BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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尼崎オールスターTOPICS 4日目

THE勝負駆け①予選トップ争い
“前女未到”への挑戦

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 インコースの強い尼崎だけに、まずは予選トップ争いから。でもって、あの女子レーサーを中心に書かせてもらおう。5Rできっちり逃げきった小野生奈は、勝率8・40までレベルアップ。去年に続く準優入りの当確ランプを点すとともに、少なからぬ予選トップの可能性を残した。条件は、こうだ。
★8Rの6号艇・中島孝平が①着なら、その場で中島のトップが確定。②着以下なら、9Rの3号艇・新田雄史vs4号艇・生奈に自力トップの可能性が生じ、どちらかが①着ならトップ当選。

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 その8R、中島は6コースから自慢のレース足をフル駆動して2番手に進出。先頭の篠崎仁志を猛然と追いかけたが、1着=予選トップには届かなかった。ただ、2着での8・40は準優1号艇を確定させつつ、ライバルに大きなプレッシャーを与える数字でもあった。

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 生奈が①着ならば、ボートレース史上初の「SGでの女子のシリーズリーダー」が誕生! そんなエポックな可能性を秘めた第9R、同じく①着でトップ当選となる新田雄史が勝負手を放った。3カド攻撃だ。が、内2艇もゼロ台まで踏み込んでこの奇襲に応戦。スリット同体から得意のまくり差しに構えた新田は、内2艇に挟まれる形で外に流れた。

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 一方、やはり①着勝負の生奈は新田の外から最内差しに構えたが、これも5コース毒島誠の怒涛のまくり差しを浴びて失速。先団から取り残された新田&生奈はその後も激しい鍔迫り合いを繰り広げたが、もはや予選トップとは無縁のバトルだった。5着・生奈、6着・新田……。昨日までオール3連対の大活躍で、史上初のSG予選トップ女子に近づいた生奈。惜しくも天辺には立てなかったが、もっと重要かつ偉大な事象が残っている。明日からが本当の闘いだ、と思う。

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 この直接対決が共倒れに終わった瞬間、次なる自力トップの権利は10R3号艇の吉川元浩に引き継がれた。条件は極めてシンプルで、「勝てばトップ、負ければ中島」だ。吉川は3コースから握って攻めたが、インの菊地の逃走を捕えることができずに2着止まり。中島にシリーズリーダーの座を譲り、自身は2位で予選を走り終えた。
 また、この結果に伴い3位は前田将太に。8Rで大敗を喫した新田と生奈は、それぞれ準優の4号艇と2号艇を余儀なくされた。

THE勝負駆け②準優ボーダー争い
ゴッドターン

 一方、準優ボーダー18位争いは非常に出入りの激しい混戦となった。もっとも劇的な逆転ホームランを放ったのは……12Rの峰竜太だ。勝負駆け条件そのものは「4号艇で②着」だから、峰にとってはさほど高いハードルではない。ただ、2度の反則で喰らった14点というハンデを考えれば、まさにミラクルな逆転満塁ホームランと言っていいだろう。

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 その12Rの1マークは、いくら言葉で解説しようとしても、現実の光景には追いつけないだろう。簡潔にそのシーンを補足しておく。4カドの峰はトップスタートからしばらく直進し、3コース濱野谷憲吾を行かせてからのまくり差しを狙った。その舳先はすでに2コース秋山直之の外への軌道を描いていたが、秋山が外に流れる雰囲気を感じて咄嗟に内へと方向を修正する。
 そして……その直後のターンは、もはや人間のそれではなかった。凡人に解説できるわけがない。あんなターンを脳みそで理解できるわけがない。あれは、神のターンだ。まだ観ていない方は、是非ともリプレイで鑑賞していただきたい。14点というありえないハンデを跳ね返す男の、人間離れした能力をすべての皮膚で感じ取っていただきたい。

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 峰の他にも、昨日までの圏外から這い上がったV候補が何人か存在する。ひとりは、暫定29位だった菊地孝平。今日は持ち前のデジタルスタート勘をフル活用し、2着1着で一気に15人をゴボー抜き。この男が外枠にいるといないとでは、レースそのものの意味合いが劇的に変化する。明日はどれだけ踏み込んで、人気の内枠勢の肝胆を震えさせることか。明日の11Rには、スタートのバカっ速いまくり屋がいることを忘れてはならない。

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 それから、昨日まで24位で「5号艇②着条件」だった毒島誠も凄まじいターンで浮上した。5コースでやや劣勢なスリット隊形から、4カド小野生奈の艇を抱き込むような鋭角なまくり差し。初動の早さといい、スムースかつスピーディな旋回といい、実に毒島らしい美しい航跡だった。外からでも一撃でアタマに突き抜ける男が準優に滑り込んだことで、明日の10Rにもスリリングな緊張感を与えることだろう。峰、菊地、毒島の明日は、揃いも揃って不気味な5号艇。内枠の選手にとっては実に厄介な、ファンにとっては実に難解かつ興味深い面々が、それぞれの準優を盛り上げることだろう。
 初日のドリーム戦から132131着。このままの点数なら予選トップだった大本命レーサーが、明日は5号艇にいる。それだけで、明日の12Rはたまらなく面白い。

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 最後に、もうひとりの女子レーサーについて触れねばなるまい。松本晶恵。今日の勝負駆け条件は「2号艇で④着」という穏やかなものだった。が、ここで何度も書いてきたように、女子レーサーにとっては低くて高いハードルなのだ。④着あるいは⑤着条件で、どれほどの女子選手が準優への道を閉ざされたことか。
 だがしかし、10Rの晶恵はそんな“難関”を見事に克服してみせた。もちろん、楽なレースではなかった。勝てば予選トップになる吉川が3コースからツケマイ気味に攻めたて、2コースの晶恵はモロにその引き波を浴びている。艇が左右に揺れるほどの引き波だったが、しっかりと艇を立て直し過不足のない差しハンドルでその引き波から抜け出した。そして、しっかりと3番手を守りきって準優へのゴールを通過した。
 たかが2号艇から差して届かず3着だっただけだろ、というお叱りを覚悟しつつ、彼女の冷静なハンドルワークを賞賛したい。そして、引き波を超えてさらに出口から伸びて行くレース足は、明日の準優でも絶対に軽視してはならない、とお伝えしておこう。(text/畠山、photos/シギー中尾)