BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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若松オーシャンカップ優勝戦 私的回顧

最後の勝負手

12R優勝戦
①丸岡正典(大阪)17
②毒島 誠(群馬)13 まくり
③田村隆信(徳島)19
④吉田拡郎(岡山)18
⑤土屋智則(群馬)13
⑥石野貴之(大阪)21

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 上州の勝負師・毒島が、昨夜に続いて豪快なまくりを決めた。うーーーん、参った! 昨日のキャリアボデー交換でパワー(伸び足)アップに成功した毒島は、それに満足することなく今日も勝負手を放った。8R後に試運転をした後、大幅にプロペラを叩き変えたのだ。

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 このままでは(優勝には)まだ足りない。
 そう考えての決断だったようだが、8R後といえば優勝戦のスタート展示まで1時間半しかない。後戻りのできない時間帯の中で、足りなかったグリップ感や乗り心地、そしてさらなる伸び足を求めてプロペラをガンガン叩いた。そして、その不退転のギャンブルも、見事に的中させた。

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 進入は枠なりの3対3。例によってピットアウトから毒島だけがピューッと出て行ったが、ここは1号艇の丸岡がギリギリ凌ぎきった。次なる毒島の勝負手はスタート攻勢だ。昨日(コンマ05)ほど踏み込んだわけではない。しかも、起こしのタイミングは丸岡、田村より遅いくらいだった。が、F持ちの両隣がややアジャストする中、毒島の舳先だけがグングンと前へ突き進み、スリットでは2艇を完全に出し抜いた。

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 そこから先は、パワーアップした伸び足の出番。丸岡が伸び返す前にじわりと艇を寄せつつ、伸びなり一気にまくりきった。この決断に一瞬の迷いでも生じていたら、拡郎、土屋、田村の超抜トリオの舳先がズボズボと突き刺さっていただろう。そして2番手・吉田の舳先を封じたのも、この2日間のパワーアップがあればこそ、だ。

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 ただ強くなっただけでなく、ファンを魅了する男になった。
 それが今節の毒島に対する印象だ。その最たるレースは昨日の準優(ダイジェスト参照)だったが、前半戦は中堅あるなしの劣勢パワーを職人技のような捌きで克服し、その怪しげな54号機を地道な整備で優勝まで導いた。そして、リスクを恐れることなく1着を獲るべき勝負手を次々と放った。今日の7Rで1号艇ながらインを捨てて2カドに構えた寺田祥とともに、今節はふたりの勝負師がファンの心を鷲掴みにした、と思っている。年末のグランプリは、是非ともふたり揃って参戦してもらいたい。
 最後に……ワールドカップにかこつけてフランス国旗の青・白・赤舟券を買っていた私だが、ブス君がまくった瞬間に心の中でこう叫んでいた。
「クロ??アチャーーッ!!」
 お後がよろしいようで。(text/畠山、photos/シギー中尾)