BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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浜名湖クラシックTOPICS 4日目

THE勝負駆け①予選トップ争い
白井か、井口か!?

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 3日目が終わって勝率8点台が5人。その点数と今日の枠番は、こうだ。
①瓜生正義…8・50/6R6号艇&11R4号艇
②井口佳典…8・50/12R4号艇
③白井英治…8・40/10R1号艇
④松井 繁…8・00/8R4号艇
⑤今村 豊…8・00/5R6号艇&11R2号艇
 最近のビッグレースは「暫定1位か2位か、ふたりにひとり」的な分かりやすい予選トップ争いが多かったのだが、今節は混戦模様。とは言え、今日の枠番を考えると井口と白井がアタマひとつリードしているように思えた。
 その予想を促すように、5Rの今村、6Rの瓜生ともに6号艇のハードルを乗り越えられず、トップ戦線から脱落。8Rの松井は4カドから果敢に握って攻めたが、三井所にブロックされるわ、2マークでアクシデントに巻き込まれるわで6着大敗。この時点で、トップ争いはほぼほぼ「白井vs井口」に絞られた。

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 まずは10R、満を持して白井が白カポックで登場。ここを逃げきれば予選8・67で、これを超えられる選手はまさに12Rの井口だけとなる。知ってか知らずか、白井はややスタートで後手を踏みながらもグイグイ伸び返し、1マークをくるりと回って予選2位以内を内定させた。白井44号機はプロペラにヒビが入って2日目に交換したのだが、足落ちはまったく感じられない。むしろこのモーターの課題だった行き足~伸びが強化された感もあり、準優&優勝戦の1号艇を勝ちきるのにピッタリのバランス型と言えるだろう。
 さてさて、予選トップは白井か井口か。その条件は「12R4号艇の井口が①着なら井口、②着以下なら白井」というシンプルな条件になったのだが……(つづく)

THE勝負駆け②準優ボーダー争い
22歳の快挙

 一方の準優ボーダー争いは、例によって悲喜こもごもの逆転劇が続発した。「喜」の最たるレーサーは22歳の羽野直也か。昨日まで1644着で暫定30位。今日の2走は高いノルマが課せられていたのだが、まずは1R2号艇からインの海野ゆかりをひとまくり。地元の坪井に差されて2着だったが、ギリギリ第一関門をクリアした。

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 人生初のSG準優へ、メイチ①着勝負で臨む8Rは胸突き八丁の5号艇。その内枠には王者・松井繁や賞金王・桐生順平ら錚々たるメンバーがいたのだが、それは起こる。4カド松井が伸びなりの絞めまくりでスロー水域に侵攻、三井所らがゴリゴリ抵抗している間に5コースからの全速まくり差しがものの見事に炸裂した。3連単は今節最高の860倍!!(極撰予想、抜けちゃってすいませんっ><) 近年の若手レーサーの苦労・遅咲きぶりを考えれば、22歳でのSG準優参戦は天晴れすぎる。びわこレディースオールスターの中村桃佳に続いて、このクラシックでも114期旋風が吹き荒れるかも??

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 嬉しすぎる予選突破と言えば、金田諭も負けてはいない。今日の金田は11R5号艇での③着勝負。この内枠には瓜生正義、今村豊、寺田祥らの猛者が控えていたのだが、道中での接戦に次ぐ接戦の果てにギリギリの3着をもぎ取った。なんとなんと、39歳にしてSG初出場からの初準優参戦だ! SG初出場~初Vという快挙が何度となく起こっているクラシック。あの13年前の笠原亮に続いて「遅れてきた銀河」金田諭がサプライズな偉業に挑戦する。

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 同じくSG初Vを狙う選手の中で、悲喜こもごもの「悲」を味わったのが須藤博倫だ。9Rの2号艇で④着条件だった須藤は、道中で揉まれながらも着実にボーダー圏内をひた走っていた。3周1マークを回って3番手。このターンで後続が2艇身ほど千切れたから、ポジション的には「ほぼ当確」と思われた。
 だがしかし、その後続のひとりがかなりヤバイ相手だった。③着条件の前本泰和!! 前を行く須藤さえ追い抜けば準優圏内に入るのだから、この勝負師が黙っているはずもない。最終ターンマークの直前、前本は舳先を鋭く左に傾けた。最後のお願いの切り返し勝負。それを察知した須藤は抱きマイでギリギリ交わそうとしたが、艇がわずかに接触して失速。その間に前本が準優へと続くゴールへと疾駆した。結果的には、技ありのダンプだ。 一方、失速した須藤は5番手の仲谷颯仁にも詰め寄られ、最後はハナ差ともいうべき微差で5着に……パワー的には準優でも通用しそうな気配だっただけに、痛恨の5着と言うしかない。うーーん、ヒロリン、惜しかった。そして、勝負駆けの前本、恐るべし。明日も6号艇で“②着勝負”の前本がどんな立ち回りを見せるか、とにもかくにも絶対に軽視できない男ではある。
 さてさて、最終12Rもこのヒロリンvs前本と同じような逆転劇があったのだが、それは予選トップ争いと合わせてお伝えしよう(つづく)。

