クイーンズの明暗
110期台の若手が大活躍する一方で、歴代女王(レディチャン&クイクラの覇者=9人)の多くが苦戦を強いられている。いきなり初日から日高逸子が妨害失格で賞典除外。谷川里江、海野ゆかり、山川美由紀などの古豪も劣勢パワーで重い着からスタートしたし、新勢力の小野生奈や松本晶恵もいまひとつ。イマイチどころか松本に至っては⑤6135という不本意すぎる成績で、仮に明日①着でも6・00に届かないという崖っぷちに追い込まれてしまった。
そんな下剋上ムードの中、今日になって気迫の2連勝を挙げたのが海野ゆかりだ。まずは口開けの1R、4カドからわずかに覗いた海野は有無を言わせず絞めまくり。強引な全速まくりはやや流れ、2コースの薮内瑞希にスコーーンと差し抜かれた。が、2マーク手前で冷静に艇を開き、俊敏な差しハンドルで逆転の1着。スリットから2マークまで、鬼気迫るオーラを感じさせる1勝だった。
後半8Rの海野は、さらにターンマークから遠い5コース発進。スリット横一線で険しい展開に見えたが、4カド深川麻奈美が伸びなり絞めまくりを敢行し、それをマークする形で最内をズッポリ差し抜けた。この20点増しで、昨日の35位から21位までランクアップ。やや劣勢なパワーも含めて明日もそれなりに険しい勝負駆けが残るが、「去年のリベンジを果たしたい」という思いが海野の背中を押すことだろう。
さてさて、歴代女王の中でも今節の主役はもちろん地元水面×スーパーエース34号機の遠藤エミだ。正直、この3日間の私の評価は「悪くはないけどいま一息」と言ったところか。特に、逃げきったもののターン出口の押しに物足りなさを感じたドリーム戦、ターン回りでやや空かしているように見えた2日目5Rは「?」に思えた。
ただ、昨日の後半からは行き足~伸びに34号機らしい片鱗が見られたし、今日の11Rはさらなるパワーアップが見てとれた。3コースから狭い所を間一髪のタイミングでまくり差し、2本の引き波を超えてからグイッと前に出た加速感は天晴れの一語。艇界屈指のターンスピードと34号機の底力があればこその1着で、3日目にしてほぼ完璧にシンクロした印象だ。このパワーにもう一丁パンチ力が加味されれば、私の期待通りの「遠藤エミ34号機」になるだろう。
2着1着で18点を加算したエミの予選順位は2位。現在、その上に君臨するシリーズリーダーは、ドリーム6着惨敗から怒涛の3連勝を飾った中村桃佳だ。今日の4Rの5コースまくり差しは、まさに「女王道」とも呼ぶべき完勝だった。スタートをバチッと決めて軽々と内3艇を叩き、そこからやんわりスピードを落としつつインコースを回してからズドーーンの鋭角差し。その冷静な立ち回りは、老獪さすら感じさせるものだった。
パワー的にもリズム的にも、明日の予選トップ争いは桃佳vsエミになる可能性が高い。もちろん、どちらが有利か断言はできないが、6号艇を含めて2走勝負の桃佳より、2号艇一発勝負のエミにやや分があるような気はしている。
最後に、3日間を終えての簡潔なパワー診断をば。私なりの節イチパワーは……微差ながら廣中51号機だ。前検~初日はターン回り主体に「あれ?」という印象だったのだが、昨日の道中3番手からぐんぐん追い上げ、先頭の竹井奈美を一撃の差し抜いた足はあまりにも峻烈だった(竹井がワースト級だとしても!)。さらに今日の12Rでは桁違いの出足~行き足で、インの小野生奈を叩き潰してしまった。つまり、現状のエミ34号機にはちょっぴり足りないパンチ力が、この51号機にはすでに備わっている。その部分を評価してのSS=節イチである。
もちろん次位はエミ34号機と、今日の12Rで51号機に先着した大山千広38号機。実は昨日の廣中51号機の鬼足を見るまで「高いレベルでバランスが取れている千広38号機がトップ足」と診断していた。その後のトップ3の足色を見比べてこんな見解に変わったのだが、明日の気配でまた入れ替わるかもしれないほど拮抗していると思っている。
このトップ3からはまたまた僅差で桃佳45号機が続き、すべての足が力強くて上位レベルの小池礼乃41号機も怖い存在だ。また、予選突破は難しいものの、日々ストレートの伸び足で私をうならせている坂咲友理は明日以降も穴候補として狙い続けてみたい。(text/畠山、photos/シギー中尾)