃できていなかったのだ。これは珍しいなあ。まあ、調整作業をそれ以前に終わらせた選手は、特に今節の夜のピットは冷えるので、早く帰って休息にあてたほうが明日からも万全で戦えるだろう。誰が1便で帰ったのかは、そういうわけでよくわからんのであるが、このシステムは悪くないと外野ながら思ったりした次第である。仕事の都合がつけば、明日は8R頃にピットに行ってみよう。

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 帰宿複数便制となると、終盤の時間帯は当然、ピットに居残る選手の姿は少なくなる。そうなると、エンジン吊りの陣容が手薄になるわけである。11Rがゴールして、ボートリフトに駆けつけた選手たちを見ても、昼のレースよりハッキリと人員が少ない。こうなると、選手たちが養成所時代から培った一致団結の行動があらわになる。

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 たとえば、この11Rには近畿の選手が出走していないのに、王者・松井繁が颯爽とリフトにあらわれ、最も手薄に見えた関東勢=松本晶恵のエンジン吊りにハツラツと参加するのである。外したモーターを毒島誠が整備室に運ぶのを見て、松井は同じ大阪勢の丸岡正典や湯川浩司と協力して運んでいく。王者はその前はペラ室にいて、そのまま居座っても誰も文句など言うはずないのに、軽い微笑を浮かべながらボートを押すのである。さすがに途中で毒島が駆けつけ、松井からその役目を引き継いだが、王者はその後もあたりを見回し、手薄な陣営はいないかと確認するのであった。

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 11Rには九州もいないから、峰竜太も参加する必要はない。だが、もちろん峰だって率先してヘルプする。このレースは、東海勢が実に3人。ここもやっぱり手薄になる。というわけで、峰は三浦永理のエンジン吊りに参戦。てきぱきと作業をこなすのだった。といった感じで、おそらくピットに残っていた選手の全員が参加したのではないだろうか。ピット取材をし始めた頃、レース後のエンジン吊りの手際の良さというか、選手が協力し合って短時間で作業を終わらせる姿に感服したものである。少しの時間も無駄にしないという選手の特質が、こういうところにも宿っているのだと思った。ピット取材も暦一周、エンジン吊りは日常的な光景になっているわけだが、今日は改めてピット取材開始当初に感じたことを再認識した次第である。松井はその後、ふたたびペラ室へ。作業の時間を確保するためにも、やるべき仕事はさくさくと片付けていくということだろう。ボートレーサーは水面でだけすごいスピードで走っているのではなく、陸でもスピード感のある動きをしているのである。

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 実際に陸の上でも走りっ放しの選手もいます。樋口由加里。ピットで見る樋口は、いつも走っているというイメージがあるのだ。実際はそんなことないんだろうが。

 今日、試運転ラストが樋口だった。10R発売中に切り上げて、同期の山田康二らがヘルプしてエンジン吊りを終えると、樋口はまず控室へと走った。カポックを脱いで、今度は整備室へと走る。別にレースが控えているわけでもないし、残された時間がほとんどないというわけでもないから、走る必要はないのである。しかし樋口は走る。それで短縮された時間は1~2分あるかないかだろうが、それでも樋口は走るのだ。その1~2分が明日、1艇身2艇身、いや、半艇身でもいいから、樋口のボートを前に押してくれればいいなあ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)

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 下関のピットでだけ見る光景。ピットの端のほうに、こんな棒のようなものが置かれるのです。おおよそ後半から終盤の時間帯になると6本立ちます。なんだこれ?

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 モーターを外したボートがここに運ばれて棒に立てかけ、舳先のほうを持ち上げたような態勢にします。そして、クリーナーで操縦室の水を吸い取る。他の場では(下関でも前半のレースなどは)選手が舳先を持ち上げて、別の選手がクリーナーで吸い取る、ということになるのですが、下関ではこうして6艇がまとめて集められ、係の方が一斉にクリーナーで吸い取るというかたちをとっています。これも時間短縮に一役買ってるということですかね。さらに、係の方たちがタオルでボートについた水滴を拭きとってもいます。まあ、それでも今垣光太郎はその後にボートを磨き上げていますが。