 

THE勝負駆け③ファイナル
銀河戦士たちの死闘

 予選トップ争いも、最後の1議席を決める準優ボーダー争いも、この最終12Rで天下分け目の熾烈なバトルが繰り広げられた。メンバーと勝負駆け条件を記しておこう。

12R
①岡崎恭裕…③着以内で予選2位か3位=準優1号艇確定。
②山本隆幸…④着以内で予選突破。
③吉田拡郎…―
④井口佳典…①着で予選トップ!
⑤三井所尊春…①着で準優の可能性あり。
⑥新田雄史…④着以内で予選突破。

 吉田拡郎以外の5人がそれぞれの事情を抱えてスタートしたこの一戦、まずはスタートで見る者をハッとさせた。2コース山本が突出したため、イン岡崎が凹んで見えたのだ。が、スリット後の47号機の伸び返しの凄まじいこと。あっという間に追いつき追い越し、1マークの手前では舳先をチョンと突き出していた。

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 で、そんなイン水域に4カドから襲い掛かったのが予選トップを目指す井口だった。瞬く間に拡郎を叩き、イン岡崎まで届かないと見るや、同期の山本に強ツケマイを浴びせるような全速のまくり差し! 傍から見れば残酷な光景なのだが、これが“銀河流の交友関係”だし(笑)、元よりトップを獲るためにはなりふり構っていられない。井口の峻烈なまくり差しは、ものの見事に岡崎の内に突き刺さった。そう、ターンの出口で確かに半艇身ほども突き刺さったのだ。井口にとっては大きな大きなアドバンテージ。予選1位と2位では、あさっての意味合いがまるで違う。片や差された岡崎は、1着でも2着でも「予選3位」という状況は変わらない。つまり、井口にだけ大きな意味のある一騎打ちだったのだが……。

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 バック中間で異変は起こる。貫いたはずの井口の舳先がジリジリと後退し、わずか100mほどでそれはあっけなく抜け落ちた。昨日同様、47号機のありえないレース足!! そのまま2マークを先取りした岡崎は、あっという間に井口を置き去りにしてしまった。この瞬間、予選トップはすでにレースを終えている白井英治の元に転がり込んだと言っていいだろう。
 嗚呼、またしても、井口!
 ありえないパワー差で予選トップを逸した井口を、私は複雑な思いで見つめていた。去年のクラシックも暮れのグランプリも、井口は最後の最後に予選(トライアル)トップを逃している。今日も、手にしたと思って瞬間、それはスルリと手元からこぼれ落ちてしまったのだ。

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 そんなことを思いつつ後続艇に目を向けてみたらば、そこでは井口の同期と愛弟子が凄まじい勝負駆けバトルをやらかしていた。山本隆幸vs新田雄史、つまりは④着勝負駆け同士の4着争い!! 態勢が有利なのは山本なのだが、新田があの手この手で食い下がり、常に1、2艇身差で付け回している。そしてそして、雌雄を分かつ最終ターンマーク。ひたすら先マイを目指す山本に対して新田が切り返し気味に艇を押っつけ、あっという間にふたりの体は入れ替わった。予選トップ争いも準優ボーダー争いでも、銀河系コンビが苦杯を舐めたレースだったわけだ。もっとも、山本が散った代わりに18位に滑り込んだのも銀河系の湯川浩司だったのだが。

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 最後の最後まで予断を許さなかった勝負駆け。とりわけ井口にとっては痛い2着だったかも知れないが、こと今節に限っては「予選トップ=優勝への最短距離」とは思えない。昨日も今日も我々を驚愕させたあの男&あのパワーが存在するから。さらに言うなら、あの男&パワーが存在するからこそ、準優に滑り込んだ伏兵たちにも少なからぬ優勝のチャンスがあると思う。クラシック=SG初優勝の宝庫。明日の準優を乗り越えれば、たとえ外枠のファイナルであっても下剋上Vは十二分ににありえるだろう。準優18人の中でその“権利”を有するのは、萩原秀人、金田諭、片岡雅裕、羽野直也の4人だけだ。(text/畠山、photos/シギー中尾)